研究課題/領域番号 |
23K09375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
白川 純平 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (90782996)
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研究分担者 |
早田 匡芳 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 教授 (40420252)
江面 陽一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50333456)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 口腔癌 / 遠隔転移 / 骨転移 / 骨浸潤 / Flrt2 / 細胞外分泌蛋白 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 口腔癌細胞 / 分泌タンパク / 脈管浸潤 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜タンパク質であるFLRT2は、プロテアーゼによって細胞表面から切断され周囲の細胞に作用する分泌型タンパク質である。本研究では、個々の細胞におけるFLRT2の分子生物学的機能解析を基礎とし、口腔癌の骨浸潤・遠隔骨転移のメカニズム解明及び治療を目的に、癌細胞由来分泌型FLRT2を介した癌細胞と骨代謝細胞(破骨細胞及び骨芽細胞)間の相互作用について、in vitroにおける共培養実験およびマウスへの癌細胞移植実験を用いて検証する。それにより、FLRT2が口腔癌の骨浸潤・転移マーカー及び分子標的治療の新たな標的となり得るかを検討する。
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研究実績の概要 |
口腔癌は早期に顎骨へ浸潤・骨転移を認めるが、癌細胞の骨基質内への浸潤部位の決定、進行がどのようになされるかは未だ完全には明らかにされていない。 本研究では、新たに同定した破骨細胞分化に寄与する分泌型膜タンパク質Flrt2が口腔癌細胞および骨代謝細胞でどのように機能しているかを増殖・分化・遊走・浸潤能の解析によって調査する。さらに、共細胞培養実験とマウスへの細胞移植実験を用いて癌細胞と骨代謝細胞主に破骨細胞と骨芽細胞間のFlrt2を介した相互作用について検証する。それにより、癌の骨浸潤、転移マーカー及び分子標的治療薬の候補としての可能性を検討する。 これまで、脈管浸潤の有無による癌細胞内のFlrt2の著明な発現増加、骨芽細胞株における増殖および分化の抑制、癌細胞株における増殖の促進が確認され、Flrt2が破骨細胞では促進的に、骨芽細胞では抑制的に作用すること、癌細胞では増殖に寄与することが示唆された。 本年度は、研究者の勤務地と研究実施施設が異なったため積極的なin vitro実験は行えていない。他方で、臨床での検体採取を研究者自身が安定して行えるよう手術技術の研鑽および予後評価等の診断能力の向上に注力し、また、口腔腫瘍に関わる学会に参加することで現在の標準治療および最新の研究動向を確認した。令和6年度より勤務地および研究実施施設が共に変更になるため細胞資料の十分な確保および実験試薬の調整等に加え、それらの安全な輸送のため予算を割く必要があった。 これらは、研究者自身が安定して研究を進めていくために必要な経験と知識であり、今後、人的なバイアスを除外するために必要であった。さらに、実質的な実験は行えていないものの安定的な細胞資料の確保および今後の研究計画の立案および必要試薬の整備を完了したことで次年度の移動後早期に研究を開始する準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の仮説に基づき、臨床にて口腔内扁平上皮癌の診断を受けた患者から採取された腫瘍組織検体を用いてRNAシーケンスを用いて網羅的な発現遺伝子解析を行なった。脈管浸潤の有無によって2群化し発現遺伝子を比較検討したところ、発現に変化を認めた遺伝子の解析から、FLRT familyの発現増加と特にFlrt2の著明な発現増加が確認された。これにより、Flrt2が局所浸潤及び転移関連因子の有力な候補であることが示された。これは、個々の検体を用いて作成されたcDNAを用いたReal time PCRによるバリデーションでも確認された。 正常ヒト口腔扁平上皮細胞株とヒト扁平上皮癌細胞株でFlrt2の発現比較したところ細胞株ごとに大きく発現が異なり特定の癌細胞株で上昇していることが確認された。さらに分泌タンパク質の量も有意に異なる事が明らかとなった。癌細胞株SKN3にFlrt2を過剰発現させ細胞動態を検証した結果、細胞増殖の亢進を認めた。 骨芽細胞においては、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞前駆細胞を用いた分化誘導培養実験において増殖および分化がFlrt2を過剰発現させることで減少を認められ、その受容体であるUnc5bの発現低下が認められた。 これまでの結果より、Flrt2は破骨細胞では促進的に、骨芽細胞では抑制的に作用することが示された。さらに癌細胞では増殖に寄与することおよび細胞外へ分泌されることが示された。 異動に伴い、当初予定していた骨芽細胞および口腔扁平上皮癌細胞に対するFlrt2の発現抑制による細胞動態への影響、分泌型Flrt2を用いた外部刺激が骨芽細胞、破骨細胞そして口腔扁平上皮癌細胞に与える影響、そしてFlrt2高発現口腔扁平上皮癌細胞との共培養が骨芽細胞および破骨細胞に与える影響の検討を行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度における準備により異動後スムーズに研究を開始できると考える。 すでに必要試薬の購入、調整および実験の詳細な計画は建てられているため、研究業務における研修終了後早期に実験を開始する予定である。 骨芽細胞および口腔扁平上皮癌細胞に対するFlrt2の発現抑制による細胞動態への影響については、レトロウイルスベクターを用いたshRNAの導入による恒常的に発現を抑制する実験系とリポフェクタミンによりsiRNAを導入する実験を用意している。すでに過剰発現実験で使用した条件を適用することが可能と考えられるため早期に実験を開始する。分泌型Flrt2を用いた外部刺激が骨芽細胞、破骨細胞そして口腔扁平上皮癌細胞に与える影響については、リコンビナントFlrt2蛋白を購入し先行実験として破骨細胞の分化に対する影響を検討しておりその結果に準じて試薬調整を完了している。それぞれの細胞培養を開始し増殖および分化における影響を所定の期間培養後に検討する。Flrt2高発現口腔扁平上皮癌細胞との共培養が骨芽細胞および破骨細胞に与える影響については、共培養専用培養皿を数種類購入しており、今後適切なポアサイズ、細胞播種密度、培養期間といった実験条件の検討を行っていく。マウスを使ったin vivo実験に関しては、できるだけ早期に動物実験許可を取得するとともに、競売用実験によるFlrt2高発現口腔扁平上皮癌細胞が共培養により骨芽細胞および破骨細胞に与えた影響がアンタゴニストであるUnc5bの添加または過剰発現により中和されるかを確認した後開始する予定である。 研究実施施設が変更になるため、予定より進捗が遅延する可能性はあるが設備としての問題はなく大幅な遅延や計画変更はないと考えている。
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