研究課題/領域番号 |
23K08954
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山田 俊樹 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (40836574)
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研究分担者 |
海老原 敬 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20374407)
山田 武千代 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70283182)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ILC2 / アレルギー |
研究開始時の研究の概要 |
鼻アレルギーにおいて2型自然リンパ球(ILC2)の関与が指摘されている。ILC2は、組織に常在し、IL-5やIL-13を産生することによりアレルギー炎症を誘導するが一度活性化したILC2の運命決定機構は不明である。我々は、独自の細胞系譜解析により、過剰な活性化により免疫チェックポイント分子の一つであるTIGITを発現したILC2は細胞死へと向かうという現象を発見した。また、慢性アレルギー炎症においてTIGITを阻害すると、ILC2の細胞死が抑制され、アレルギー炎症が増悪することがわかった。本研究では、活性化ILC2細胞死の作用機序と慢性アレルギー疾患における意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
鼻アレルギーにおいて2型自然リンパ球(ILC2)の関与が指摘されている。ILC2は、組織に常在し、IL-5やIL-13を産生することによりアレルギー炎症を誘導する。一度アレルギー炎症を受けた後、一部のILC2は組織に長期生存し、訓練免疫を保有し、アレルギー体質の一因になる。しかし、アレルギー炎症で活性化したILC2の運命決定機構は不明である。これまでILC2が活性化によって細胞死に至るという考えは提唱されてこなかった。しかし、我々は、独自の細胞系譜解析により、過剰な活性化により免疫チェックポイント分子の一つであるTIGITを発現したILC2は細胞死へと向かうという現象を発見した。このような活性化によるILC2細胞死は今まで報告がなく、ILC2のActivation-induced cell death(AICD)と名付けた。また、慢性アレルギー炎症においてTIGITを阻害すると、ILC2の細胞死が抑制され、アレルギー炎症が増悪することがわかった。 TIGITの治療応用は、既に始まっている。一方で、TIGITアゴニストに対するアレルギー炎症に対する効果は、まだ一定の見解がない。そのような状況下で、私達の研究は、「活性化ILC2の細胞死を誘導することによる慢性アレルギー炎症の治療という新しい概念で提供する」ものである。今後TIGITアゴニスト抗体を臨床応用していく上で、非常に有意義な研究と考える。本研究では、活性化ILC2細胞死の作用機序と慢性アレルギー疾患における意義を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TIGIT発現細胞系譜解析マウスを作製し、慢性気道アレルギーにおけるTIGIT陽性ILC2の生理的意義を解明した。 このマウスを用いて、1)慢性アレルギーにおいてTIGIT陽性 ILC2は安定的に誘導されること、2)TIGIT陽性 ILC2はIL-10を高産生する高度に活性化した細胞であり、クロマチンアクセスの低下によりILC2シグネチャー遺伝子の転写が減少して基本的な細胞機能が低下していること、3)結果として、TIGIT陽性 ILC2は前アポトーシス状態であり、速やかに生体から除去される細胞であること、4)マクロファージのCD155がTIGIT陽性ILC2の細胞死を促進すること、が明らかになった。このような活性化によるILC2細胞死は今まで報告がなく、ILC2のActivation-induced cell death(AICD)と名付けた。TIGIT陽性ILC2は、非常に短時間で細胞死が誘導されるため数が少ないが、TIGITの遺伝子欠損やTIGIT阻害抗体の投与は、活性化ILC2の生存を促進し、慢性アレルギー性炎症を悪化させた。以上より、ILC2のAICDは慢性アレルギー炎症を抑制する新しいメカニズムであることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
鼻アレルギーにおいて2型自然リンパ球(ILC2)の関与が指摘されている。ILC2は、組織に常在し、IL-5やIL-13を産生することによりアレルギー炎症を誘導する。マウスにおいて認められた過剰活性化によるILC2細胞死という現象がヒトにおいても起こるのかを調べる。ヒトTIGITアゴニスト抗体による抗アレルギー作用について着目して研究を行う。 アレルギー性鼻炎患者におけるILC2細胞の表現型、機能、および臨床的意義について検討する。アレルギー性鼻炎手術時に得られた組織は病理組織、液体窒素に保存し、TIGIT及び関連因子の発現、気管支喘息の有無、局所免疫グロブリン、病理組織所見の好酸球数と、臨床症状、CT画像スコア、症状スコア、サイトカイン・ケモカイン、データベースの構築を行う。鼻ポリープのあるアレルギー性鼻炎患者およびないアレルギー性鼻炎患者と健常対照者から末梢血と副鼻腔組織を採取する。ILC2細胞をフローサイトメトリー、real-time PCR、免疫染色、Luminex multiplex assayを用いて発現および機能解析を行う。そのうちILC2細胞の中で、TIGITを発現している細胞の頻度を調べる。ILC2細胞の表現型を対照群とアレルギー性鼻炎患者の末梢血と副鼻腔組織とで比較検討する。副鼻腔組織において活性化したILC2による細胞死が起こり、炎症の増悪を抑えているか検討する。
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