研究課題/領域番号 |
23K09133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
林 慶和 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (00801078)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | イタコン酸 / 抗酸化 / グルタチオン / TCA回路 / ACOD1 / がん代謝 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
がん細胞は主に解糖系によってエネルギーを得ていることが知られているが、近年、クエン酸回路に続く酸化的リン酸化を介したエネルギー産生もがん細胞にとって必要であることが分かり、がん細胞代謝の全体像を理解することが重要である。 クエン酸回路の側副路としてcis-アコニット酸脱炭酸酵素(ACOD1)を介したイタコン酸(IA)産生機構が確認されたが、IAの生理機能やクエン酸回路側副路システムの存在意義の詳細については分かっていない。本研究では、がんの病態を理解する目的で、ACOD1ならびにIAの生体内分布について解析し、がん進展におけるACOD1ならびにIAの病態生理学的意義を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
イタコン酸(IA)はTCA回路でcis-アコニット酸脱炭酸酵素(ACOD1)を介して産生されるが、IAの生理機能についてはよく分かっていない。これまでの先行研究では、4-オクチルイタコン酸(OI)が細胞膜透過型IAとして利用され、IAと同様の生理活性分子であると想定されていたが、IAとOIの生理活性の差異については未解明であった。 そこで本研究では、がん細胞増殖におけるイタコン酸の役割について解析するために、マウスメラノーマ細胞株(B16)に対するIAとOIの作用について比較解析を行った。 In vitroにおいて、B16細胞株にIA、OIを添加したところ、IAでは細胞増殖に影響を及ぼさなかったが、OIでは濃度依存的に顕著な細胞増殖抑制作用を認めた。そこで、OI添加後のB16細胞の遺伝子発現についてトランスクリプトーム解析を行い、網羅的に解析したところ、OI添加によって、抗酸化物質として知られるグルタチオンの代謝関連遺伝子群における顕著な発現変動を認めた。そこで、細胞内のグルタチオン濃度について解析したところ、OI添加により還元型グルタチオン濃度が有意に低下することが分かった。 最後に、B16担癌マウスに週2回OIを腹腔投与し経時的に腫瘍径を測定したところ、in vivoにおいてもOIにより腫瘍増殖が顕著に抑制され、そのメカニズムの1つとしてグルタチオン代謝異常ならびに細胞老化の存在が示唆された。 これらの結果から、OIが細胞内のグルタチオン枯渇を通じた抗酸化システムの破綻を誘導し、強力ながん細胞増殖抑制作用を発揮することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オクチルイタコン酸のがん細胞増殖における影響について詳細を明らかにしつつある。これまでのほとんどの先行研究で同等に扱われていたイタコン酸とオクチルイタコン酸の細胞内イベントの差異について示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、恒常的にIAを産生するAcod1過剰発現株を作製し、がん増殖における内在的なIAの役割について明らかにする。さらにヒト由来の細胞を用いても同様の結果が得られるか、細胞培養実験ならびに免疫不全マウスを用いた移植実験を行い検証する。
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