研究課題/領域番号 |
23K08902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
柊元 巌 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | HPV / 子宮頸癌 / E2 / バリアント / 子宮頸がん |
研究開始時の研究の概要 |
子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)には、全長ウイルスゲノム配列で10%以下の違いを示す多数のバリアントが存在する。これまでに我々は、日本人にのみ感染している特徴的なHPVバリアントを報告してきた。本研究は、日本人に特異的なHPVゲノム配列が、日本人集団内で維持されてきた生物学的基盤を明らかにし、HPVによる持続感染および発癌につながる新たな分子メカニズムを見出すことを目指している。
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研究実績の概要 |
子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)には、全長ウイルスゲノム配列で10%以下の違いを示すバリアントが存在する。これまでに我々は、日本人にのみ感染している特徴的なHPVバリアントを報告してきた。本研究は、日本人に特異的なHPVゲノム配列が、日本人集団内で維持されてきた生物学的基盤を明らかにし、HPVによる持続感染および発癌につながる分子メカニズムを見出すことを目的としている。 今年度は日本人に特異的に検出されるHPV16 E2変異体(A105T, F271C)の機能解析を行った。発現プラスミドから野生型(WT)及び変異型E2を子宮頸癌由来HeLa細胞に発現させたところ、A105TはWTと比べて細胞内レベルが著しく低下していた。HeLa細胞でE2を発現させると、細胞ゲノムに組み込まれたHPV18プロモーターからのE6発現が抑えられ、p53の発現が回復する。A105Tは発現レベルが低いにも関わらずWTと同等にp53を誘導した。一方、F271CはWTと比べて発現レベル及びp53誘導能に違いは認められなかった。またHPV陰性子宮頸癌由来C33A細胞でのHPV複製アッセイでは、どちらの変異型E2もWTと同等の複製活性を示した。 E2の生物活性として、上皮間葉転換を促進する転写因子Twist1の発現を抑制することが報告されている。そこでWT及び変異型E2によるTwist1発現抑制の違いを検討するために、Twist1のプロモーター領域を組み込んだレポータープラスミドを構築した。また日本人の子宮頸癌及びその前癌病変の臨床検体からE2遺伝子をPCR増幅し、発現プラスミドに組み込んだ。HeLa細胞でのレポーターアッセイで、WT及び臨床検体由来のE2によるTwist1プロモーターの抑制が認められ、その抑制の程度には臨床検体ごとに違いが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
E2変異体の発現プラスミドとアッセイ系の構築が完了し、E2変異体の機能解析が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
HPV16陽性の子宮頸部上皮内腫瘍の検体からE2遺伝子をPCR増幅し、その配列を解読する。患者のHLAタイピングの結果を収集して、日本人に特徴的なHLAハプロタイプとE2バリアントの関連を検討する。 変異アミノ酸は転写活性化ドメインに位置し、その変異によりドメイン全体の三次元構造が変化することが考えられる。そこでE2変異体の転写活性化ドメインの構造を、統合計算化学システム(Molecular Operating Environment)により構築して、分子動力学解析によりドメイン全体の自由エネルギー変化を算出することで、変異がドメイン構造の物理化学的な安定性に与える効果を検討する。
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