研究課題/領域番号 |
23K09269
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00507767)
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研究分担者 |
島袋 将弥 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40883434)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | チタニア / 金属ナノ粒子 / 光析出法 / 抗菌 |
研究開始時の研究の概要 |
細菌感染を予防する抗菌性生体材料の開発では主にチタニアの光触媒活性に着目した抗菌材料が利用されているが,口腔細菌に有効な抗菌活性を有しておらず,臨床応用には至っていない.本研究課題では,結晶方位を制御したチタニアナノシートに光析出法により金属ナノ粒子を担持させるハイブリット技術の相乗効果により抗菌活性を高効率に向上させ,十分な抗菌活性を有する抗菌性生体材料を開発するとともに,近年臨床応用が加速している歯科用ジルコニアへ応用するために,静電吸着現象を応用したコーティング法を開発する事を目的とする.
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研究実績の概要 |
チタニアは,歯科領域において歯の漂白材料や義歯洗浄剤材料として利用されており,その効果はチタニア材料表面において紫外線照射による酸化還元反応が生じることに起因する.この酸化還元反応のメカニズムは,紫外線により励起した電子の遷移によりチタニアに吸着した色素や細菌が酸化還元反応により分解・殺菌とされる.また,水溶液中においては,水分子が電子を失い,酸素が電子を受容することによりそれぞれヒドロキシラジカル,スーパーオキサイドとなり,これら活性酸素種が,間接的に酸化還元反応を発揮する. しかしながら,紫外線により励起した電子と正孔の半減期は約50ナノ秒と報告されており,電子と正孔の再結合の速さからチタニア表面で酸化還元反応が十分に生じないことが指摘されている.そのため,チタニアの高機能化のため再結合時間を遅延する試みが検討されており,電子を貯蔵するリザーバーの付与,または粒子構造の制御による電子の伝達経路の改善などが報告されている. 本年度は,金属イオンを含有する水溶液中にチタニアナノシートを分散させ,紫外線照射を行い,ナノシート表面での酸化還元反応による金属ナノ粒子の析出を試みた.本研究では,金属イオンとして,銀,銅,セリウムを用い,様々な濃度条件で金属ナノ粒子を析出させた.作製した試料のキャラクタリゼーションとして,X線回折および電子線回折による結晶構造解析,走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)による構造解析,紫外可視近赤外分光法による活性化エネルギーの評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TiO2ナノシートは,ヘキサフルオロチタン酸ナトリウムとチタンブトキシドを出発原料とし,水熱合成により作製した.得られたTiO2ナノシートを水酸化ナトリウム水溶液にて洗浄したのちに,光析出法により金属ナノ粒子のコーティングを試みた.銅イオン,銀イオン,セリウムイオンを含有する水溶液にメタノールを添加し,TiO2ナノシートを混合した.混合液中の酸素を除去するために窒素を還流した後に,25℃にて紫外線を20W,2時間照射した.得られた析出物をメタノール及び蒸留水にて洗浄した後に,凍結乾燥にて粉体を得た.得られた試料のキャラクタリゼーションのため,走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡による形態観察,エネルギー分散型線分光法による元素分析,X線回折法による結晶構造解析を行った. SEMおよびTEM観察より,作製した粉体は10面体構造であり,長辺が約30nmで,厚さが約7nmであった.XRD解析の結果,得られた粉体はアナターゼ型TiO2であった.EDSによる元素分析の結果,水熱合成後のTiO2ナノシートはフッ素を含有している(6.10%)が,水酸化ナトリウム水溶液の洗浄により含有量が低下した(3.41%).銅,銀,セリウムを担持した際のそれぞれの含有量は,0.75%,1.35%,1.90%であった.以上の結果より,TiO2ナノシートに光析出法により各種金属の担持することが可能となった.光析出法は,紫外線照射によるTiO2表面での酸化還元反応を利用して金属ナノ粒子を析出法であり,TiO2ナノシートでも応用可能であることが示された.
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今後の研究の推進方策 |
抗菌性評価には,ISO106の提言に基づき,口腔内バイオフィルム形成を模倣した5種細菌Actinomyces naeslundii,Veillonella dispar,Fusobacterium nucleatum,Streptococcus sobrinus,Streptococcus oralisを使用する.5種細菌を培養し,プラスティックシャーレ上でバイオフィルムを形成させ,初期付着として培養後12時間後,成熟バイオフィルムとして72時間後に,作製した金属ナノ粒子担持チタニアナノシートを添加し,紫外線照射後の生菌数を評価する.また生体安全性評価として,ISO10993-5を参考に,マウス線維芽細胞(L929)に直接暴露させる直接法と,試料の抽出液を暴露させる間接法にて評価を行う.以上より,抗菌活性が最大かつ細胞毒性が最小となる至適試料の開発を行う. チタニアナノシートおよびジルコニアはそれぞれ特有のゼータ電位を有しているが,その極性は同一pHにおいて同等であり,静電相互作用による吸着が望めない.そこで,極性を反転させる各種ポリマーをコートさせ,静電相互作用によるコーティングを試みる.コーティングの評価として,SEMによる構造解析を行う.また,粉体での評価と同様に,複合体における抗菌活性および生体安全性の評価を行う.複合体では平板試料であることから,直接法においては,試料上に細胞を播種し,その生存率を評価する.
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