研究課題/領域番号 |
23K09403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川嶋 理恵 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (10814444)
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研究分担者 |
齋藤 晶 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20721608)
野口 忠秀 自治医科大学, 医学部, 教授 (30275705)
大澤 英之 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60458271)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 口腔癌 / 腫瘍微小環境 / 免疫組織化学染色 / OPMDs / 免疫多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍微小環境において、腫瘍浸潤免疫細胞や線維芽細胞などの間質細胞は、免疫多様性の観点から癌の発生や増殖、転移に非常に重要である。申請者はこれまでに「免疫組織化学染色により1枚のパラフィン切片上で多数の細胞/分子の 検出・定量・局在解析を可能とする多重免疫染色定量解析法」を開発し報告した。さらに腫瘍浸潤免疫細胞や免疫チェックポイント、間質細胞、癌細胞の上皮間葉 転換などを含む計30マーカーの多重免疫染色定量解析を可能とするプロトコールを樹立した。 本研究では、この技術を用いて口腔癌、OPMDs患者の組織切片から腫瘍微小環境を網羅的に解析し、口腔癌の制御を可能とするバイオマーカーを特定する。
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研究実績の概要 |
本研究は、口腔癌臨床検体を用いた多重免疫染色定量解析法により、口腔癌個別化治療を目指した治療選択や予後予測を可能とするバイオマーカーを特定することを目的として行った。腫瘍微小環境では、腫瘍の浸潤、転移などの発生過程において、免疫細胞(リンパ球系細胞/骨髄球系細胞など)の局在や機能が腫瘍促進、腫瘍抑制の観点から非常に重要と考えられている。よって本研究では当初のターゲットを免疫細胞や免疫チェックポイントに絞った。 前研究室にて確立した腫瘍微小環境を反映した免疫細胞プロファイリングパネルを用いた多重免疫染色定量解析法では、1枚の臨床検体パラフィン切片から最大12種類のマーカーの解析が可能である。現研究室ではこれらの解析が可能となるよう、抗体や試薬の至適化を行い環境を整えた。しかしながら研究を進めるにつれ、腫瘍微小環境の評価を行うには免疫細胞のみならず腫瘍間質での反応も非常に重要であることが分かった。そこで腫瘍間質反応として癌関連線維芽細胞(CAFs)や転移を起こす際に癌細胞上で起こる上皮間葉転換(EMT)、線維化反応に注目した。新たにこれらの間質反応を加えた網羅的解析が可能な免疫細胞/免疫チェックポイント/EMT/CAFs/線維化反応プロファイリングパネルを構築し、多重免疫染色定量解析法のプロトコールを確立した。これにより、1枚の臨床検体パラフィン切片より約30種類のマーカーの検出、解析が可能となった。当初の予定に加え新たなプロファイリングパネルの構築には多くの時間を費やしたが、1枚のパラフィン切片から検出可能なマーカーが12種類から約30種類に増えたことは、本研究の今後の発展に大いに役立つと考えている。 現在は実際に口腔癌臨床検体を抽出し、上記実験、解析を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国外の前研究室にて確立した多重免疫染色定量解析法では、1枚のパラフィン切片にて解析可能なマーカー数は12種類であったため、リンパ球系免疫細胞パネル、骨髄球系免疫細胞パネル、T細胞機能分類パネルの3パネルの定量解析を行うには、1症例の臨床検体から最低3枚の連続パラフィン切片が必要であった。しかしながら腫瘍微小環境の評価を行うには、免疫細胞のみならず腫瘍間質での反応も非常に重要であることが分かり、間質の反応として癌関連線維芽細胞(CAFs) や転移を起こす際に癌細胞上で起こる上皮間葉転換(EMT)、線維化反応についても解析項目に加えた。 また国内の現研究室で実験を行うにあたり、日本国内では入手困難な試薬や実験機器があったため、新たに別の試薬、実験機器を代用することとなった。本研究で用いる多重免疫組織化学染色は、これら一つでも試薬や実験機器が異なると実験結果に多大な影響を生じるため、約30マーカーほぼすべての抗体で濃度や作用時間、プロトコールの再構築が必要であり、これらの実験に多大な時間を要した。しかしながらこの過程は、将来的により正確な結果を出すために重要な過程であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在までに構築した腫瘍微小環境の網羅的評価が可能な免疫細胞/免疫チェックポイント/EMT/CAFs/線維化反応プロファイリングパネルを用いて、すでに抽出した口腔癌頸部リンパ節後発転移症例に焦点を当て、各免疫細胞の浸潤程度、免疫チェックポイントの発現程度、CAFsの浸潤程度、EMTを起こしている癌細胞の割合、線維化反応の有無などを解析項目とし、生検検体、切除検体を用いて予後との関連などを明らかにしていく。 具体的にはこれらの検体を用いた多重免疫染色を行い、各マーカーの染色ごとに画像をスキャナーに取り込み、全染色が終了後に画像の重ね合わせを行う。定量については全免疫細胞 (CD45 陽性) が集中した Hot spot を抽出し、各マーカーの陽性細胞数のカウントを行い、各マーカーの局在を可視化する。陽性細胞のカウント結果は、現研究室で構築済みである解析ソフト (FCS Express) を用いて定量を行い、組織画像と合わせ最終的な解析を行う。定量・局在結果は、 臨床経過や治療効果、予後、生存率などの臨床情報と照らし合わせ、口腔癌個別化治療を可能とする特異的なバイオマーカーの特定を行う。
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