研究課題/領域番号 |
23K08931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
伊藤 有未 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (00646458)
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研究分担者 |
成田 憲彦 福井大学, 学術研究院医学系部門, 客員教授 (80345678)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | IL-1β / 細胞増殖能 / 細胞浸潤能 / 口腔癌 / IL-1RA / 放射線性粘膜炎 / 放射線増感作用 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線療法は今日の口腔癌治療に必須のモダリティであるが、放射線照射により腫瘍周囲の正常細胞から産生されるインターロイキン-1β(IL-1β)は、腫瘍の浸潤・増殖を促進し、口腔粘膜炎を惹起するなど、治療に悪影響を及ぼしうることが報告されている。これに対し、IL-1βのレセプターに結合し、アンタゴニストとして作用するIL-1RA(Interleukin 1 receptor antagonist)が存在しており、本研究では口腔癌放射線療法においてIL-1RAがIL-1βを阻害することで、腫瘍抑制効果をもたらし、さらに放射線性粘膜炎の抑制が可能か、培養細胞株、マウス腫瘍モデルにて解析する。
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研究実績の概要 |
in vitroにてIL-1βが扁平上皮癌細胞の増殖浸潤にどのように影響するかと、IL-1RAがそれに対してどのような効果を持つのかを解析するため、以下の実験を行った。 ヒト口腔繊維芽細胞株JCRB9103に放射線を照射しIL-1βの産生をELISAで測定した。放射線を0,2,4,6,8Gy照射し、6時間後、24時間後のIL-1β産生量を測定したが、上昇は認められなかった。 次にヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いて、細胞増殖におけるIL-1βの効果を解析した。扁平上皮癌細胞株においては、IL-1β10ng/ml, 50ng/mlの濃度において細胞が増殖する傾向が認められた。IL-1β100ng/ml以上では、再び減少に転じる傾向が認められた。T3M-1においてはIL-1βで刺激しても細胞増殖に変化は認められなかった。細胞株によってIL-1βの影響の違いが認められたが、これはT3M-1の増殖スピードが著しく速いためにIL-1βの増殖への影響が現れにくかった可能性が高い。 IL-1βの細胞増殖への影響をIL-1RAが抑制しうるか、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いて検討した。IL-1RAの濃度を0,10, 50, 100, 200ng/mlで比較検討を行った。しかしながら、IL-1RAを添加してもIL-1βによって細胞増殖が促進される傾向は認められ、IL-1βによる増殖抑制効果は認められなかった。さらに細胞浸潤におけるIL-1βの影響をヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-3, T3M-1を用いてinvasion assayにて検討したが、IL-1βによる浸潤能の変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔線維芽細胞JCRB9103は増殖速度が緩徐であり、実験に十分な量の細胞が成長するのに時間を要している。また放射線照射により培養上清中にIL-1βが放出されると予想していたが、少なくとも当初予定していた条件において、放射線照射後6時間、24時間では測定可能な程度の濃度のIL-1βは産生されていないと考えられた。条件変更により放射線照射によって口腔線維芽細胞からIL-1βが産生されることが証明できるのか、検討に時間を要した。 また細胞浸潤能を解析するためのinvasion assayではパイロットスタディで予想されたような傾向が認められなかったため、実験手法を見直す必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
1回の放射線照射にて口腔線維芽細胞が産生するIL-1βの量はごく微量である可能性がある。in vitroでIL-1β産生をELISAで検出することは困難な可能性がある。放射線照射後の口腔線維芽細胞のRNAを回収し、リアルタイムPCRでIL-1βの発現を調べてみたいと考えている。 また、口腔繊維芽細胞から産生されるIL-1βの測定が困難である場合には、扁平上皮癌細胞からのIL-1β産生が認められる可能性もあるので、使用細胞をHSC-2, HSC-3, T3M-1等に変更して検討することも考える。 またinvasion assayはキットを変更したために浸潤能を正しく評価できていない可能性があると考えられる。パイロットスタディで用いたキットに変更して、再度実験を行うことにする。まずIL-1βによって浸潤能が変化するかどうか確認した上で、IL-1RAが浸潤能を抑制すことが可能か実験を行う。
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