研究課題/領域番号 |
23K08892
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小林 裕明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70260700)
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研究分担者 |
谷口 俊一郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (60117166)
山本 雅達 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (40404537)
戸上 真一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20644769)
簗詰 伸太郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 准教授 (40623343)
水野 美香 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (50588837)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | バイオDDS / ビフィズス菌 / 5FC(フルシトシン) / cytosine deaminase / 前臨床試験 |
研究開始時の研究の概要 |
子宮頸がんの放射線±全身化学療法後の再発病巣は嫌気性環境となり、薬剤到達性が低下するため難治性である。我々は嫌気的環境で増殖するビフィズス菌を遺伝子改変し、cytosine deaminaseを発現させる生物製剤APS001Fを作成した。5FUのプロドラッグであり以前から抗真菌剤として安全に内服されてきた5FCはcytosine deaminase により5FUに変換される。担癌患者にAPS001Fを静注後、がん病巣で集積・増殖した頃に5FCを内服することで、腫瘍局所でのみ5FUが産生されるというバイオDDSを開発した。第Ⅰ相臨床試験を開始したが有害事象は生じず、更なる改良を研究中である。
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研究実績の概要 |
固形がんに特徴的な低酸素環境を標的とするビフィズス菌(B菌)を遺伝子工学的に改変し、無毒である5FCから制がん剤5FUを産生する生物製剤(APS001F)を開発した。すでに米国での第1相臨床試験が終了し、ヒトにおける静脈内投与の安全性は確認した。今後さらに薬剤産生の持続性/安全性/固形がんにおける菌着床効率などの面で改善を加え、本邦で進行再発子宮頸癌を対象とした臨床試験を行いたい。本研究はその前臨床試験で、安全性の機序を分子免疫学的に明確にすること、更なる安全性の向上と抗腫瘍効果の増強を両立させるため、菌の腫瘍局所への初期送達性を増強することを目的としている。 1) B菌のマウス静脈内投与、培養マウス樹状細胞への作用による炎症サイトカインの誘導は極めて弱いがTLR2を介する反応があることを見出した。その微弱ながらも反応を惹起する分子の同定と機序解明を行っている。 2) EPR(Enhanced Permeability and Retetion)効果はビフィズス菌のようなマイクロオーダーのキャリアーを静脈内投与する際でも有効に働くという。EPR効果をさらに増強させるために血行動態に対して一過性の変動を与え、腫瘍到達性の亢進をもたらしうるニトログリセリンやアンジオテンシンⅡなどの効果を検証した。これらの血管作動物質を菌投与前あるいは同時に投与して、菌の体内分布を非投与群と比較したが、有意な腫瘍内到達性の増加を認めなかった。血圧上昇変化に起因する安全性上の問題はなかった。 3) B菌が細網系に貪食されることを防御するため、リポソームを用いたDDSの研究成果を参考に、PEGなどの高分子や細胞保護に用いられる多糖類で表面を覆った菌体を担がん動物に静脈内投与し、菌着床効率の亢進をもたらすものを探索する。現在、高分子で修飾し、修飾された菌と対照菌の腫瘍内到達性の比較を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は生物製剤(APS001F)を用いた臨床試験の前臨床試験として、安全性の機序を分子免疫学的に明確にすること、更なる安全性の向上と抗腫瘍効果の増強を両立させるため、菌の腫瘍局所への初期送達性を増強することを目的としたが、本年度取り組んだ3つの実験のうち、 1) B菌のマウス静脈内投与、培養マウス樹状細胞への作用による炎症サイトカインの誘導は極めて弱いがTLR2を介する反応があることを見出したことは、良い進展であった。 2) EPR効果をさらに増強させるために腫瘍到達性の亢進をもたらしうるニトログリセリンやアンジオテンシンⅡなどの効果を検証したが、これらの血管作動物質を菌投与前あるいは同時に投与しても、有意な腫瘍内到達性の増加を認めなかった。よって、今後このアプローチにより効果増強を狙う試みは棄却することとした。 3) B菌が細網系に貪食されることを防御するため、高分子や多糖類で表面を覆った菌体を担がん動物に静脈内投与し、菌着床効率の亢進をもたらすものを探索中であるが、まだ現時点で有効な高分子を同定てきていない。
以上より取り組んだ実験のうち、一つは良い進捗が得られ、一つは検証中、残る一つはネガティブな結果に終わったので、現在までの研究進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前述した現在までに得られた研究成果を踏まえて、1) B菌のマウス静脈内投与、培養マウス樹状細胞への作用による炎症サイトカインの誘導は極めて弱いがTLR2を介する反応があることを見出したので、その微弱ながらも反応を惹起する分子の同定と機序解明を行う 2) EPR効果を増強させることで菌体の腫瘍到達性亢進を得る方策の探求研究継続は断念する。 3) B菌が細網系に貪食されることを防御するため、高分子や多糖類で表面を覆った菌体を担がん動物に静脈内投与し、菌着床効率の亢進をもたらすものを探索中であるが、まだ現時点で有効な高分子を同定てきていないので、引き続き実験を継続する。その物質が同定できたら、菌側反応責任分子をコードする遺伝子をノックアウトすることによって、宿主と反応せず、より安全で腫瘍送達効率の良いB菌を樹立することを試みる。
以上に加えて、下記の新たな研究展開を試みる。4) 選択圧無しで発現ベクターを保持する系の構築:臨床でプラスミド型遺伝子発現ベクターを導入した菌株に対しベクターを維持するために選択圧としての抗生剤は使用しない。従って、ゲノム編集技術を用いて、選択圧無しでもプラスミドが維持できる系を樹立する。
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