研究課題/領域番号 |
23K09267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲垣 亮一 東北大学, 歯学研究科, 講師 (60260444)
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研究分担者 |
菅野 太郎 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30302160)
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (30431589)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ジルコニア / 紫外線 / 変色 / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
天然歯に近似した歯冠色と光透過性を有したジルコニアセラミックが開発され、ポーセレンなどの前装を必要としないクラウンやブリッジ(モノリシック補綴装置)の臨床応用が可能となった。しかしながら、ジルコニアは紫外線照射によって変色するため、モノリシック・ジルコニア補綴装置の審美性が損なわれる恐れがある。そこで本研究では、色調・光透過性の観点から紫外線の積算光量に応じたジルコニアの変色反応を分析するとともに、電子スピン共鳴分析法、フォトルミネセンス測定、X線光電子分光法によって酸素空孔を評価することでジルコニア変色の作用機序を解明し、歯科補綴臨床の発展に寄与する。
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研究実績の概要 |
研究計画に従って、紫外線C波(UVC)照射によって引き起こされる3 mol%および5 mol%イットリア安定型ジルコニア(3YSZおよび5YSZ)の変色を、歯科用ポータブル色彩計を用いてCIE L*a*b*表色系で評価した。波長254 nmのUVCを放射照度4 mW/cm2で照射すると5~10分で最大の色差(ΔE)となり、その後のUVC照射(最長60分間)はそれ以上の変色をもたらすことはなかった。一方、波長365 nmの紫外線A波(UVA)で照射された場合には、放射照度が10倍の40 mW/cm2であってもΔEの変化はほとんど認められなかった。UVC照射による最大色差は3YSZでΔE = 13、5YSZでΔE = 10であり、3YSZの方がUVC照射によって変色することが明らかとなった。歯冠修復材料の色に関するperceptibility threshold(知覚閾値)がΔE = 1.2程度であるため、ΔE≧10といった本研究の結果は、著しい変色がもたらされたと解釈できる。しかしながら、UVC照射停止後には、自然にΔEが減少することが分かった。UVC照射停止後180分位以内にΔEは半減した。しかしながら、その後のΔEの減少速度は遅くなり、ΔE < 2となるのに3~4週間程度の時間を要した。このΔEの減少反応に温度が及ぼす影響を調べたところ、UVC照射後に-80℃で試料を保管するとほとんどΔEの変化が認められないのに対して、200℃で保管すると15分でΔEが2程度に下がることが分かった。 以上の結果より、光機能化などのUVCを応用した処理はジルコニアの変色を引き起こすことが分かった。ただし、自然に元の色に戻っていくため、審美性に及ぼす影響は一時的なものであることが示唆された。また、UVC処理後に元の色に戻したい場合には、熱処理を行う方法が有効であることも併せて分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
紫外線照射によるジルコニアの変色反応動態の解析をすべて終了することができた。さらに、その変色状態を回復する方法(熱処理)の影響も分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究分担者と緊密な連携をとって、紫外線照射によるジルコニア変色の作用機序の解明に取り組む。また、今年度は紫外線の影響だけを調べたが、次年度以降は研究計画に従って、X線照射による変色の評価にも取り組む。
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