研究課題/領域番号 |
23K09044
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
佐々木 慎一 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (30745849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アレルギー性結膜疾患 / 画像診断AI / 人工知能(AI)システム |
研究開始時の研究の概要 |
アレルギー性結膜疾患の診断は他科領域にまたがることが多く、眼科専門医でさえも判断に迷う重症例が存在することも事実である。 画像のみでこれらの眼疾患の診断が可能となれば、アレルギー専門医のみならず非眼科医にとっても有用性が高いが、これまでにそうした診断システムはない。 本研究ではアレルギー性結膜疾患の前眼部写真画像から、診断名候補や重症度を提示する人工知能(AI)システムを作成することを主たる目的とし、参加施設から前眼部写真とその付帯情報を収集する。さらに分子病態や臨床検査値を学習させることで、実臨床での診断支援や治療方針決定のサポートが可能なAIに進化させ、診断や治療方針の迅速な選択の支援を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、日本全国の10の施設(大学及び機関病院)から収集されたアレルギー性結膜疾患に関連する前眼部画像4942枚を使用して、疾患診断における人工知能(AI)の活用可能性を探求する。プロジェクトの主要目標は、画像AI技術を用いて、前眼部画像から診断支援技術の開発を行うことにある。特に、医療画像における診断支援においては、診断に至った過程を提示し、説明可能性を担保することが重要である。このため、重要な所見の有無のみならず、範囲を提示する画像AIの開発を目標とする。これにより所見の数値化ひいては、重症度の的確な評価を可能とする。 今年度は、春季カタル、アトピー性角結膜炎、季節性/通年性アレルギー性結膜炎、巨大乳頭結膜炎、および正常者の5つの主要な病型分類を設定し、これらの分類を基に画像データベースを構築した。さらに、合併症として感染性結膜炎や感染性角膜炎を含む画像も選定し、病型の多様性を考慮に入れたデータベースの充実を図った。これらの画像の認識には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を代表とするResNet50をスタンダードとし、YOLOv5、Detectron2といった先進的なsegmentation AIモデルを適用し、所見の識別と疾患診断の的確性を検証した。また、各画像から得られる所見や診断情報の質を分析し、AIの学習プロセスにおいて、所見認識のストラテジーのみならず、どのような所見が診断に必要かを確認する作業も並行して行っている。この技術は、特定の臨床所見を認識し、それを診断情報として直接活用する方法を開発することを目指しており、画像診断の未来を形作る重要なステップである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗は、初期段階でResNet50を用いた広範な画像データの分析から始まっている。この分析により、AIが各画像から疾患特有の所見を識別できるかどうかの基礎的な検証が行われた。続いて、より専門的な画像分割AI技術であるSegmentation AIの導入を進め、Detectron2を使用したMask R-CNN R50-FPN 3xモデルによる精度検証を行った。このモデルは特に、画像内の特定の所見を精密に認識し、それを基にした診断情報の生成に優れている。現在、認識された所見をさらに詳細に分析し、診断に直接利用するための新しいAIモデルの開発に努めている。臨床所見には、眼瞼結膜、球結膜、角膜に対して、充血、浮腫、腫脹、シールド潰瘍、輪部腫脹、巨大乳頭、濾胞を選定した。まず、これらの画像の所見の学習手法の開発にとりかかった。すべての画像に対して所見の部位の範囲を専門医がマニュアルで描画し、アノテーションを行った。これを用いてsegmentation AIのトレーニングを行い精度検証を図った。この過程において、segmentation AIが効率的に認識しやすい所見境界の至適化を図り、所見認識が可能なsegmenation AIの開発を行った。 具体的には、所見を特定の色でマーキングし、それを診断AIに統合する方法を開発中であり、これにより臨床医が画像を見ただけで、AIが提供する診断情報を直感的に理解できるようになることを目指している。また、非医師であっても、病状が容易に把握できるようになることを目指している。 この新技術により、画像診断の精度のみならず説明可能性を大幅に向上させることが期待されている。特に、この技術の最終目標は、多職種が関与する臨床現場での診断プロセスを革新するのみならず、遠隔医療や患者自身によるセルフケアの支援となることである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは、アレルギー性結膜疾患の前眼部写真画像から診断名候補や重症度を提示する人工知能(AI)システムを作成することを主たる目的とする。 このための方策として、革新的な画像AIの開発、さらに説明可能性を担保するための言語モデルシステムの開発、さらにこれらの一般応用をはかるためスマートフォンを含めたポータブルデバイスへの移植の3段階を考えている。 画像AIの開発において、とくに重要と考えるのは、画像から所見の有無や範囲を読み取るプロセスである。所見を見つけそれに基づく診断は臨床医が診断をするうえで実際に行うプロセスを模倣しており、その診断プロセスを明示することにより診断の説明可能性を担保する。画像からの所見認識プロセスにおいては、画像における所見の範囲を正確に抽出することを目標とする。これにより所見の有無のみならず面積といった数値化情報として取得可能となる。 一般に、画像において認識された所見の重症度を画像AIに認識させる手法は確立されていない。我々は所見の有無の組み合わせや所見群の数値化により重症化の評価が可能となると考えている。 また、画像から診断支援を行う過程において、臨床医のclinical decisionをいかに行うかにおいてはさまざまな課題がある。画像が提示されたとき、その画像に対して、自然言語において、その病状を説明できれば医療者の理解が得られやすい。また、システムと対話を行うことによりその詳細や限界が説明可能となる。そのためのシステムとして大規模言語モデルとの連携をはかる予定である。 一方、大規模言語モデル自体は、診断支援にかかわる詳細な臨床的知識をもたない。このため、的確な参照をはかるための文書の作成及び連携手法の確立に努めている。
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