研究課題/領域番号 |
23K09146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
三崎 太郎 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 臨床教授 (20464125)
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研究分担者 |
仲野 和彦 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00379083)
長澤 康行 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10379167)
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | IgA腎症 / ミュータンス菌 / Cnm陽性ミュータンス菌 / P.gingivalis / 口腔細菌 / 腎疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
IgA 腎症は20年の経過で約30%の患者が末期腎不全に至る難治性疾患だが、なお発症機序は不明な点が多い。我々は、これまでに「歯科医と腎臓内科医との学際的研究グループ」を構築し、齲蝕原性細菌や歯周病原性細菌が IgA 腎症の発症に関連していることを明らかにした。 本研究ではこれまでの知見をもとに、齲蝕原性細菌や歯周病原性細菌などの口腔細菌と IgA 腎症や 慢性腎臓病 への関与について、①口腔細菌と IgA 腎症の原因メカニズムと考えられる糖鎖異常IgAとの関連を調べるとともに②患者の口腔検体において複数の口腔細菌種を包括的に検討することで、メカニズムの解明につながる知見を得ることである。
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研究実績の概要 |
私達の研究目的は“齲蝕や歯周病の原因細菌が IgA 腎症の糖鎖異常IgAにどのように関与しているか”を包括的に検討すること“である。 【方向】腎生検でIgA腎症またはIgA血管炎と診断した74例の患者より、唾液採取しPCRでcnm 陽性 S. mutans の有無を検討した。腎糸球体のIgA蛍光免疫染色強度と糖鎖異常 IgA1 の蛍光免疫染色強度を4段階で評価した。【結果】IgA の糸球体染色強度と cnm 陽性S. mutans の陽性率との間に有意な関連を認めた (P < 0.05)。糖鎖異常IgA の糸球体染色強度と cnm 陽性 S. mutans の陽性率との間に有意な関連を認めた (P < 0.05)。【結論】口腔内の cnm 陽性 S. mutans は、IgA腎症患者の糖鎖異常IgAと関連している可能性がある(PLoS One. 2023 Mar 2;18(3):e0282367.に公開した)。 また、Porphyromonas gingivalisと糖鎖異常IgA(Gd-IgA)の関連を検討した。【方法】腎生検施行した75例を対象とした。採取した患者唾液から細菌DNAを抽出し、P. gingivalisを検出した。また、患者血漿よりGd-IgAを測定した。【結果】腎生検全75例のP. gingivalis陽性群と陰性群の比較では、Gd-IgAは有意にP. gingivalis陽性群で高値であった(p<0.05)。IgA腎症と診断した30例のP. gingivalis陽性群と陰性群の比較においても、P. gingivalis陽性群でGd-IgAは有意に高値であり(p<0.05)であった。【結論】P. gingivalisは糖鎖異常IgAを介してIgA腎症発症に関与している可能性がある。(Clin Exp Nephrol. 2023 Oct 9.に公開した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgA腎症の原因として、糖鎖異常IgA1の関連が指摘されている。また、私達は、齲蝕原性細菌であるCnm陽性ミュータンス菌や歯周病原性細菌P.gingivalisなどがIgA腎症に関連していることを示してきた。本研究では、これらの菌が糖鎖異常IgAを誘導することでIgA腎症を来すと仮説をたてて研究を行っている。今年度は、上記で示したように腎生検での糖鎖異常IgA1の蛍光免疫染色や、血漿中の糖鎖異常IgA1を検討することで、口腔内のcnm陽性ミュータンス菌やP.gingivalisは、有意に糖鎖異常IgA1と関連していることが確認できた。それぞれ査読のある英文誌(PLoS One、Clin Exp Nephrol)に投稿し受理され、公表することができた。 また、腎生検診断時の口腔細菌分布とIgA腎症や慢性腎臓病(その他の各疾患)との関連と腎予後の検討(前向き研究)では、目標であった250例の患者(IgA腎症患者125人およびIgA腎症以外の慢性腎臓病患者(微小変化群、ループス腎炎、糖尿病性腎症など)125人、のエントリーが予定通り完了した。現在、齲蝕原性細菌である cnm 陽性 S. mutans と、歯周病原性細菌である C. rectus、red complex と呼ばれている Porphyromonas gingivalis、 Treponema denticola、 Tannerella forsythia をはじめとした歯周病原性細菌10菌種の分析を行っている。今後前向きに患者の臨床データを追い、蛋白尿や腎機能、予後との関連を追跡していく。
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今後の研究の推進方策 |
”腎生検診断時の口腔細菌分布とIgA腎症や慢性腎臓病(その他の各疾患)との関連と腎予後の検討(前向き研究)”における250例の患者エントリーが完了したため、今年度は、齲蝕原性細菌である cnm 陽性 S. mutans と、歯周病原性細菌である C. rectus、red complex と呼ばれている Porphyromonas gingivalis、 Treponema denticola、 Tannerella forsythia をはじめとした歯周病原性細菌10菌種の分析を行い、口腔細菌とIgA腎症や慢性腎臓病の細かい原因疾患との関連を検討する方針である。また、蛋白尿や腎機能などと臨床データとの関連を検討し、前向きに腎予後との関連を検討してく方針である。 また”IgA腎症患者の摘出扁桃検体を用いた糖鎖異常IgA、Toll Like Receptor7/9との関連の検討”に関しては、摘出扁桃検体を用いて糖鎖異常IgA染色を行い、糖鎖異常IgAと各種口腔細菌との関連を検討する方針である。また、IgA腎症の発症に自然免疫(Toll Like Receptor7/9)が関与する可能性が指摘されていることを念頭に、各種口腔細菌との関連を検討する。 さらに、”う蝕原性細菌やCnmタンパク抗原とIgA腎症患者の血清との結合実験、レクチンマイクロアレイ(発症メカニズムの検討)”については、血漿IgAと菌の外壁成分(Cnmタンパク抗原など)との結合が証明されればIgA腎症発症メカニズムの解明につながる大きな発見であると考えられ、結合実験を継続していく。
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