研究課題/領域番号 |
23K08932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中村 勇規 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90580465)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アレルギー / マスト細胞 / 時計遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、アレルギー性鼻炎患者に抗酸化剤投与や抗酸化物質を含む食物摂取により症状が改善することが報告されているが、IgE刺激によるマスト細胞の脱顆粒反応と酸化ストレスとの関係は十分に理解されていない。 研究代表者らは、予備的検討で、時計遺伝子Bmal1が欠損したマスト細胞は、抗酸化遺伝子群の発現が減弱し、IgE刺激による脱顆粒反応が亢進することを見出した。 本研究では、時計遺伝子Bmal1による酸化ストレス応答制御を介したIgE刺激によるマスト細胞の脱顆粒反応ならびにアレルギー性鼻炎の病態形成に果たす役割を明らかにし、アレルギー性鼻炎に対する新たな予防や治療法の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
【目的】近年、IgE/マスト細胞によるアレルギー性鼻炎の病態に酸化ストレスが強く関与し、抗酸化剤投与よってその症状が抑制できることが報告された。また、時計遺伝子Bmal1が酸化ストレス応答において重要な役割を果たすことが示唆されている。本研究では、概日時計Bmal1よる酸化ストレス応答を介したIgE刺激によるマスト細胞脱顆粒反応の制御機構を明らかにするために、Bmal1欠損マウスを用いて検討を行った。 【方法】1. 野生型マウスおよび時計遺伝子Bmal1欠損型マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMCs)を作製し、酸化ストレス応答に関連する遺伝子発現を比較した。2. 野生型および時計遺伝子Bmal1欠損型BMMCsを用いて、IgE刺激による脱顆粒反応を比較した。 【結果】1. 時計遺伝子Bmal1欠損により抗酸化応答に関与する転写因子Nrf2および抗酸化酵素HO-1とSOD2の発現が有意に減少し、酸化ストレス暴露による細胞生存率も有意に低下した。2. 時計遺伝子Bmal1欠損BMMCsにおけるIgE刺激による脱顆粒反応が有意に上昇していた。 【結論】以上の結果から、マスト細胞においてBmal1が細胞内の酸化ストレス応答を制御しており、それがIgEによる脱顆粒反応へも影響する可能性が示唆された。 【今後の予定】上記の成果は、日本アレルギー学会にて発表するとともに、Biochemical and Biophysical Research Communicationsに論文を投稿し、受理された(2024 Jan 1:690:149295. doi: 10.1016/j.bbrc.2023.149295.)。今後は更なる詳細なメカニズムについて解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
野生型マウスおよび時計遺伝子Bmal1欠損型マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMCs)を作製し、酸化ストレス応答に関連する遺伝子発現を比較した。その結果、時計遺伝子Bmal1欠損により抗酸化応答に関与する転写因子Nrf2および抗酸化酵素HO-1とSOD2の発現が有意に減少し、酸化ストレス暴露による細胞生存率も有意に低下することを見出した。次に、野生型および時計遺伝子Bmal1欠損型BMMCsを用いて、IgE刺激による脱顆粒反応を比較した結果、時計遺伝子Bmal1欠損BMMCsにおけるIgE刺激による脱顆粒反応が有意に上昇することを見出した。 以上の結果から、マスト細胞においてBmal1が細胞内の酸化ストレス応答を制御しており、それがIgEによる脱顆粒反応へも影響する可能性が示唆された。 これらの成果は、日本アレルギー学会にて発表するとともに、Biochemical and Biophysical Research Communicationsに論文を投稿し、受理された(2024 Jan 1:690:149295. doi: 10.1016/j.bbrc.2023.149295.)。今後は更なる詳細なメカニズムについて解析を進めていく予定である。 以上のことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. マスト細胞選択的にBmal1が欠如したマウスを用いたアレルギー性鼻炎モデルの解析 Bmal1欠損マウスでは全身における酸化ストレスの増加が観察され、それに伴う早期老化が誘導されることが報告されている(Aging 2009)。今後の研究では、マスト細胞のBmal1欠損による抗酸化応答の減弱がもたらすアレルギー性鼻炎への影響を検討するために、Bmal1欠損マウスとリッターマウス(野生型)からBMMCsを作製し、マスト細胞欠損マウス(Wshマウス)に静脈投与を介して全身的に移入し、マスト細胞のみBmal1が欠損したマウスと正常のマスト細胞を有するコントロールマウスを作製する。 その後、これらのマウスに対して卵白アルブミン(OVA)とAlum(AlOH3)アジュバントを用いて,腹腔内投与によって全身的感作する(2週間おきに2回,Day0とDay14)。最終感作の2週間後にOVAを鼻腔投与(チャレンジ)を10日間行い(5回/週)、アレルギー症状として,鼻掻き行動やくしゃみ回数の定量、鼻腔粘膜組織の炎症状態の病理学的検討、脾臓T細胞のアレルゲン特異的な反応性(増殖やIL-4, IL-5, IL-13産生)、OVA特異的IgE、IgG1, 2a産生の解析を行い、マスト細胞におけるBmal1欠損がアレルギー性鼻炎症状に及ぼす影響について検討する。
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