研究課題/領域番号 |
23K09294
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57050:補綴系歯学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
水口 一 岡山大学, 大学病院, 講師 (30325097)
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研究分担者 |
窪木 拓男 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (00225195)
水口 真実 岡山大学, 大学病院, 医員 (20634489)
三木 春奈 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60739902)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 新規センシング / 筋活動 / 皮膚伝達音 / 機械学習 / ブラキシズム運動 / 機械的負荷 / 歯の喪失リスク / センシング技術 |
研究開始時の研究の概要 |
抜歯原因の上位に歯の破折があり,その一因に歯へ過度の機械的負荷を及ぼすブラキシズム(Brux)がある。しかし現状の Brux評価は,歯への負荷を精度高く診断できているとは言い難い。そのような中,歯が接触する際に生じる咬合接触音は,新規センシング技術により記録でき,歯の接触音は周波数特性が特異的であるため機械学習にて識別できる可能性が高いことを見出した。そこで本申請では,新規センシング技術にて記録した咬合接触音を機械学習で分析することで歯の機械的負荷の定量化を試みる。これにより,歯への機械的負荷の定量評価の実現へと展開することで,歯の喪失リスクの評価,全身健康の維持・向上に貢献したい。
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研究実績の概要 |
本年度は,機械学習による筋電図の識別能を臨床研究へと応用するための基礎的検討を行った。すなわち,各種の口腔機能を行った際の筋電図データを客観的に解析する手法の再確認を行った。 適格基準を満たした健常者12名に意識下にて仰臥位で各種下顎運動(歯の接触を伴う歯ぎしり運動(BMwTC),歯の接触を伴わない歯ぎしり運動(BMwoTC)および非歯ぎしり運動(non-BM))を行わせた。EMGは咬筋,舌骨上筋,顎下部,頤部および頸部から,皮膚伝達音は咬筋部から採取した。EMGおよび音響データは,polysomnographならびにvoice recorderを用いてそれぞれ1kHz,44.1kHzにて睡眠研究室内のシールドルームにおいて記録した。得られた筋電図は長さ100 ms,シフト長50msのハミングウィンドウを使用し,隠れマルコフモデルを使用してシングルストリーム(SS)ならびにマルチストリーム(MS)モデルにて,テストされた動作を他の動作から識別させた。トレーニングとテストはleave-one-out法を用い,11名のデータをトレーニング,1名のデータをテストとした。識別精度は,感度,特異度および調和平均値にて評価した。 SSモデルでは,咬筋EMGの識別精度が最も高い調和平均値を示した。MSモデルでは,SSモデルよりもさらに高い精度が示されたが,BMwoTCの調和平均値は0.5未満であった。機械学習ベースの識別システムでは,咬筋EMGを使用してBMwTCと非BMの識別に関しては高い精度を示すことが明らかとなった。 今後,現在臨床現場で使用されている簡易筋電計を使用した場合の識別精度を検討,顎機能に異常を認める患者を対象に実臨床データを採取し,臨床症状との関連性について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,本研究参加に自主的に同意の意思を示した本学教職員で健常者20名(20~64歳)を対象被検者として,シールドルームにて喉頭マイクを装着し,規定された咬合力にて各種Brux/非Brux運動を行わせた際の皮膚伝達音を咬筋部,頬骨部,前額部,オトガイ部 に貼付し,sampling周波数44.1kHzにて記録する予定であった。同時に,咬筋筋電図も記録し,筋電図波形単独もしくは皮膚伝達音との複合により各種運動を機械学習により識別するプログラムの構築,識別精度の算出を行う計画であった。しかしながら2023年には,本学歯学部棟に設置されている睡眠研究室内のシールドルームが改修工事のため使用できなかった。そのため,新規のデータ採取ができず上記計画の遂行が遅延した。しかしながら,2024年3月にシールドルームの改修が終了し研究環境も以前のレベルまで回復し,設備も十分整備されたこともあり今後は研究遂行が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は,2023年度で予定されていた,シールドルームでの喉頭マイクによる規定された咬合力で各種Brux/非Brux運動を行った際の筋電図,皮膚伝達音を記録することで,最大噛み締め時の筋電図波形を基に咬合力の算出を行うとともに,それらを単独もしくは複合させた場合の機械学習による識別精度の検討を行う。 その後,収集した各種の音声情報より各50 msの区間を抽出する。各区間の音響特徴量(メル周波 数ケプストラム係数)を算出し,最適な計測部位,咬合力の識別しきい値の検討を行う。その後,音声情報から歯の接触の有無について識別可能か,さらには筋電図波形より算出した咬合力情報から,歯の機械的負荷を最大咬合力と対比させることで定量化を試みる。 予備的検討から,griding時とtapping時の音声情報の識別は十分可能と考えられているものの,clenching時とbracing時ではgnashing音の音量自体が少なく,その抽出が困難を極めることが予想される。一方,FFT解析にて周波数成分を検討したところ低周波数領域に差異を認める傾向があったことから,この周波数帯域に特異的な検討を行うことで特徴量を見出したい。また,歯の接触音の代替生体情報として顎骨の歪み音,筋音計を用いた追加検討を行う。もしくは,既に確立している筋電図によるclenching/ bracingの識別手法を加味した並行検査による統合識別システムを取り入れることで識別精度の向上を図る。 併せて,今後,現在臨床現場で使用されている簡易筋電計を使用した場合の識別精度を検討,顎機能に異常を認める患者を対象に実臨床データを採取し,臨床症状との関連性について検討を行う。
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