研究課題/領域番号 |
23K08831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石川 真由美 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60398831)
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研究分担者 |
石川 博 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30089784)
鈴木 俊治 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (80291722)
大内 望 日本医科大学, 医学部, 講師 (10445752)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 胎盤性成長ホルモン / HLA-G |
研究開始時の研究の概要 |
母体の免疫寛容を司るHLA-Gは胎児由来の絨毛細胞で発現しているがその発現調節機構は解明されていない。申請者らは成長ホルモンが肝臓の再生過程でマウスのH2Bl(ヒトHLA-Gに相当)の発現を増加させることを見出した(Ishikawa M, et al. Hepatology. 73: 759-775, 2021.)。この発見から胎盤性成長ホルモン(pGH)がHLA-Gの発現を促し、母体の免疫寛容を誘導する可能性が示唆された。 本研究ではpGH刺激による絨毛細胞のHLA-G発現や妊娠経過におけるpGH濃度とHLA-Gの発現との関連を解析し、HLA-G発現の調節機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
母体にとって胎児は父親由来の主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex(MHC))や他の異物抗原を持つ半同種移植片であるにもかかわらず、胚子や胎児は免疫学的拒絶反応を免れている。このひとつの要因としてあげられているのが母体の免疫学的寛容である。母児接点に存在する胎児由来の絨毛細胞(trophoblast)にはnon-classical MHC class Iの一種であるHLA-Gが表出されており、このHLA-GをNK細胞のキラー細胞抑制レセプターが認識することで、絨毛細胞はNK細胞の攻撃から免れている。 我々は、下垂体から分泌されている成長ホルモンがマウスの肝臓の再生過程においてH2Bl(ヒトHLA-Gに相当)の発現を増加させることを解明した(Ishikawa M, et al. Hepatology. 73: 759-775, 2021.)。一方、胎盤からは胎盤性成長ホルモンが分泌され、その胎盤性成長ホルモンは下垂体由来の成長ホルモンと同じ成長ホルモン受容体に結合することが知られている。これらの研究から胎盤においては胎盤性成長ホルモンがこのHLA-Gの発現調節を行い、妊娠の維持に関与するのではないかと考え、本研究を開始した。 2023年度においては、絨毛細胞のprimary cultureを行い胎盤性成長ホルモンが絨毛細胞においてHLA-G産生を促すことを確認した。また正常胎盤に対し抗HLA-G抗体で染色したところ、母体との接着面よりもむしろ羊膜に多く陽性細胞が認められた。今後は、絨毛細胞を三次元培養し、NK細胞とco-cultureを行い、絨毛細胞の走化性やNK細胞によるダメージなどを観察する予定である。また妊婦の血中のHLA-G測定予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
絨毛細胞のprimary cultureを行い、胎盤性成長ホルモンで刺激し、HLA-GのmRNAをreal time PCRで評価し、また培養液中のHLA-G濃度の測定を行った。絨毛細胞において、胎盤性成長ホルモンはHLA-GのmRNAを増加させ、また培養液中のHLA-G濃度を上昇させることを確認できた。つまり、本研究の要となる胎盤性成長ホルモンが絨毛細胞のHLA-G産生を刺激することが解明できた。 また妊婦の血清や胎盤の収集を行っている。数は少ないが、正常胎盤に対し抗HLA-G抗体で免疫染色を行ったところ、羊膜に比較的陽性細胞が多く認められた。 現在、予定よりも進行が遅れている。理由としては、胎盤から絨毛細胞のprimary cultureを行っているが、絨毛細胞の入手が難しく、また症例によって性質に差が大きいこともあり、研究計画の一部見直しを検討しているためである。
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今後の研究の推進方策 |
絨毛細胞におけるHLA-G産生が、pGHによってどのような細胞内情報伝達経路を通り調節されているか、JAK2 inhibitorやMEK1/2 inhibitorを用いて解明していく予定である。また絨毛細胞を三次元培養し、NK細胞とco-cultureを行った上で胎盤性成長ホルモンで刺激し、NK細胞からの攻撃を防御することができるかを観察予定である。またこれらのin vitroの研究を行うにあたり、初期胎盤から得られ不死化された絨毛細胞株の使用を検討している。 また現在、妊婦の血清、胎盤を収集しているが、血清中のHLA-Gと胎盤性成長ホルモンの測定を行うこと、また引き続き胎盤の抗HLA-G抗体を用いた免疫染色などを行う予定である。
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