研究課題/領域番号 |
23K08875
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 群馬医療福祉大学 |
研究代表者 |
安部 由美子 群馬医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (70261857)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 絨毛膜羊膜炎 / 羊水 / アクチビン / インヒビン / フォリスタチン / アクチビン結合蛋白質 / 胎仔肺 |
研究開始時の研究の概要 |
絨毛膜羊膜炎/子宮内感染症の羊水ではアクチビンが高値となるがアクチビンの胎児発育への影響は不明である。一方,気管支肺異形成症モデル新生仔マウスではアクチビンレセプター拮抗薬が障害を正常化することが報告されている。これまでの私のマウス羊水中へのアクチビン注入実験では胎仔肺の遺伝子発現に変化が生じているため,本研究によりアクチビンの胎仔肺への影響を明らかにする。更に,アクチビンの負の制御因子で,アクチビン結合蛋白質であるフォリスタチンの同時注入によりアクチビンの胎仔肺への作用が抑制されるか否かを明らかにする。フォリスタチンはヒト羊水中に存在する結合蛋白質のため,胎児治療に繋がることが期待される。
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研究実績の概要 |
絨毛膜羊膜炎は早産の主因であり,早産は様々な疾患のリスクファクターとなることから病態に即した治療が必要である。絨毛膜羊膜炎/子宮内感染症では,羊水中のアクチビンが高値となることが報告されているが,増加したアクチビンが胎児胎盤系にどの様に影響するかは判っていない。成獣マウスの肺でアクチビンを過剰発現させると,肺サーファクタント蛋白mRNAの発現量が減少し,呼吸窮迫症候群様の症状が発生することや,気管支肺異形成症モデル新生仔マウスでは,アクチビンレセプター拮抗薬が気管支肺異形成症様障害を正常化することが報告されている。さらに,敗血症の患者では血中アクチビンがCRPとパラレルに上昇すること,リポポリサッカライド投与による実験的敗血症モデルマウス(成獣)では,死亡率高値群のアクチビン値が高く,アクチビン作用を打ち消すアクチビン結合蛋白質フォリスタチンの投与は死亡率を低下させることが報告されていることから,羊水中で増加したアクチビンの胎児胎盤系,特に胎児肺への作用を明らかにすることは,早産の病態解明の一助となり,胎児治療に繋がると考え本研究を行っている。研究の過程で,研究に用いるJcl/ICRマウスの胎仔と胎仔付属物(羊水,胎盤)の胎仔齢に伴う重量変化と,胎児治療のドラッグデリバリーシステムに用いられる可能性のあるリポソーマル粒子のマウス羊水中の安定性について解析し報告した(Ogawa N, Hirayama N, Abe Y. Shimane J Med Sci 40:55-60, 2023)。また,ヒトとは異なり,マウス羊水中のインヒビンやアクチビンの濃度は報告されていないため,胎仔齢に伴う変化を報告した(安部由美子他,第47回日本比較内分泌学会大会及びシンポジウム,2023年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度までは大学院生が研究に参加しており,2023年度も同様に研究を推進する予定であったが,2023年度は大学院生の参加を得られずマウスの羊水中にアクチビンを注入するという微細で正確な手技を必要とする実験を行うことが出来なかった。このため,今年度はこれまでの研究で得たデータの解析を中心に研究を進め,Jcl/ICRマウスの胎仔発育に伴う羊水等の重量変化と,リポソーマル粒子の胎仔羊水中の安定性について報告した(Ogawa N, Hirayama N, Abe Y. Shimane J Med Sci 40:55-60, 2023)。また,マウス羊水中のインヒビン,アクチビン濃度は報告されていないため,胎仔齢に伴う変化を報告した(安部由美子他,第47回日本比較内分泌学会大会及びシンポジウム,2023年)。
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今後の研究の推進方策 |
1)フォリスタチンはアクチビンのレセプターへの結合を阻害するアクチビン結合蛋白質であり,ヒト羊水ではフォリスタチン濃度の胎齢による濃度変化が報告されている。しかし,マウス羊水中フォリスタチンの胎齢に伴う濃度変化は報告されていない。これは,マウス羊水中フォリスタチンの濃度測定に適した測定系が存在しないためである。このため,測定系を開発し,胎齢に伴う羊水中フォリスタチン濃度の変化を明らかにする。2) マウス羊水中へのアクチビン注入実験により,アクチビンの胎仔肺発育への影響を明らにする。注入量は1)による羊水中フォリスタチン濃度を踏まえて決定する。注入時期はヒトの妊娠中期に相当する胎齢16.5日と,後期に相当する胎齢17.5 日とする。妊娠を継続し,肺発育の異なる段階で屠殺,採材する。2)-1.胎仔肺の分子遺伝学的解析:これまでの研究で,胎生17.5日注入,胎生 18.5日採材の胎仔肺のDNA microarrayを用いた解析で,アクチビンにより発現量が減少する遺伝子が検出されているため,同じmicroarrayを用い,胎生16.5日,胎生18.5日採材の胎仔肺においても同様な遺伝子発現の変化がみられるか否かを明らかにする。MicrorrayでmRNA発現量に変化のあることが判明した遺伝子については,RT-qPCRにより発現量の変化を確認する。2)-2.胎仔肺の組織形態学的解析:分子遺伝学的解析により発現量の変化を認めた遺伝子については,免疫組織染色により,蛋白質レベルでの変化を検出する。3)アクチビンと共にアクチビン結合蛋白質フォリスタチンを羊水中に注入することにより,アクチビンにより生じた胎仔肺発育への影響が減弱,消失するかを明らかにする。
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