研究課題/領域番号 |
23K08983
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50335270)
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研究分担者 |
飯田 慶 近畿大学, 理工学部, 講師 (00387961)
松永 麻美 京都大学, 医学研究科, 助教 (00599524)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70378644)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 有毛細胞 / 再生 / 支持細胞 / 初期化 / 分化転換 / 鳥類 / Regeneration / Hair cell / Reprogramming / Hearing loss / Chicken |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類および鳥類での蝸牛有毛細胞再生では、支持細胞の前駆細胞様の細胞へのreprogrammingを経て、有毛細胞が再生されることが示唆されている。有毛細胞再生に向けた支持細胞reprogramming機構解明を目的とし、本研究では、鶏蝸牛有毛細胞再生器官培養モデルにおける単一細胞レベルでの支持細胞発現遺伝子変動解析結果に基づき、関連遺伝子の時間的、空間的発現変化の解析し、上流シグナル探索を行う。また、microRNAによる転写後発現調節にも着目し、先行実験から至適条件を決定し、網羅的解析を行う。
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研究実績の概要 |
哺乳類蝸牛有毛細胞は、一旦喪失すると再生せず、感音難聴は恒久的となる。一方、鳥類では、有毛細胞が再生し、聴覚機能が回復する。本研究課題では、鳥類聴覚感覚上皮有毛細胞再生過程における支持細胞のreprogramming機構に着目し、そのメカニズム解析に関連する研究を実施した。2023年度には、単一細胞レベルでの支持細胞から有毛細胞への分化転換過程のRNA sequencingデータの擬時間解析を行い、6つの変動パターン遺伝子群を同定した。これらの遺伝子群のうち支持細胞reprogramming期に発現上昇する遺伝子群からの代表的遺伝子を選択し、胎生期鶏蝸牛における組織発現変化を調べた。結果、これらの遺伝子が有毛細胞に分化する前段階の前駆細胞に発現することが確認され、前駆細胞マーカーとして妥当であることが示された。鶏蝸牛器官培養モデルの有毛細胞再生初期過程サンプルのATAC sequencingおよびRNA sequencingの同時解析を実施し、オープンクロマチン領域として、80366ピークを検出した。発現変動遺伝子との変動レベルの相関性からピークの絞り込みを行い、各変動遺伝子に対応するエンハンサー候補領域を決定した。解析アルゴリズムの妥当性評価のために、有毛細胞再生初期過程に発現上昇する遺伝子のエンハンサー候補領域のMotif enrichment解析を行い、有毛細胞発生、再生に関連する既知の転写因子結合モチーフが高頻度で検出され、解析方法の妥当性を指示する所見がえられた。次に、支持細胞reprogramming期に発現上昇する遺伝子群を抽出し、対応するエンハンサー候補領域のMotif enrichment解析を実施し、今後の解析対象となる上流転写因子候補を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、鳥類聴覚感覚上皮有毛細胞再生過程における支持細胞のreprogramming機構に着目し、そのメカニズム解析に関連する実験を計画した。研究計画では、初年度に発生段階の鶏蝸牛における支持細胞reprogramming過程における発現遺伝子解析および有毛細胞再生器官培養モデルのエピゲノム解析を計画した。発生段階の鶏蝸牛における注目遺伝子の発現解析は完了し、支持細胞reprogramming状態のマーカー遺伝子であることが確認できた。有毛細胞再生器官培養モデル初期過程でのATAC sequencingを実施し、RNA sequencingとの統合解析の基盤となるデータ解析を完了することができた。発生段階の鶏蝸牛における注目遺伝子の発現解析では、再生過程におけるreprogrammingされた支持細胞のマーカー候補遺伝子が発生プロセスにおいても前駆細胞に発現することが確認できた。標的とした遺伝子は、発生初期の感覚上皮予定領域では発現せず、支持細胞および有毛細胞への分化が決定する直前の限定された時期に発現することが確認された。この結果は、再生過程のみならず、発生過程でも前駆細胞の分化運命決定期の限定された時期に発現することを示すものであり、有毛細胞再生過程における初期化された支持細胞マーカーとしての妥当性を裏付ける所見といえる。有毛細胞再生器官培養モデルのATAC sequencingについては、同時に実施したRNA sequencingとの統合的解析を行い、関心遺伝子のエンハンサー候補領域を抽出することができた。このデータリソースを用いて、単一細胞レベルで網羅的遺伝子解析から示唆された支持細胞reprogramming関連遺伝子群のエンハンサー候補領域の結合モチーフ解析を実施し、上流転写因子候補を同定することができた。プロジェクトの進捗は、良好と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究計画が予定通りに進捗しているため、研究2年目も当初の計画通りに研究を実施する予定である。すなわち、支持細胞reprogrammingに関連する遺伝子群の上流転写因子候補の組織での発現解析を胎生期鶏蝸牛および器官培養組織を用いて行い、時空間的な発現パターンを明らかにし、上流転写因子としての妥当性を検討する。この結果に応じて、研究最終年度の実験計画を策定する。また、ATAC sequencingおよびRNA sequencingとの統合的解析データを用いて、支持細胞マーカー遺伝子の消失を反映するエピゲノム解析を実施し、より詳細な支持細胞reprogrammingメカニズム解析を進める。
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