研究課題/領域番号 |
23K09310
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横田 祐介 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (10448128)
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研究分担者 |
乾 千珠子 (山本千珠子) 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (00419459)
佐藤 元 明海大学, 歯学部, 講師 (10432452)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 錯味症 / 味覚異常 / 抗がん剤 / 味受容体 / 味細胞 / ラット / 神経生理学 |
研究開始時の研究の概要 |
毎年増加する新薬により、多種多様な抗がん剤治療が行われている。これまでも各種の抗がん剤投与が味覚異常を引き起こすことは指摘されていたが、他の重篤な副作用に比べるとあまり重要視されず、詳しい症状やその発症機序などそのほとんどが不明のままとなっている。 S-1内服患者に対して行った先行臨床研究の結果を検証するため、本研究では成獣SD系ラットを使用する。S-1 15mg/kgを14日間、1日1回経口投与し、S-1誘発性味覚障害モデルラットを作成する。錯味に関してはその機序がまったく判明していないため、味覚嗜好実験・味覚神経からの神経活動記録・味蕾や膝神経節の免疫染色等、多面的な解析を行っていく。
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研究実績の概要 |
分子標的治療薬の出現により、多種多様な抗がん剤治療が行われるようになった。これまでも各種の抗がん剤投与が味覚異常を引き起こすことは指摘されていたが、他の重篤な副作用に比べるとあまり重要視されず、詳しい症状やその発症機序などそのほとんどが不明のままとなっている。しかし近年、術後のadjuvant治療として在宅で抗がん剤を服用する患者が増加し、副作用としての味覚障害に注目が集まるようになった。 そこで、当講座と大阪国際がんセンターにて味覚異常の発現に関する臨床研究を行った。対象は消化器外科にて胃癌(Stage II)に対する手術加療を行い、術後adjuvant治療としてS-1を6ヵ月間内服した患者である。服用前と服用開始後12週で味覚検査を行った結果、味覚減退のみならず錯味症が認められた。錯味については、その臨床的な症状も含め、学術的にも不明な点が多く存在し、非常に興味深い現象となっている。 本研究では、S-1投与ラットを用いて、味覚嗜好実験や味覚神経からの神経活動記録、味受容体の発現に関する検証や味細胞における免疫染色等、多面的な解析を行い、錯味症に関する詳細な解析を行っていく。 現在でも味覚の世界において論争が止まない、中枢への味覚情報伝達に関する2大セオリー、「Labeled-Line説」と「Across-Neuron Pattern説」。錯味症はこのどちらでも説明が困難な現象である。本研究において、S-1誘発性錯味症モデルラットが検証されれば、味覚システム解明の大きな一助になれると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錯味症や味覚異常に関する検証を行う上で、始めにラットを用いた味覚行動学的実験を行った。 S-1投与前後におけるBrief Access Test(BAT)を行い、5基本味に対する感受性や嗜好性の変化について検証を行った。結果、甘味(サッカリン)に対する嗜好性の変化が顕著に認められた。当講座で実施したヒトを対象とする先行研究でも、甘味に対する感受性の低下や錯味症が認められたため、S-1投与が味覚伝達システムに対して何らかの異常をもたらしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでに得られた行動学的実験結果をもとに、定量的real-time PCRを用いて味受容体の発現に関する解析を行う。S-1投与ラットより有郭乳頭ならびに茸状乳頭を採取し、house-keeping遺伝子の選定を行う。その後、行動学的実験で変化を認めた甘味を中心に、味受容体サブユニット(T1R1, T1R2, T1R3, T2R107, Gm4, Plcβ2, Car4, Pkd2l1 等)の発現量を検証する予定である。 また、免疫染色を行い、味細胞に関する組織学的な解析も行っていく。また、最も嗜好性の変化を認めたサッカリンにおいては、他の甘味(ショ糖 等)でも同様の嗜好性変化を認めるかどうか、BATを行って更なる検証を行う予定である。
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