研究課題/領域番号 |
23K09173
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小方 頼昌 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (90204065)
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研究分担者 |
中山 洋平 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30434088)
高井 英樹 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30453898)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 接合上皮 / エクソソーム / 唾液 / 歯周病 / 診断マーカー / アメロチン / ODAM / FDC-SP |
研究開始時の研究の概要 |
AMTNとODAMは成熟期エナメル芽細胞から分泌されるエナメルタンパク質で、接合上皮での局在が異なる。FDC-SPは、唾液腺、歯根膜、接合上皮で発現し、接合上皮での局在はODAMに近似する。エクソソームは、分泌元の細胞の特徴を有しながら細胞から分泌される膜小胞で、内部にタンパク質やmiRNAを含む。唾液から採取できるため、歯周病治療の効果判定や診断への役割が期待される。3種類(AMTN、ODAM、FDC-SP)のタンパク質の接合上皮での機能と役割の解明と唾液エクソソーム中の成分の基本治療前後での変化を解析することで、エクソソームを歯周病診断・予後判定への応用化可能かどうかを検討する。
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研究実績の概要 |
慢性歯周炎患者で、歯間部のCALが5mm以上、PDは6 mm以上、エックス線上の骨吸収が歯根長の1/3超える30人の患者から歯周基本治療前後に歯周病検査と唾液採取を行い、唾液エクソソームを精製した。慢性歯周炎患者の治療前のPD、CAL、BOPおよびPISAは健常者に比べて優位に高値で、歯周基本治療後に有意に減少した。唾液エクソソーム内のC6およびHSP70タンパク質量の変化は、ウェスタンブロットのバンドの濃さで比較した。歯周炎患者でのC6タンパク質量は、歯周基本治療後に12名で増加、12名で減少、6名で変化が認められなかった。 歯周炎患者でのHSP70タンパク質量は、 歯周基本治療後に7名で増加、7名で減少、16 名で変化が認められなかった。C6タンパク質量が治療後に増加した患者群は、減少した患者群に比べ、歯周基本治療前のPISAの値が有意に高く、治療後に有意に減少したが、C6タンパク質量が治療後に増加した患者群では、歯周基本治療後のPISAの値も有意に高値であった。歯周基本治療後の平均PDは、歯周基本治療後にC6が減少した患者群よりもC6が増加した患者群の方が有意に高値であった。HSP70タンパク質量が治療後に増加した患者群は、変化しなかった患者群と比べ、歯周基本治療前のPD、BOP、PISAおよび歯周基本治後のPD、CAL、PISAが有意に高値であった。歯周基本治療後にHSP70タンパク質量が減少した患者群は、変化しなかった患者群と比べ、有意に高いBOPを示し。以上の結果から、歯周基本治療後に唾液エクソソーム中のC6およびHSP70タンパク質量が増加した患者群では、歯周組織の炎症が強く、歯周基本治療の効果が出づらいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周治療を適切に行うためには、正確な歯周病検査の結果とエックス線での歯槽骨吸収の程度を基に診断し、治療計画を立案して治療を進めることが必要である。歯周病検査の中で、特にPD測定は、測定者のスキルと経験に左右される。さらに、歯周病検査の結果のみから、歯周病の活動度や治療成果及びの予後のを予測することは困難である。唾液の採取は容易であり、唾液エクソソーム中の成分が、難治性歯周炎の同定、治療結果の予測後、再評価の時期、メインテナンス間隔等の決定に使用できるバイオマーカーとしての可能性を検討した。歯周炎患者の歯周基本治療前後に唾液を採取し、歯周病臨床パラメーターと唾液エクソソーム中のC6およびHSP70 の変化を比較したところ、C6およびHSP70タンパク質量が歯周基本治療後に増加した患者群では、歯周基本治療前後でPISAの値が有意に高かった。現在、唾液中のヘモグロビン量や乳酸脱水素酵素活性、歯周病原菌酵素活性等が、歯科健診での歯周病スクリーニングや歯科医院を受診する動機付けを目的に使用されているが、唾液エクソソーム中のC6、HSP70等のタンパク質やmiRNA量を検出することで,歯周病治療への反応が悪い難治性歯周炎患者のスクリーニングや治療成果及びの予後の判定に使用できる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究は、エクソソーム研究がメインであったが、接合上皮特異的に発現するタンパク質であるアメロチン、ODAMおよびFDC-SPの転写制御についても研究を進める。これまでの研究において、上記3つのタンパク質は、上皮性付着への関与が示唆され、炎症性歯肉で発現が増加することが明らかとなっている。今後は、miRNA発現ベクターを導入した歯肉上皮細胞をTNF-α、IL-1βまたはIL-6で刺激し、炎症時の細胞環境を再現することで、炎症性歯肉で発現が増加するmiR-200bおよびmiR-223による遺伝子発現調節機構を解析し、炎症時の接合上皮における動態を解明したい。さらに本研究の成果を踏まえ、炎症環境が上記3タンパク質の遺伝子発現調節を介して、接合上皮のバリア機能に及ぼす影響についても考察を行い、歯周病発症のメカニズムを解き明かす一端としたい。
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