研究課題/領域番号 |
23K09151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
内藤 真理子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (20244072)
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研究分担者 |
庄子 幹郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (10336175)
哲翁 ふみ 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (80875899)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 9型分泌機構 / プレボテラ インターメディア / 歯周病原菌 / 遺伝子変異株作成 / 歯周病原細菌 / 病原因子 / 分泌機構 / プレボテラインターメディア |
研究開始時の研究の概要 |
慢性歯周炎のみならず肺炎等との密接な関連がある偏性嫌気性細菌Prevotella intermediaの遺伝子変異株と遺伝子相補株の作製に我々は世界で初めて成功した。この解析法により本菌の病原タンパク質の輸送機構である9型分泌機構(T9SS)が本菌の代表的な活性に必須であることを明らかにできた。本研究では変異株を作成することでT9SSによって輸送分泌されるタンパク質とこれらの活性に関連する遺伝子の同定とその活性の分子機構の解明を目指す。本研究はこれまで解析が困難であった歯周病原細菌P. intermediaの病原因子を詳細に解析し, 本菌の病原性機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
慢性歯周炎を始め多彩な口腔感染症のみならず肺炎等の全身疾患との密接な関連がある偏性嫌気性細菌Prevotella intermediaの遺伝子変異株の作製に我々は世界で初めて成功した(Naito et. al., 2021)。さらに遺伝子相補株の作製方法を確立した。これにより本菌の病原因子の変異株を作制することで9型分泌機構が本菌のバイオフィルム形成、黒色コロニー形成、バイオフィルム形成などの病原性に関わることを明かにできた(Naito et. al., 2022)。しかし我々が確立した遺伝子操作方法は依然として効率が低い為、網羅的な病原因子の探索は困難であった。そこで本年は遺伝子操作効率の改善を目指した。我々が確立した遺伝子操作方法は標的遺伝子の上下流断片をPCRで増幅, 遺伝子操作用plasmidに挿入, 大腸菌からの接合伝達で標的菌に導入する。遺伝子変異株は置換したエリスロマイシン耐性遺伝子の活性とスクロース存在下での致死性を示すsacB遺伝子によるカウンターセレクションにより選択する。問題の低効率はSacBの発現に用いたプロモーターは恒常的に発現するタイプだったことが原因と考えられた。そこでBacteroidesで開発された一過性に発現をコントロールするtetRとanhydrotetracyclineを用いたtet onシステムをsacB遺伝子の発現に用いた。この改良した遺伝子操作方法により、本菌の病原因子の中でNucrase活性を担う遺伝子、NucA、NucDの変異株の作製に成功した。さらに本菌の表面糖鎖が他の近縁の菌とは異なることが予測されたことから、糖鎖合成遺伝子を予測、その1つの変異株の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、Prevotella intermediaの病原因子の網羅的解析を目指して、本菌のゲノム情報から推測された9型分泌機構(T9SS)で輸送される分子の変異株の網羅的作成を計画した。しかし我々が確立したPrevotella intermediaの遺伝子変異株の作製方法ではその作製効率が低い為、難航することが予測された。またこの遺伝子操作方法でカウンターセレクションに用いるsacBの発現による選択が奏功しない場合が散見された。近縁のBacteroidesの研究で開発された一過性に発現をコントロールするtetRとanhydrotetracyclineを用いたtet onシステムをSacB発現に用いることでの改善を図った。まずは遺伝子変異効率が高い近縁の歯周病原菌Porphyromonas gingivalisにおいてこのtet onシステムを導入した。その結果本システムによりnanoluciferase遺伝子の発現コントロールが可能なことを確認できた。そこで、Prevotella intermediaの遺伝子操作に用いる接合伝達プラスミドのsacB遺伝子の上流の恒常的発現プロモーター配列(Pcat)をtet onシステムに入れ替えたところ、SacBによる選択の改善が認められた。また他にカウンターセレクションの選択に用いる為にuvGFP遺伝子も導入したが十分な蛍光は認められず、応用できないと判断した。この改善した遺伝子操作方法によりNucrase活性を担う遺伝子、NucA、NucD、さらに糖鎖合成遺伝子の1つの変異株の作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度の研究で、懸案だったPrevotella intermediaの遺伝子操作効率の改善が認められた。そこで今後はこの改良した遺伝子操作法を用い本菌の病原因子の詳細な解析を行う。これまでの我々の研究でP. intermediaの病原性に関与する生理活性(赤血球凝集活性, 黒色集落形成, バイオフィルム形成)に9型分泌機構(T9SS)が必須であることを明かにしている。そこでこれらの活性の責任遺伝子を同定を行う。まずこれまでに作成したT9SS依存性に菌体表面と培養上清での発現量が減少するタンパク質を同定する。同定されたタンパク質の遺伝子変異株を作成, 野生株と比較することでそれぞれの活性の責任遺伝子を決定する。また同定したタンパク質の活性中心の探索を行いその作用機序の解明も行う。またR5年度に作成したNucrase遺伝子変異株について本菌の病原性に及ぼす影響についての解析を行う。 また本菌のゲノム情報解析から、T9SSの他に6型分泌機構(T6SS)の遺伝子も存在することが明らかになっている。また本菌の属するBacteroidesに特異的に見出されたV型線毛の遺伝子も複数存在している。そこでこれらの遺伝子の変異株を作成、それらの本菌の病原性における役割、特に宿主細胞に及ぼす影響についても解明を行う。
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