研究課題/領域番号 |
23K08915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
北原 糺 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30343255)
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研究分担者 |
岡安 唯 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10596810)
山下 哲範 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50588522)
植田 景太 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (50865574)
塩崎 智之 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70812668)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 耳鳴 / サリチル酸 / ラット / マウス / 逃避行動 / c-fos / 漢方薬 / めまい / 眼振 / 動物モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、加齢性耳鳴、突発性難聴後遺症耳鳴という、多くの患者が患う耳鳴症に関する動物モデル確立と、それを用いた分子機構解明、新規治療法開発を目指すものである。 小動物へのサリチル酸投与により誘発される耳鳴発生の際、感覚上皮細胞、らせん神経節細胞から中枢聴覚伝導路における最初期遺伝子Fosタンパクの発現様式を、耳鳴分子マーカーとして検索する。動物行動学的な逃避実験系を用いた耳鳴行動マーカーの検索も行う。 この耳鳴可視化マーカーを用いて、音響外傷性、薬剤障害性、加齢性等の耳鳴モデルにも研究対象を広げることができるか普遍性を確認しつつ、治療薬候補の投与効果を評価する。
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研究実績の概要 |
Eggermont-JJらによると、米国では一般人口の10%前後に絶え間ない耳鳴を自覚しており、高齢者になるとその比率は高くなる(TRENDS in Neurosci 27: 676-682, 2004)。日本においても神崎らの報告にあるように、耳鳴を苦痛と感じ日常生活に支障を来たす、いわゆる耳鳴症患者は一般人口の3%前後と看過できない比率である(耳鳴の克服とその指導, 金原出版)。また耳鳴は直接生命予後には影響しないが、重篤な精神神経症状を併発するなど、社会的問題となる場合が少なくない。我々が本研究を着想するに至った経緯は、このような耳鳴症患者はストレスの多い現代社会において増加傾向にあるにもかかわらず、実際の臨床現場における耳鳴治療はおざなりな薬物治療が漫然と続けられ発展性に乏しい現状と、それに対して動物を用いた基礎研究法が未だ確立されていない現状を鑑みてのことである。 そこで我々は2023年度の研究として、サリチル酸の大量投与によりヒトおよび小動物に耳鳴を引き起こすことを、アクリル板で仕切られた入れ物の底面に微弱な電流を流すデザインの動物行動学的逃避実験装置を用いて、ラットを用いたサリチル酸耳鳴動物モデルの作成に成功した。さらにこの動物モデルを使用して、サリチル酸耳鳴が16kHz、60dBに近似していることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はまだコロナにより、当大学内における行動制限が存在していた。さらに、2年連続で入局者がゼロであったことも人材的に影響して研究の進捗の遅れにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はラットおよびマウスを用いた同様の逃避行動実験系にて、音響暴露下での耳鳴を検索する。同様の実験系を用いるためには、条件付けの外部音を感知可能でなければならないため、蝸牛有毛細胞が50%前後壊れる音響レベルを、組織学的、機能学的に調整する。それに並行して、ラットおよびマウスを用いた同様の逃避行動実験系にて、アミノグリコシド系抗菌薬による内耳障害下での耳鳴を検索する。蝸牛有毛細胞が50%前後壊れるカナマイシン濃度、ゲンタマイシン濃度を調整する。サリチル酸耳鳴、音響外傷による耳鳴、アミノグリコシド内耳障害による耳鳴という、異なる3種類の耳鳴動物モデルにおける、耳鳴が何kHz、何dBに近似するのか、検討する。 耳鳴は幻肢痛と類似した現象であり、内耳の感じる痛みであると考えると、痛み受容体TRPV1の耳鳴への関与の可能性を探ることは重要である。らせん神経節における神経細胞生命維持機構に、神経栄養因子であるBDNFなどの関与も大いに考えられる。サリチル酸投与ラットおよびマウスのらせん神経節において、BDNF分子動態を確認しつつ、TRPV1およびその周辺分子との相互関与を検索する。耳鳴治療薬としてTRPV1拮抗薬等々の利用の可能性が考えられるが、そのことでBDNFを介する神経細胞生命維持機構に悪影響を及ぼさないかを確認していく。
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