研究課題/領域番号 |
23K09013
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
田上 瑞記 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (10594533)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 眼窩腫瘍 / 眼窩リンパ腫 / 甲状腺眼症 / 自己免疫疾患 / 制御性T細胞 / 免疫疲弊 / 腫瘍間質 / 上皮間葉転換 / 眼窩疾患 / T細胞の老化・疲弊 |
研究開始時の研究の概要 |
近年T細胞の代表的な機能不全である疲弊や老化を制御する転写因子が同定され、自己免疫疾患や慢性感染性疾患とT細胞の機能不全の相互関与関係が解明されつつある。申請者は結膜扁平上皮癌に進行度と腫瘍間質の制御性T細胞(Treg)に相関があることを明らかにしているが、眼窩疾患とT細胞の機能不全との関係は解明されていない。本研究では、臨床検体(血液や手術残余組織)を用いて、T細胞疲弊・老化のマーカーやその転写因子について検討するとともに、酸化ストレスを受けたT細胞の液性因子の影響などを明らかにし、新たな治療選択について考察し領域を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究の主目的は眼窩悪性腫瘍、眼窩領域の自己免疫疾患(特発性眼窩炎症、IgG4関連眼疾患、甲状腺眼症など)におけるT細胞疲弊・老化の関連を中心とした免疫機能不全と眼窩疾患の関連を解明する事である。 本研究における特に独自性と創造性が高いテーマは、何らかの理由でT細胞(Treg含めて)の殺傷能力が低下する「免疫疲弊」を探求し眼窩疾患の新規治療につなげる可能性を提示できることである。中でも、甲状腺眼症は自己免疫疾患に伴う眼疾患で免疫チェックポイント分子は免疫応答を抑制する機能を有し、自己組織への不適切な免疫応答を制御している。今回の研究でPD-1 PDーL1は正常個体群と比較して有意に高値であり、ステロイドパルス治療の前後で有意に低下した、末梢血細胞を用いたフローサイトメトリーでもoxp3++ CD45RA- s and CD127-CD25++ (制御性T細胞)が発現する、PD=1は正常検体群に比して高値であることが判明した。このことから、甲状腺眼症では、免疫を負に制御する制御性T細胞細胞が疲弊している可能性あり(負の免疫疲弊状態)、これらが自己免疫性病態の修飾に寄与している可能性が示唆された。 また、眼領域の代表的な悪性疾患である眼窩・結膜MALTリンパ腫では、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析により、その組織内での上皮間葉転換系(EMT)のクラスターが大きな差があった。また、実際の組織学的な検討でもその2群の腫瘍間質部分の面積に有意差が有り、間質の増生は、その部分に生息する制御性T細胞やM2マクロファージなどの足場として存在し、これらの細胞群 は全身の正常な免疫応答である、抗腫瘍Tリンパ球などの攻撃から腫瘍本体を守る働きをしている可能性が示唆された。これらも免疫疲弊や抗腫瘍リンパ球の疲弊と関与する示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における特に独自性と創造性が高いテーマは、何らかの理由でT細胞(Treg含めて)の殺傷能力が低下する「免疫疲弊」を探求し眼窩疾患の新規治療につなげる可能性を提示できることである。中でも、甲状腺眼症は自己免疫疾患に伴う眼疾患で免疫チェックポイント分子は免疫応答を抑制する機能を有し、自己組織への不適切な免疫応答を制御している。今回の研究でPD-1 PDーL1は正常個体群と比較して有意に高値であり、ステロイドパルス治療の前後で有意に低下した、末梢血細胞を用いたフローサイトメトリーでもoxp3++ CD45RA- s and CD127-CD25++ (制御性T細胞)が発現する、PD=1は正常検体群に比して高値であることが判明した。このことから、甲状腺眼症では、免疫を負に制御する制御性T細胞細胞が疲弊している可能性あり(負の免疫疲弊状態)、これらが自己免疫性病態の修飾に寄与している可能性が示唆された。 また、眼領域の代表的な悪性疾患である眼窩・結膜MALTリンパ腫では、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析により、その組織内での上皮間葉転換系(EMT)のクラスターが大きな差があった。また、実際の組織学的な検討でもその2群の腫瘍間質部分の面積に有意差が有り、間質の増生は、その部分に生息する制御性T細胞やM2マクロファージなどの足場として存在し、これらの細胞群 は全身の正常な免疫応答である、抗腫瘍Tリンパ球などの攻撃から腫瘍本体を守る働きをしている可能性が示唆された。これらも免疫疲弊や抗腫瘍リンパ球の疲弊と関与する可能性と捉えることができた。 以上のように、自己免疫の疲弊と眼窩疾患の関与の検討について、現在のところ概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような、組織間での遺伝子クラスターの変化や血液検体での臨床免疫的な検討結果を、臨床の実際の医用画像と比較し相関を確認する事により、より臨床的な意義を確認したり今後の社会実装について検討する。中でも人工知能(AI)を用いた、画像処理技術と眼窩疾患での相関について検討については既報も数が少なく、今後発展の余地が残されていると考えている。 また、同時に、現在得られた臨床検体でのさまざまな結果の差を、分子メカニズムまで落とし込み検討するために、in vitro, in vivoでのwet実験の検討を、制御性T細胞のマスター転写因子であるFOXP3を経口標識した、FOXP3-gfap mice (遺伝子変換マウス)での検討や細胞実験(結膜線維芽細胞や悪性リンパ腫細胞株)での検討準備を進めていく。
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