• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

酸化ストレスによる軟骨細胞の分化・機能調節の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 23K09377
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分57060:外科系歯学関連
研究機関九州歯科大学

研究代表者

三次 翔  九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00636920)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード軟骨分化 / 変形性関節症 / 酸化ストレス / アスコルビン酸 / インスリン受容体シグナル伝達 / 軟骨細胞 / インスリンシグナル / microRNA
研究開始時の研究の概要

顎関節をはじめとする変形性関節症(OA)の病態形成に軟骨細胞への酸化ストレス蓄積の関与が示唆されている。しかしながらその動態については不明な点が多く さらなる研究が、OAの病態解明や治療における新規標的分子の同定に繋がると期待される。
申請研究では、軟骨細胞の分化誘導および炎症応答の際に蓄積される酸化ストレスの動態を明らかにする。さらに蓄積された酸化ストレスの緩和が、軟骨細胞の分化や機能に及ぼす影響とその分子機構を解明し、OAに対する新たな治療アプローチの提案を目指すとともに、軟骨組織だけでなく諸臓器の加齢変化に関する新たな知見も得る。

研究実績の概要

マウス前軟骨細胞株であるATDC5細胞は、インスリン存在下で軟骨細胞に分化する。抗酸化剤であるアスコルビン酸は軟骨分化を促進するが、軟骨形成の制御におけるアスコルビン酸の機能については不明な点が多い。そこで、インスリンに誘導されたATDC5細胞の軟骨分化に対するアスコルビン酸の作用とこれに関わる細胞内シグナル伝達を調べた。
その結果、インスリン刺激により誘導されるATDC5細胞のコラーゲン沈着、細胞外マトリックス形成、石灰化、軟骨分化マーカー遺伝子の発現がアスコルビン酸の併用添加によって促進されることを見出した。さらに、分子生物学的解析からインスリンによって誘導されるphosphoinositide 3-kinase(PI3K)/Aktシグナル経路の活性化は、アスコルビン酸の存在下で増強されることが明らかになった。対照的に、Wnt/β-cateninシグナル伝達は、Wntアゴニストであるsecreted Frizzled-related protein 1 (sFRP-1)、および3(sFRP-3)の発現増強を介して、軟骨細胞分化の過程で抑制された。興味深いことに、アスコルビン酸の添加により、ATDC5におけるインスリン受容体とその基質(IRS-1とIRS-2)の発現は亢進した。さらにアスコルビン酸は、インスリンによるIRS-1およびIRS-2タンパク質の抑制を回復した。
これらの結果から、アスコルビン酸がインスリンシグナルの増強を介してATDC5細胞の軟骨分化を正に制御していることが示唆された。これらの知見は、軟骨細胞分化の制御機構と変形性関節症のさらなる病態解明や効果的な治療戦略の開発につながる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請書に記載の計画通り、「課題1 軟骨分化誘導時の酸化ストレスの動態と機能」の研究を遂行した。抗酸化剤であるアスコルビン酸の添加がインスリンによる軟骨細胞分化誘導能の亢進に関わる機能を明らかにすることを目的とした。インスリンとの結合により、受容体の高次構造が変化し、基質タンパクであるIRSなどのリン酸化を介して細胞内シグナルが活性化される。活性化されるシグナル経路は、主に代謝作用に関与するPI3/Akt経路と増殖作用に関与するmitogen-activated protein kinase(MAPK)経路の2つがある。
アスコルビン酸は、インスリン受容体およびIRS-1、2の遺伝子発現を正に制御した。このことから、アスコルビン酸による細胞膜近傍の基質タンパクの活性化が、インスリン感受性の増強に関わっていると推測された。さらに、インスリンによるAktタンパク質のリン酸化が、アスコルビン酸の添加によってさらに増強される結果が得られた。これらのデータから、アスコルビン酸によるインスリン誘導性軟骨細胞分化の促進が、PI3K/Aktシグナルの活性化に依存していることを強く示唆された。一方で、MAPK経路の主要タンパクの1つERKタンパク質のリン酸化はインスリンによって阻害されたが、アスコルビン酸では増強した。軟骨形成の制御におけるERK活性化の基盤となる詳細な分子機序については、解析を継続している。
上記の課題については、十分な研究成果が得られたため、申請前に取得していたデータに加えて、英文誌に投稿した結果、Cell Biology International誌に受理され、掲載済みである。こうした点から、現時点における本申請研究の進捗は「おおむね順調に進展している」と判断している。

