研究課題/領域番号 |
23K08830
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
平澤 猛 東海大学, 医学部, 准教授 (70307289)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | in vitro / シリビニン / 卵巣明細胞癌 / 休眠療法 / HIF-1 / 上皮性卵巣癌 |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌はSilent diseaseと呼ばれ早期発見が難しく、しばしば治療に難渋する疾患の一つである。その中の一つである明細胞癌は欧米に比して本邦でのみ発生率が高く、進行例では予後不良であり、本邦で新たな治療計画を考案することは重要かつ急務である。申請者は以前より、腫瘍の微小環境における中心的因子「低酸素誘導因子 HIF-1」が、明細胞癌をはじめとする難治性卵巣癌の増殖に深く関与しており、本因子のコントロールこそが治療への近道であることを提唱し研究を展開してきている。本研究は、HIF-1の阻害ならびに活性化を抑制させることで、明細胞癌の腫瘍休眠療法を通じたQOL向上ならび予後改善を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、明細胞癌におけるシリビニンの効果と作用機序について、より詳細に解明していくため、これまでに我々が行ってきた実験の再現性の確認とデータの再解析等、in vitroにおける検証を重点的に行った。現在まで、シリビニンの効果について卵巣癌培養細胞株を対象とした報告のほとんどは、組織型が漿液性癌である。漿液性癌と明細胞癌とではがんの性質や薬剤感受性も大きく異なるため、現段階において我々は、明細胞癌培養細胞株におけるin vitro基礎データを積み上げることが極めて重要であると判断した。 これまで、腫瘍細胞におけるHIF-1aの発現を抑制する良好な結果が得られていたシリビニンの投与条件について、今後人に応用し、現行の薬剤との併用可能を目指していくことを目的とした検討を再度行った。これまでの条件よりも、より溶解しやすく低濃度での効果が期待できる結果が得られた。またこれまでは、シリビニンが、我々が着目しているHIF-1 pathwayにどのような影響を与えるかを解析してきたが、その他のpathwayの動態を解析みると、免疫チェックポイント阻害薬との併用が期待できる系の変化が観察された。 次年度より動物実験を計画していたが、免疫不全マウスを使用する予定であるため、腫瘍細胞および免疫系細胞におけるシリビニン投与による変化を詳細に捉え、in vitroにおけるさらなるデータを積み重ねた上で実験計画や使用匹数を決定していく必要があると考えられた。in vivo実験系での効果が心待ちにされるところだが、動物愛護の観点からも、in vitroでのシリビニンの動態を、再現性をもって明らかにしておくことは重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、in vitro実験系を行っていくための基礎試験、およびデータの確認を中心に行った。シリビニンの効果をより詳細に解明していくために、既にこれまで我々が蓄積した研究データに関し、あらためて再現性を確認する必要があると考えられた。そのため、交付申請書に記載した新たな研究を展開する前に、これまでの実験・解析方法において改善すべき手順や方法論があるか否か、またそれをどのように改善するかについて検討を行ったことが、進捗状況の遅れに繋がったと考えている。 まず、より厳密にシリビニンを細胞に作用させるために、粉末であるシリビニンの溶媒の再検討から行った。これまでは、Dimethyl sulfoxide(以下、DMSO)を溶媒として使用していた。培養細胞に投与すること、投与実験が行われている文献においてDMSOが用いられているケースが多く認められたことから、我々もDMSOを用いて研究をスタートさせていたが、溶解に時間を要すること、また、溶解後の水溶液の色の変化(白色粉末→黄色溶液)が顕著であり細胞への何らかの影響が懸念されたため、エタノールに変更することとした。懸念されていた点は改善された。 計画していた、シリビニン投与による細胞障害性の評価を行った。明細胞癌培養細胞株におけるLDH(Lactate dehydrogenase:溶解した細胞から放出される安定な細胞質酵素)の放出量は、最大でもコントロールの1割程度であった。従ってシリビニンの細胞障害性は少ないと考えられた。がん細胞の休眠・抗がん作用を期待していく中で、この結果がどう働くか、今後考察していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
明細胞癌培養株ES-2を用いた基礎解析によりin vivo実験系の条件が確定した段階で他の細胞における実験系も進めていく。 これまで我々が行ってきたin vitroにおけるシリビニン投与の基礎的検討では、シリビニンは比較的高濃度・短時間の投与条件で良好な結果が得られてきた。しかし今後、人に応用し、現行の薬剤との併用可能を目指していくことを目的とした時、より低濃度で最適な効果が得られる条件をさらに探求していく必要があるのではないかと考えられた。したがって、卵巣明細胞癌培養細胞株におけるさらなる詳細な検証を加えることは必須である。 まずは、シリビニン投与条件の幅を広げ、細胞生存性試験を行う。この結果と用いた細胞株の特性(手術進行期など)との関連を調べる。すでに行ったシリビニン投与細胞におけるDNAマイクロアレイ解析について、HIF-1 pathwayにおける遺伝子の発現変化を解析したので、全体を通してどのようなpathwayが動いているのか、再度解析を行う。また今後予定しているin vivo実験系は、免疫不全マウスを使用する計画であるので、まずは免疫細胞系の培養細胞株を用いて、そもそもシリビニンが免疫系に作用するのか、また、作用するのであればどのような影響を及ぼすのかを解析する予定である。
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