研究課題/領域番号 |
23K08826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
島田 勝 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40301452)
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研究分担者 |
山下 暁朗 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20405020)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | HPV / CRISPR/Cas9 / cell factor / virus-cell interaction |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、HPV感染に関わる細胞のタンパク質の網羅的な解析により、HPV感染メカニズムを解明することを目的とする。 計画している具体的な研究項目は、①申請者が独自開発した高力価の精製タグ付きHPVウイルス様粒子及びHPV遺伝子産物を用いた免疫沈降法により、結合細胞のタンパク質を網羅的に検索し、それらの細胞のタンパク質がHPV感染過程において担う役割を解析すること、②先端的なCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いた細胞ライブラリに、自殺遺伝子であるチミジンキナーゼを発現するHPVウイルス様粒子を細胞に感染させ、HPV感染する際に必須な細胞因子を同定すること、の2つである
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研究実績の概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの病原微生物である。これまでに、100以上のHPV血清型が同定されている。このうち、約40血清型は生殖器に感染するHPVである。HPV16、HPV18などの血清型の感染は、外生殖器がんや子宮頚がんの原因になる。現在、日本で承認された子宮頚がんワクチンは子宮頸がん、外生殖器がん、あるいは疣に有効性が示されつつあるが、HPV血清型間の交差性が低く、約70%の子宮頚がんしか予防できない。更に、ウイルス感染後の子宮頸がんに対する有効な治療薬はまだ開発されていない。そのため、次世代のHPVに対する治療・予防法が求められている。しかし、HPVは種・細胞特異性が高く、HPVを生産する培養細胞は確立されていない。そのため、HPVの細胞受容体、感染機序などの感染メカニズムは未だ完全に解明されていない。本研究では、HPV感染に関わる細胞のタンパク質の網羅的な解析により、HPV感染メカニズムを解明することを目的とする。 計画している具体的な研究項目は、①申請者が独自開発した高力価の精製タグ付きHPVウイルス様粒子及びHPV遺伝子産物を用いた免疫沈降法により、結合細胞のタンパク質を網羅的に検索し、それらの細胞のタンパク質がHPV感染過程において担う役割を解析すること、②先端的なCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いた細胞ライブラリに、自殺遺伝子であるチミジンキナーゼを発現するHPVウイルス様粒子を細胞に感染させ、HPV感染する際に必須な細胞因子を同定すること、の2つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.質量分析法でHPVと結合する細胞因子を網羅的に同定、解析:これまでの研究で、タグ付きHPV遺伝子産物であるE6を細胞に導入し、網羅的な質量解析によってAIF(apoptosis-inducing factor)はHPVとの結合細胞因子であることを見い出した。本研究期間中、タグ付きHPV遺伝子産物であるE7を細胞に導入した網羅的な質量解析では、HPV E7の結合細胞ペプチドにAIFのペプチドも高く検出された。更なるin vitroで検討すると、High risk HPV E7だけはAIFのFDAドメンと細胞質で結合し、更にカスパーゼ非依存性経路ではAIFの分解によって、クロマチンの分解を抑制し、HPV感染細胞を癌化させることを明らかにした。しかし、Low risk HPV E7はAIFと結合するが、AIFの分解およびクロマチンの分解抑制は認められなかった。その結果から、HPV E7はHPV E6と同じシグナル伝達経路で、AIFの抑制によって細胞が発がんするのではないかと考えられる。また、AIFに対して、HPV E7とE6作用の相違を検討している。 2.HPVの感染過程の解明とCRISPR/Cas9ゲノム編集技術の応用:全ヒトゲノムに対するsgRNAライブラリーを含むCRISPRプラスミドを作製し、Cas9を発現するプラスミドおよびVSV envelopeを発現するプラスミドと共にPEI法で293T細胞に導入し、細胞上清からsgRNAライブラリーを発現するレンチウイルスを回収した。そのレンチウイルスを293T細胞に感染させ、抗生物質での選択による単独遺伝子欠損細胞ライブラリーの作製に成功した。他方、チミジンキナ-ゼ遺伝子(TK)を発現するプラスミドを構築し、そのプラスミド、HPV L1,HPV L2を発現するプラスミドと共にLipofectamine 2000で293T細胞に導入した。その細胞生産された組換えHPV粒子を超遠心法で精製し、感染用に保存している。
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今後の研究の推進方策 |
1.HPV受容体候補であるHPV-BP1のHPV感染過程における機能解析:HPV-BP1の変異体、欠損細胞などを用いてHPVとの結合、感染などにおける機能を検討する。さらに、この分子に対する中和抗体の作製を行い、HPV感染の予防法の開発を試みる。 2.質量分析法でHPVと結合する細胞因子を網羅的に同定、解析:本研究ではHPV E6と特異的な結合細胞因子は35個、HPV E7とは80個が同定された。それらの因子におけるHPVの細胞感染や発現との関係を更に詳しく解析する。 3.HPVの感染過程の解明とCRISPR/Cas9ゲノム編集技術の応用:単独遺伝子欠損細胞ライブラリーをTK遺伝子発現HPV粒子で感染させ、ガンシクロビルでHPVの感染に対する耐性細胞を選択する。生き残った細胞ゲノムを抽出し、横浜市立大学先端医科学研究センタ-・ゲノム解析室の協力の下、次世代シーケンサーで遺伝子解析によるHPV細胞感染に必須な遺伝子を同定する。 4.HPVに対する次世代予防・治療法の開発:上述した解析が順調に推移し、HPV感染発がんに関連する新規細胞因子が同定された場合、その機能をsiRNAを含む阻害剤により抑制することや、プラスミドベクターを用いた高発現により増強し、HPVの細胞への感染阻害およびHPVが感染している細胞のアポトーシス誘導について検討を行う。この解析により、HPV感染の予防・治療法の開発の可能性を検討する。
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