研究課題/領域番号 |
23K09197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 菜々子 (栗木菜々子) 大阪大学, 大学院歯学研究科, 招へい教員 (60781432)
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研究分担者 |
朝日 陽子 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (50456943)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | デンタルバイオフィルム / 次世代シーケンサー / 制御 / アルギニン / フッ化物 / シンバイオティクス |
研究開始時の研究の概要 |
オーラルバイオフィルムはう蝕や歯周病に関与しており,その制御・抑制法を解明することは,口腔及び全身の健康を維持するために極めて重要である.近年,細菌叢の制御アプローチの概念から,プレバイオティクスやプロバイオティクス,およびそれらを併用するシンバイオティクスが注目されている.そこで本研究では,う蝕や歯周病制御に有効であるシンバイオティクスを検討し,申請者らが開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,その効果を多面的に評価する.これにより,新規抗バイオフィルム製剤の創出が期待でき,これは口腔疾病の予防および治療,さらには全身的健康の増進につながると考えている.
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研究実績の概要 |
オーラルバイオフィルムはう蝕や歯周病に関与しており,全身への影響も報告されている.その制御・抑制法を解明することは、口腔及び全身の健康を維持するために極めて重要である.近年、細菌叢の制御アプローチの概念から、プレバイオティクスやプロバイオティクス、およびそれらを併用するシンバイオティクスが注目されている.申請者はプレバイオティクスのひとつであるアルギニンに注目し,申請者らが考案したin situバイオフィルムモデルを用いて効果判定を行ったところ,口腔内のpHを上昇させ、細菌叢を変化させることを明らかにした.また,フッ化物は,そのう蝕予防効果が認められているため,アルギニンとフッ化物を併用した場合,細菌叢への効果が増強されるのではないかと考えた.そこで,in situモデルを用いて,その効果を検討したところ.口腔内のNH4+濃度が増加することで,アルギニン単体と比較し,耐酸性能のある口腔内細菌叢への変化も認められ,アルギニンとフッ化物の相乗効果が示唆された.さらに,申請者はシンバイオティクスとして,アルギニンとLactobacillus rhamnosus GG の併用効果に注目した.これはin vitroでの報告はあるが,口腔内での評価は行われていない。本研究の目的は,アルギニンとフッ化物の相乗効果におけるメカニズムの解明および新規のシンバイオティクス候補を検討するうえで,その口腔内細菌叢および代謝産物への影響を定量的・網羅的に検索し,それぞれのデンタルバイオフィルムの病原性抑制に対する効果判定を行うことである.これにより,ヒトデンタルバイオフィルム制御を目的とした新規製剤の創出を目指している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,ヒトデンタルバイオフィルム制御を目的としたシンバイオティクスを含めた新規製剤の創出を目指している.現段階で,申請者らが新たに開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,デンタルバイオフィルムへのアルギニンおよびフッ化物の効果を経時的かつ定量的に検索する方法を確立することで,8%アルギニンおよびフッ化物併用による口腔内細菌叢への影響を明らかとした.本年度はそのメカニズムの解明を目的として,NGSを用いて,機能因子への影響を検討した.ヒートマップにおいて,予測機能因子は明らかな傾向は認められなかったものの,アルギニン+フッ素群はコントロール群と類似した機能因子の働きを示した.以前の申請者の報告により,アルギニン群において,コントロール群およびアルギニン+フッ素併用群と比較し,耐酸性能のある口腔内細菌叢の有意な増加が認められたが、本年度の解析により,アルギニンが基質代謝経路を活性化させる一方で,フッ素により,上記の代謝経路を抑制し,スクロースなどの基質を利用する細菌属の増加を防ぐことができたのではないかと考えられ、アルギニン+フッ素群の機能因子への相乗効果が示唆された. 今後としては,その成果を発表予定である.また,シンバイオティクス候補の条件をin vitroで検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後としては,本年度実施したアルギニンとフッ化物併用による口腔内細菌叢および機能因子への影響に関する成果を発表予定である.また,シンバイオティクスの観点より,その候補の条件をin vitroで検討中であり,アルギニンおよびプロバイオティクス(乳酸菌)の中で,う蝕や歯周病制御に有効である最適条件の検討を行っている.すなわち,乳酸菌標準株およびヒトの口腔からの分離菌株を用い,アルギニン存在下でのS.mutansおよびP.gingivalisの生育阻害試験(CFUアッセイ)を行う.また、リアルタイムPCRにより,S.mutansおよびP.gingivalisの病原性遺伝子の定量を行い、その発現量を比較することで,シンバイオティクスの最適条件をスクリーニングする. さらに,スクリーニングした候補シンバイオティクスの口腔での効果判定を行う為,コントロール群およびシンバイオティクス群に分け,それぞれのデンタルバイオフィルムへの影響について,申請者らが考案したin situバイオフィルムモデルを用いてデンタルバイオフィルムを作製し,以下の定量評価を行う. ・ 生菌数測定およびアンモニウムイオン(NH4+)濃度の定量 ;ディスク上のバイオフィルムを回収し,アルギニンの生菌数への効果を評価する.また,被験者のディスクを回収する際に,唾液も同時に回収し,唾液中のNH4+濃度を測定することで,アルギニンの活性を評価する. ・メタゲノム解析によるバイオフィルム細菌叢の同定および機能解析;ディスク上のバイオフィルムを回収し,DNAを抽出後,次世代シーケンサーを用いて,バイオフィルムを構成する細菌を同定し,細菌叢への影響を評価する.さらに機能解析を行うことで,病原因子および代謝産物への影響を評価する.
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