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発がんを齎す細胞増殖に及ぼすがん抑制タンパク質NRKの役割

研究課題

研究課題/領域番号 23K08817
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分56040:産婦人科学関連
研究機関東京工業大学

研究代表者

傳田 公紀  東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (50212064)

研究分担者 林 宣宏  東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (80267955)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
キーワードプロテインキナーゼ / 遺伝子改変マウス / エストロゲン / 細胞増殖制御 / 卵巣 / 胎盤 / 周産期 / 乳腺がん / 発がん / 周産期学
研究開始時の研究の概要

世界的に女性罹患率が高い乳がんにおいて,単一遺伝子の点変異と発がんリスクの因果関係が遺伝性乳がん卵巣がん症候群研究により突き止められ,そのハイリスク原因遺伝子の同定はがんの遺伝子診断や分子制御治療の飛躍的進歩に貢献している。応募者らは,新規なプロテインキナーゼ NRKの遺伝子欠損マウスが妊娠後に胎盤過形成を生じ,顕著な分娩不全が現れること,エストロゲン感受性と考えられる乳腺腫瘍が高頻度に発症することを見出した。
本研究では,NRKが関与する細胞増殖制御機構の解明を目的としてNRK遺伝子欠損マウスの表現型解析によって,がん征圧ならびに周産期医学に資する新たなメカニズム解明に貢献するものと確信する。

研究実績の概要

我々はX染色体にコードされる新奇なセリン-スレオニンプロテインキナーゼ NRK (NIK-related protein kinase) の生理機能を明らかにするため,NRK遺伝子(Nrk)欠損マウスを作出し解析を進めた結果,周産期に関連する顕著な表現型として,妊娠・出産を経験したNrk欠損メスマウスが高頻度に乳腺腫瘍を発症すること,胎児のNrk欠損が胎盤過形成ならびに新生児発育不全に繋がるリスクを生じうる分娩遅延を引き起こすことを明らかにした。野生型メスマウスでは,エストロゲン(E)主要産生組織である卵巣においてNRKが高発現すること,乳腺腫を発症したNrk欠損メスマウスで血中E値が顕著に増大することも見出された。乳がんは臨床学的にその70%がホルモン感受性がんに属する。本研究では,造腫瘍性モデル動物としてNrk欠損マウスを解析することにより,卵巣のE生合成が及ぼす乳腺上皮組織等の細胞増殖制御機構の解明を目標とする。
NRKの機能喪失が哺乳動物個体に及ぼす影響を解析するため,胎盤ならびに乳腺の発生発達過程に重要なEの主要産生器官である卵巣に着目し,野生型マウス個体を対照としたNrk欠損個体についてNrk欠損が卵巣組織のプロテオームに及ぼす影響を系統的・網羅的に解析した。個々のタンパク質の発現量変化ならびに翻訳後修飾への影響を調べるため,野生型個体から採取した卵巣に対するNrk欠損個体臓器の差異について二次元電気泳動法によるプロテオーム解析を行った。その結果,複数のタンパク質スポットで NRK の有無に影響する量的増減が認められた(日本分子生物学会年会発表)。現在これらタンパク質の量的な変動より,生体内においてNRKがどのような機能的役割を果たしているのか検討している。本研究でNRKの生理機能を明らかにすることでがん征圧に有効な分子標的治療法の確立に貢献することが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

妊娠出産を繰り返したNRK遺伝子(Nrk)欠損メスマウスにおいては,致死性のエストロゲン(E)感受性乳腺腫瘍が好発する。本研究では,NRKの遺伝子欠損が及ぼす乳腺腫発症ならびに分娩遅延の病理メカニズムの輪郭を浮き彫りにするとともに,健全な身体において普段NRKがどのような生理的役割を果たしているかについても解明することを目標とする。乳腺腫を形成したNrkマウスの血中E濃度が著しく上昇し,その卵巣において健常マウスに起きないNRKの遺伝子発現上昇が認められたこと,野生型メスマウス個体の乳腺で非妊娠時にほとんど認められないNRK遺伝子の発現が,妊娠期に乳腺組織において誘導され,さらにNrk欠損によりE受容体が発現亢進するというこれまで得られた知見は,Eに対する組織のホルモン感受性の増大に繋がることに起因して生体内の細胞増殖制御に異常をきたす可能性が高いものと考えられる。本年度のプロテオーム解析による卵巣組織内でのタンパク質量変動の研究結果は,Eの主要産生組織である卵巣においてNRKがE生合成を制御しており,授乳期以外に乳腺上皮細胞の過増殖が抑えられる結果,乳腺腫発症を抑止することを顕す可能性を示唆するものである。
NRKは複数のドメインをもつ多機能なセリン-スレオニンキナーゼである。細胞内プロセッシングによる切断で機能制御を受けることが報告されており,分子内のN末端キナーゼドメインやC末端CNHドメインを含めた分子内の異なる領域をエピトープとする複数の抗体について現在作製を進めているところである。二次元電気泳動による卵巣プロテオーム解析とともに,本年度においては当初の研究方針に対し若干の軌道修正を要しながらも,未知の乳腺上皮における細胞増殖制御機構を知る上で有意義な知見を取得することができた。それゆえ,本研究課題は現状においてほぼ当初の実験計画に見合う進捗があったと判断している。

今後の研究の推進方策

今後は本年度の研究成果を踏まえ,エストロゲン(E)が惹起するシグナル伝達に対し,NRKが乳腺上皮細胞の過増殖を制御する帰結として乳腺腫発症が抑止されるという仮説の検証を引き続き進める。なお以下に述べる解析は,NRK遺伝子(Nrk)の欠損がメス妊娠マウスに分娩不全を起こすもう一つの表現型の原因を突き止めるうえでも有益と考えられる。

まず細胞がん化に関わるNRK下流のシグナル伝達経路の制御因子を同定するため,これまでプロテオーム解析により得られたNrk欠損による量的変動が認められたタンパク質の機能解析を進める。Nrk欠損個体の卵巣では,NRKの標的因子の発現量低下が予測される。リン酸化プロテオーム解析を導入することによって,直接のNRKのリン酸化基質となる制御因子を絞り込み,タンパク質リン酸化の連携を追跡することでNRKが寄与する情報の流れがどのような生理的役割を果たすか調べる。また,培養細胞系でNrk発現を制御することによりE受容体およびその関連因子の遺伝子発現がどのような挙動を示すか解析する。ゲノム編集によりNrk変異体を作製し,培養細胞系でホルモン依存性への影響を調べる。マウス初代細胞やヒト卵巣表面上皮細胞,MCF-7(E高感受性),KPL-1(E低感受性)等の培養細胞系を活用する。さらにNRKが与るシグナル伝達下流で発現制御される遺伝子群の卵巣トランスクリプトーム解析の実施についても検討する。本研究課題の発展型として,乳腺腫を生じたNRK欠損個体の卵巣におけるプロテオーム解析の実施も視野に入れたい。

NRKの機能障害は,周産期において及ぼす影響が思いのほか大きいかもしれない。その一方で,Eが司るその他の生理現象にもNRKが関わる可能性がある。Eが絡むNRKの作用点を見出すことが臨床応用への一助となることを常に念頭に置き,研究方針に修正を加えながら今後も研究を進めていきたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Functional elucidation of protein kinase NRK by ovarian proteomics2023

    • 著者名/発表者名
      伝田 公紀,清田 雅哉,Sing Ying Wong,伏見 海,加藤 明,Beni Lestari,福嶋 俊明,駒田 雅之,林 宣宏
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 新規検出デバイス作製に向けた抗ノロウイルス抗体の開発2023

    • 著者名/発表者名
      八鍬佑樹,赤堀泰,傳田公紀,田畑裕貴,林宣宏
    • 学会等名
      第2回日本抗体学会学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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