研究課題/領域番号 |
23K09001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 博司 京都大学, 医学研究科, 助教 (80536243)
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研究分担者 |
内藤 泰 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 総合聴覚センター長 (70217628)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 人工内耳 / 聴性皮質反応 / 高齢者 / 難聴 / 脳機能 |
研究開始時の研究の概要 |
難聴が認知症の独立した危険因子と考えられているが、難聴と認知症の因果関係は不明である。両者の因果関係を検証するためには中枢性聴覚神経回路の加齢性変化明らかにする必要があるが、高齢者では加齢性内耳機能低下のために、中枢性聴覚神経回路自体の加齢性変化を正確に評価することは極めて困難である。本研究では高齢人工内耳装用者の装用閾値が加齢性に悪化しにくい特性を利用し、聴覚中枢神経系の加齢性変化を明らかにすることを目的としている。本研究の結果は、難聴と認知症の関連因果関係を検証するために必須となるだけでなく、難聴を有する高齢者に対する最適なリハビリテーションを構築するうえで有用と考えられる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、まず14名の高齢人工内耳装用者と8名の言語獲得後失聴人工内耳装用若年成人を対象に、人工内耳から無意味音である双極性刺激を1~2Hzで提示し、人工内耳を介した調整皮質反応を比較した。両群ともに80ms付近と150ms付近にそれぞれN1、P2と考えられるピークを認め、基本的な調整皮質反応の波形は類似していた。また、有意差を認めないものの、高齢人工内耳装用者群の方がN1、P2ともに潜時が長い傾向があった。この結果は、難聴を認めない高齢者と若年成人を比較した過去の脳波研究結果と類似しており(Golob 2007)、聴覚中枢神経回路の加齢性変化を反映していると考えられた。令和5年度はさらに55名の人工内耳装用者(18歳~92歳)を対象に、32チャンネル脳波計を用いて視覚入力(バ、ダ、ガ発声時の3種類の口唇運動)と聴覚入力(66msの/ba/音声)を用いた視聴覚統合タスク時の皮質反応を計測した。先天性難聴成人、後天性難聴成人、後天性難聴高齢者の3群で視聴覚統合タスク時の皮質反応を解析したが、皮質反応の群間差は予想よりも小さく、明らかな有意差を認めなかった。しかし、各群内で3種類の口唇運動に対する反応の違いを解析したところ、先天性難聴成人では後頭部が、後天性成人群では頭頂部での有意差が検出された。そのため、難聴の発症時期と年齢によって視聴覚情報処理の脳内機序がわずかに異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では令和5年度に65歳以上20名、65歳未満20名をリクルートして脳波を計測し、令和6年度に解析を行う予定であった。しかし、脳波研究においてタスクと解析方法の妥当性の検証は極めて重要であることから、令和5年度に約半数の被験者の脳波データを収集して解析し、研究計画を修正する必要があるかを検証した。上記の様に高齢人工内耳装用者14名を含む55名のデータ解析を行っていることから、令和6年度までの研究計画の約半分を令和5年度で達成できていると考え得られるため、進捗状況は概ね予定通りと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、人工内耳装用者の皮質反応における群間差は予想よりも小さい可能性があることから、リクルートする後天性難聴を有する人工内耳成人のうち、65歳以上を30人以上、65歳未満を30名と増加させて群間差の検出する感度を向上することとした。令和6年度末までにこれら60名を対象として人工内耳の双極性刺激を用いた聴性皮質反応と、視聴覚統合タスク時の皮質反応を計測して比較する。各群の平均波形と振幅の比較で優位な群間差を検出できない場合は、時間周波数解析を用いて音声刺激前後のβ帯域(14~30Hz)の事象関連脱同期を定量的に評価する。それでも群間差が検出できない場合は、群内で3種類の口唇運動に対する反応の違いを解析し、その結果を比較することで、聴覚中枢における加齢性変化が聴覚情報処理に与える影響を考察するための手がかりを得る方針とする。
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