今後の研究の推進方策

2024年度以降は、「課題2 変形性関節症の病態形成への酸化ストレスの関与」を中心に研究を展開する。炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-α(TNF-α)および、高分子量ヒアルロン酸を添加したヒト軟骨細胞様細胞株C28/I2をin vitroの実験モデルとして使用する。 TNF-α添加時のC28/I2細胞に蓄積される酸化ストレスについて、(i)活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)の産生、(ii)軟骨細胞のアポトーシスの誘導、(iii)インスリンシグナルの低下(Western blot)を指標に確認する。同様に高分子量ヒアルロン酸を併用投与した際の 酸化ストレス蓄積の修飾能も確認する。
さらに、高分子量ヒアルロン酸による酸化ストレス応答の解除機構の解明のために、高分子量ヒアルロン酸による発現抑制が観察されているmiR-92, -181a, -181dに対する1本鎖の合成インヒビターをC28/I2細胞に遺伝子導入し、標的microRNAの機能を抑制する。機能抑制後の細胞について、MAPKの調節因子であるMAPK phosphatase 5(MKP-5)の発現、TNF-αによるマトリックス分解酵素(matrix metalloproteinase 13;MMP-13)の発現誘導と酸化ストレスの蓄積に及ぼす影響を評価する。加えて、miR-92、-181a、-181dのmRNA mimics(合成2本鎖RNA)をC28/I2細胞へ遺伝子導入し、過剰発現させる。導入後の細胞に対して、酸化ストレス蓄積と高分子量ヒアルロン酸によるMKP-5発現誘導能の変化を確認する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Ascorbic acid enhances chondrocyte differentiation of ATDC5 by accelerating insulin receptor signaling2023

    • 著者名/発表者名
      Okita Kaede、Hikiji Hisako、Koga Ayaka、Nagai‐Yoshioka Yoshie、Yamasaki Ryota、Mitsugi Sho、Fujii Wataru、Ariyoshi Wataru
    • 雑誌名

      Cell Biology International

      巻: 47 号: 10 ページ: 1737-1748

    • DOI

      10.1002/cbin.12067

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] ラグスクリュー法による観血的整復固定を行った小児下顎枝斜骨折の1例2023

    • 著者名/発表者名
      三次 翔, 土生 学, 高橋 理, 吉賀 大午, 吉岡 泉, 冨永 和宏
    • 雑誌名

      口腔顎顔面外傷

      巻: 22 ページ: 38-44

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 顔面神経下顎縁枝とオトガイ神経を温存したcheek flapで上顎後方切除を行った硬口蓋粘表皮癌の1例2024

    • 著者名/発表者名
      三次 翔,土生 学,原口和也,藤田浩範,福田 晃,森岡政彦,早川真奈,高橋 理,吉賀大午,吉岡 泉,冨永和宏,笹栗正明
    • 学会等名
      第42回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] みんなで探そう研究の種! 骨格性下顎後退症例に馬蹄形併用Le Fort I型骨切り単独で対応した場合の下顎頭形態変化の解析2023

    • 著者名/発表者名
      三次 翔
    • 学会等名
      第36回日本顎関節学会総会・学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 顎骨骨折治療後の変形治癒症例に対する治療戦略2023

    • 著者名/発表者名
      三次 翔,土生 学,大谷泰志,高橋 理,鶴島弘基,原口和也,柳沼 樹,吉賀大午,吉岡 泉,冨永和宏,笹栗正明
    • 学会等名
      第24回日本口腔顎顔面外傷学会総会・学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 九州歯科大学附属病院NST(栄養サポートチーム)の活動報告と治療効果2023

    • 著者名/発表者名
      三次 翔,髙橋 理,田中純平,別府めぐみ,瀧本理枝,田中真友瞳,田中美知子,曽我部 恵,久恒千尋,松本絵里加,渡辺崇文,大楠弘通,李 宙垣,吉賀大午,吉岡 泉,冨永和宏,藤井 航
    • 学会等名
      第82回九州歯科学会総会・学術大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi