研究課題/領域番号 |
23K09167
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70304326)
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研究分担者 |
丸尾 幸憲 岡山大学, 大学病院, 講師 (60314697)
入江 正郎 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (90105594)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | PEEK / サンドブラスト / レジンセメント / プライマー / PEEK/PEKK / 接着 / 歯科 / 結合状態 / 微細構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は次の項目を計画した。①サンドブラスト処理により,アルミナ粒子をPEEK,PEKKに強固かつ多数固定化させ,固定化されたアルミナにカップリング剤を結合させる方法。 ②PEEK,PEKKのベンゾフェノン構造に着目し,紫外線照射でフリーラジカルを発生させ,メタクリル基を光グラフト反応により修飾し,ポリマーブラシを導入する方法。③大気圧プラズマや火炎処理でPEEK,PEKK表面に水酸基やカルボキシ基を付与して改質して結合させる方法。①~③の方法を詳細に検討することで, PEEK,PEKKと異種材料および歯質との接着システムを確立する。
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研究実績の概要 |
2023年12月にPEEK製CAD/CAM冠が保険適用され,すべての大臼歯に使用できるようになった。装着法は,PEEK内面にサンドブラスト処理及びプライマー処理を行い,接着性レジンセメントによる合着が求められる。PEEK合着面のサンドブラスト処理はメーカー指示,日本補綴学会の指針ともに0.1~0.2MPaで実施することが推奨されている。 0.2MPa,0.3MPa,0.4MPaでアルミナサンドブラスト処理した後,プライマー処理し,レジンセメントを用いてせん断試験用サンプルを作製した。サンプル作製して1日後にせん断試験した結果,接着強度は0.2と0.3MPaのサンドブラスト処理で優位差がなく,0.4MPa処理では接着力が増し,0.2と0.3MPa処理に対して優位差があった。しかし,サーマルサイクル3万回または2ヶ月間37℃の水中浸漬した劣化試験の結果,すべての圧力におけるサンドブラスト処理で接着力が低下し,優位な劣化が認められた。PEEKは難接着性材料であり,メーカー推奨のプライマーを用いた推奨合着法を用いても耐久試験後に接着強度の劣化が認められた。 サンドブラスト処理面近傍を断面SEM観察すると,PEEK表面近傍にアルミナ粒子が刺さっており,強圧エアーブローでも除去できない状態であった。特に0.4MPa処理では深く刺さったアルミナ粒子が観察された。メーカー推奨のプライマーは歯科用PEEKに添加される酸化チタンやアルミナ粒子に対するカップリング効果が無い。酸化チタンやアルミナ粒子に対するカップリング材を塗布し,レジンセメント合着した場合,高強度接着が得られなかった。カップリング材塗布の後にメーカー推奨プライマーを塗布し,レジンセメント合着した場合,サンプル作製して1日後の測定では高強度接着が得られた。今後,耐久性試験を実施し,高接着強度,高耐久性のある合着法開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はメーカー推奨の合着方法を中心に,せん断試験を行い,観察,分析を行った。さらに,各種処理条件を変化させながら実験を行った。同一条件下の接着試験数を減らして実験を行い,接着メカニズムの基本情報を得られるように研究を進めた。 一方,簡便な手法でないが,高強度,高耐久性のある接着法の開発では,UV照射によるポリマーブラシ導入法を考えている。この手法でも研究を進めているが,UV照射によりPEEK表面に塗布したメタクリレートモノマーが硬化するなど,多くの問題が生じている。また,予想していたほどの接着力が得られていないのが現状である。 接着界面の電子顕微鏡観察や分析は予定通りに行えており,全体として,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた基本情報をもとに,歯科臨床で用いることのできる簡便な合着法の開発を目指す。具体的な実験方法は,サンドブラスト処理された歯科用PEEK合着面の物性測定をしつつ,これらを考慮して接着試験,耐久試験を進める。サーマルサイクル3万回または2ヶ月間37℃の水中浸漬して劣化試験した。この結果,どちらも劣化試験方法でも接着強度の低下が認められた。サーマルサイクル試験は長期間におよび,装置の許容量の問題から実施できるサンプル数に限りがある。今後は数ヶ月の37℃の水中浸漬により劣化試験を実施する予定である。 UV照射による方法は,メタクリレートモノマーの種類,UV照射法の改良で対応する予定である。
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