研究課題/領域番号 |
23K08816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浦田 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (20572598)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 細胞老化 / 生殖補助医療 / シクロホスファミド / 原発性卵巣不全 / Ferti-QoL / 卵巣機能 / 人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
不妊治療における妊娠成立の可否は、良好な受精卵を得られるか否かに依る部分が大きいが、患者に個別化された具体的なART成績を示す指標はない。 臨床での卵巣機能は血中抗ミュラー管ホルモン値などが用いられているが、数的卵巣機能のみの評価となる。卵巣機能を非侵襲的に、数的および質的に総合評価可能な方法を人工知能で作成し、卵巣機能の各種予測因子が卵巣局所でどのように機能するのかを明らかにすることが本研究の目的である。この研究により、不妊治療開始前の治療成績予測だけでなく、自身の卵巣機能を知ることができ将来の妊娠へ向けた具体的なプレコンセプションケアができるようになることに、臨床的意義がある。
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研究実績の概要 |
・細胞老化と原発性卵巣不全(POI) 抗がん剤であるシクロホスファミド(Cy)の投与が卵巣機能を低下させることは知られている。老化細胞は細胞増殖能を失い、炎症物質などを分泌することで様々な病態に関与している。Cy投与によるPOIモデルマウスでは、卵巣顆粒膜細胞で細胞老化マーカー(p16, p21, p53, γH2AX)が増加していた。ヒト顆粒膜細胞培養おいて、Cy投与はp16, p21, p53, γH2AXが増加した。細胞老化作用薬であるダサチニブとケルセチン(DQ)の投与は、POIモデルマウスとヒト顆粒膜細胞培養においてこれらの細胞老化マーカーを低下させた。POIマウスにDQを投与すると、排卵が誘導され、妊孕能が改善した。DQはCyによるPOIに有効である可能性が示された。 ・生活習慣やストレスは生殖補助医療(ART)結果と関連がある 地中海型食事パターンや睡眠習慣といったライフスタイルがART結果と関連している。われわれは食事習慣、ライフスタイル、生殖医療特異的QOLスコア(Ferti-QoL)を包括的に検討し、どの因子がART結果と関連しているかを調べた。初めてART治療を受ける291人の女性を対象に前向きに調査し、質問票の結果と、ART治療結果との関連性を調査した。 採卵あたりの良質胚盤胞率は、頻繁の魚の摂取と低い傾向にあった。臨床妊娠率は、オリーブオイルの頻繁な摂取とコンピュータの長時間使用と有意に高い関連があり、FertiQoL Total scaled treatment score高値で高い傾向にあった。妊娠反応陽性は、コンピュータの長時間使用で有意な肯定的な関連をうけ、喫煙しているパートナーによって否定的な関連がある傾向だった。以上より、オリーブオイルは食事習慣の中でも重要な因子であり、QOLとパートナーの禁煙支援は不妊カップルには重要かもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに卵巣機能(採卵数、成熟卵率、受精率、良好胚率)を評価するツールを作成目的で、生殖補助医療を実施した患者のデータセットは得られている。データセットには、患者背景(年齢、妊娠出産回数、月経周期、BMI、喫煙歴、手術歴、婦人科疾患既往歴、夫年齢、運動精子数)と採血データ(ホルモン基礎値、抗ミュラー管ホルモン、終末糖化産物、Diacron reactive oxygen metabolites、Biological antioxidant potential、Growth differentiation factor 9)、Bone morphogenetic protein 15)が含まれている。
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今後の研究の推進方策 |
患者のデータセット(患者背景、採血結果)をもとに、卵巣機能(採卵数、成熟卵率、受精率、良好胚率)を評価するツールを人工知能で作成中である。 その結果を踏まえて、卵巣機能に寄与する因子について解明をすすめる。
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