研究課題/領域番号 |
23K08883
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本岡 大社 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90907776)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 卵巣がん / 発がん / 環境物質 / 鉄 / 吸着能 / 細胞外小胞 / 卵巣癌 / 発癌 |
研究開始時の研究の概要 |
環境中の微粒子であるアスベスト、タルクと卵巣がんの関連性は疫学調査によって指摘されてきたものの、実験動物による実証はなされておらず、これらの物質が生体内で引き起こす発がんメカニズムも不明であった。このような背景の中、研究代表者は齧歯類を用いた発がん実験によってアスベスト、タルクの卵巣における発がん性をこれまでに示してきた。 本検討ではこれらの物質による卵巣発がんの分子細胞学的なメカニズムをタンパク質等の「吸着性」に着目して明らかにする。今回着目する「吸着性」は多くのナノマテリアルが持つ性質であるため、その生体への影響を明らかにすることは安全なナノマテリアルの開発・運用に貢献するものと考えている。
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研究実績の概要 |
ナノマテリアルを含む微粒子は「吸着性」を示すことが多いが、この性質が生体に及ぼす影響は未だ明らかではない。本研究では、卵巣がんとの関連性が指摘されているアスベストとタルクを具体的な微粒子として選び、「吸着性」が「発がん」にどのように関わるかを解明することを目的とする。また、微粒子の吸着性を調整することで人体に安全なナノマテリアルおよび微粒子の開発と運用を進め、危険な微粒子の環境中への拡散を防ぎ、健康寿命の延伸を図ることを最終的な目標としている。 本検討では2023年度、2024年度、2025年度それぞれの進捗目標を掲げている。2023年度の目標は、アスベストとタルクが吸着する物質の同定と、そのタンパク質の吸着が発がん性に及ぼす影響を明らかにすることとしていた。 2023年度の検討では、アスベストとタルクが中性条件のpH下で吸着するタンパク質を質量分析で網羅的に検出した。検出した吸着タンパク質の中に、アスベスト・タルクによる卵巣の発がんリスクが特に大きいとされる生殖年齢女性の骨盤内で周期的に増加する特定のタンパク質(X)が含まれていたため、これに着目した。動物実験および細胞実験の結果、アスベスト・タルク曝露で惹起される曝露卵巣・細胞におけるDNAの二本鎖切断が、X吸着後の曝露でさらに増加することが示された。これは、Xの吸着がアスベストおよびタルクの発がん性を増強する因子である可能性を示唆している。 このほか、研究を効率的に進めるため卵巣発がんに関わる癌抑制遺伝子であるBRCA2の変異モデルラットを作成・樹立した。このモデルでは雌雄ともにヘテロ接合体変異で生殖能が低下することを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、網羅的解析による吸着物質の評価が進められ、さらに特定のタンパク質を吸着することでアスベスト・タルクが曝露細胞・曝露組織に及ぼす遺伝毒性が増大することを確認している。 また、次年度以降の計画である「吸着性の調整による安全性の改善」に関わる検討として、アスベスト・タルクの吸着性を規定していると考えられる因子についてもデータを集めつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在評価中の具体的なタンパク質の吸着で惹起される遺伝毒性について、より詳細な分子細胞学的な機序を細胞実験、動物実験を通し評価する。また、当初の予定で掲げていた通り、細胞外小胞の吸着性とその生体への影響に関する検討を行う。 さらに、安全なナノマテリアルの開発・運用に貢献できるよう、吸着性を規定している因子へのマテリアル修飾などによる介入を行い、生体反応に及ぼす影響を評価する。
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