研究課題/領域番号 |
23K09203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
成徳 英理 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (00829393)
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研究分担者 |
阿部 薫明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40374566)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 薬剤徐放性 / 保存修復材料 / 薬剤徐放能 |
研究開始時の研究の概要 |
ミュータンスレンサ球菌(S. mutans)は、う蝕発生に重要な役割を果たす。S. mutansは母子伝播することが多く、感染を防ぐことは難しい。う蝕原生菌は飲食物に含まれる糖類を原料として乳酸を産生し歯質を脱灰する。つまりこれらの細菌の抑制が、う蝕発生の抑制に繋がる。その方策としてうがい薬等に含まれる殺菌剤(塩化セチルピリジ ニウム:CPC)は、これらう蝕原生菌の抑制に有効であるが、この薬剤を従来の歯科材料へと含有・塗布しても、口腔内へ容易に拡散してしまい、持続的な効果が得られない。そこで本研究では、口腔内で長期間の薬剤徐放を実現する新規な薬剤キャリアガラスフィラーの創製を目指している。
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研究実績の概要 |
本研究では、多孔質シリカを用いた殺菌剤を徐放可能な新規な歯科修復材料の創製を試みている。例えば、市販のうがい薬に含まれる殺菌剤(塩化セチルピリジニウム:CPC)は、う蝕の原因となるS. Mutans やC. Alabicansなど口腔内細菌の殺菌に有効である。但し、この薬剤を従来の歯科材料へと含有・塗布しても、口腔内環境へと容易に遊離・拡散してしまい、持続的な効果は得られない。そこで本研究では、1)上述のNPSを歯科用セメントやコンポジットレジンへと混合し、マトリックスの効果について検討するとともに、2)異なる粒径や孔径を持つNPSの粒径・孔径の効果やNPSの含有濃度による薬剤徐放能への効果についての検討を行い、長期徐放・大容量充填可能な薬剤徐放のキャリアとしての適性を検討する。このナノ多孔質薬剤キャリアと歯科修復材料との複合化により、う蝕予防のための効果的な新規な歯科修復材料の創製が期待される。2023年度には、様々な電気的特性を持つ色素分子をモデル薬剤として用い、歯科保存修復材料との複合体からの徐放挙動を観察したところ、CPCに類似の電気的特性を持つモデル薬剤化合物においてのみ、特異的に数週間にわたる薬剤徐放挙動が観察されている。また含有させるNPSの粒形や孔径の違いによる徐放挙動の影響も観測された。これらの結果から、更なる条件検討の継続によりNPSの含有による長期的に殺菌剤を徐放し得る新規な歯科修復材料の創製が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は粒形・孔径の異なる多孔質ナノシリカ(NPS)を用意して、市販の歯科用コンポジットレジンへと含有させた試料片を作成した。この試料片を、正若しくは負に帯電したモデル薬剤化合物水溶液へと浸漬した後、蒸留水中へと移動して、モデル薬剤の上澄み液への溶出挙動を定期的に検出した。NPSを含有した試料片からは数週間にわたり、正電荷モデル薬剤化合物の溶出が観察された。一方、負電荷モデル薬剤は数日のうちに溶出は確認出来なくなった。加えて、NPSを含まない試料片、および細孔を有しないシリカ粒子を含有させた試料片において、正電荷モデル薬剤の溶出は数日うちに検出限界に達した。これらの結果は、ナノ多孔質シリカ粒子が正電荷の化合物に対して特異的な吸着・徐放特性を持つことが示された。本研究では正電荷を持つ殺菌剤CPCの歯科用材料からの徐放を目的としており、今年度得られた成果はその目的達成のための有用な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
・ 徐放挙動の評価 (担当:成徳) 上記で得られた複合試料を、先ずは薬剤モデル化合物(陽イオン・陰イオン性の水溶性色素分子)溶液へと浸漬し、NPS 細孔へと吸着させる。モデル薬剤吸着後、蒸留水へと浸漬してモデル薬剤の徐放挙動を観察する。試料を、口腔内を想定した37℃に静置し、24時間毎に上清を交換する。上清への溶出量の検出には、吸光度測定や液体クロマトグラフを用い、一定期間(3~6ヶ月)の経時変化を追跡する。モデル化合物を用いた複合材料の薬剤徐放能の検討に引き続き、実際の薬剤分子の徐放挙動の観測を行う。まず始めにはう蝕原因の一つである S. Mutans の殺菌剤として用いられている CPC を対象とする。 ・ 殺菌効果の評価 (担当:阿部、成徳) ②の薬剤徐放試験により一定期間(1,2,3,6か月)CPCを放出した後の複合材料を用いて、S. mutans への殺菌効果を検討する。評価法としては、S. mutans 培養液へと複合材料試料片を浸漬し、その表面のSEMによる観察培養液の濁度測定、固体培地上での培養試験(コロニー形成の評価やリアルタイム- PCR測定による菌数の計測)を実施する。
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