研究課題/領域番号 |
23K09441
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
窪田 直子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (40569810)
|
研究分担者 |
佐藤 正宏 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 共同研究員 (30287099)
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (30448568)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
齊藤 一誠 朝日大学, 歯学部, 教授 (90404540)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ヒト乳歯歯髄細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Oct-3/4 promoter-EGFP(緑蛍光タンパク遺伝子をコード)発現ユニット搭載の組換えHDDPCを樹立する。当該細胞へOCT-3/4遺伝子を導入し、OCT-3/4を強制発現することにより、幹細胞様細胞としてのOCT-3/4(+)/EGFP(+)HDDPCを取得する。この細胞の特性解析(OCT-3/4以外の幹細胞特異的遺伝子発現解析、多分化能性の有無、iPS細胞への誘導のされやすさ、など)を通じ、当該細胞が上皮細胞との共培養による器官培養系で歯再生に優先的に貢献できるかどうかを検討することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
申請者らはこれまで、「ヒト乳歯歯髄細胞(HDDPC)に含まれるOCT3/4陽性、かつ、アルカリホスファターゼ(ALP)陽性の細胞は多分化能性が高い」ことを見出したが、HDDPC内ではその数が少なく、single cell cloningは困難だった。そこで、HDDPCに分子生物学的介入(OCT3/4遺伝子導入によるOCT3/4タンパクの強制発現など)を行い、OCT3/4過剰発現によるHDDPCからの幹細胞様細胞への分化転換による当該細胞の大量取得を考案した。本研究では、幹細胞様に転換したことを蛍光発現でモニターできる系を構築し、OCT3/4遺伝子導入による蛍光発現細胞(幹細胞様細胞)の大量取得を目論んだ。さらに、当該細胞の特性解析、歯系細胞構築のための器官培養から、当該細胞が幹細胞として機能することを調べる。 具体的には、① OCT3/4発現を可視的にモニターできる細胞(pTA-dOEN-HDDPC)の確立、② pTA-dOEN-HDDPCの幹細胞様細胞への分化転換誘導、③ OCT3/4陽性細胞(OCT3/4(+)HDDPC)の大量取得とその特性解析、④ OCT3/4(+)HDDPCと上皮系細胞との共培養(器官培養)による歯系細胞分化誘導の可能性を模索する。 2022年度では、pTA-dOEN-HDDPCを樹立すべく、親株のHDDPCにOct-3/4 promoter-EGFP発現ユニット/neo発現ユニットを搭載したpiggyBac系プラスミド(pTA-dOEN)とpiggyBac系transposase発現プラスミド(pTrans)を共遺伝子導入。薬剤耐性コロニーの単離・拡大を現在行っている。また、HDDPCを幹細胞様細胞に分化転換させるため、山中因子を繰り返し遺伝子導入する実験も同時に進行。現在、幹細胞様細胞への誘導の有無をALP染色で確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDDPCなどの分化細胞にOCT3/4を強制発現させると、当該細胞は幹細胞様細胞へ分化転換誘導されると期待される。その結果、幹細胞様細胞はOCT3/4などの幹細胞マーカーを発現するようになる。因みに、OCT3/4は他の幹細胞マーカーの発現を誘導する「マスター遺伝子」と目されるため、幹細胞様細胞はOCT3/4以外にもALP、SOX2などの幹細胞マーカーも発現するようになると考えられる。分化細胞から幹細胞様細胞に転換した場合、それを可視的にモニターでき、且つ、薬剤耐性となるように、親株HDDPCにOct3/4 promoter-EGFP発現ユニット/neo発現ユニットを搭載したpiggyBac系プラスミド(pTA-dOEN)とpiggyBac系transposase発現プラスミド(pTrans)を共遺伝子導入した。現在、G418を含む培地で薬剤選別後、生じた薬剤耐性コロニーの単離・拡大の段階である。また、HDDPCを幹細胞様細胞に分化転換させる実験も並行して進めている。研究計画では、① OCT3/4発現ベクターの導入によるOCT3/4の一過的強発現、② Mir-302 seriesの導入・強制発現、③ 山中因子の繰り返し遺伝子導入、等によるHDDPCからの脱分化誘導を挙げており、今年度は①と③の方法を実施した。脱分化誘導の有無は、ALP染色で評価しているが、方法①では2回以上遺伝子導入してもALP(+)細胞の出現は認められなかった。方法③では4回繰り返しの遺伝子導入で、ALP(+)細胞を確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、薬剤選別後生じたコロニーは、pTA-dOENがHDDPCゲノムに組み込まれた安定的組換え株(pTA-dOEN-HDDPC)と思われる。pTA-dOEN-HDDPCは分化細胞のままなので、OCT3/4(-)であり、EGFP由来緑蛍光も発しない。この細胞株については、RT-PCRや免疫細胞染色などを行い、分化細胞としての特性を把握する。 次に、前述の「HDDPCに山中因子を繰り返し遺伝子導入する方法」でpTA-dOEN-HDDPCの分化転換誘導を行う。この場合、分化細胞が幹細胞様細胞に脱分化すると予想するが、同時に、HDDPCゲノムに組みこまれたpTA-dOENのOct-3/4 promoterも活性化されるため、その下流にあるEGFP cDNAが発現し、その結果、細胞が緑蛍光を発すると期待される。OCT3/4発現細胞と目される緑蛍光発現細胞(以下、OCT3/4(+)HDDPC)を取得することが次年度の目標となる。さらに、OCT3/4(+)HDDPCは多分化能性を示す体性幹細胞のような細胞と考えられるので、その幹細胞としての特性を明らかにする。具体的には、培地に分化誘導剤を加え、多分化能性(神経細胞、骨芽細胞、あるいは、脂肪細胞への分化)を検討する。親株に較べ、OCT3/4(+)HDDPCは上記分化細胞への分化が顕著に起こると考えられる。一方、分子生物学的手法 (RT-PCRやRNA Seq.)を用い、OCT3/4(+)HDDPCが親株に較べ、より多くの未分化細胞特異的遺伝子を発現することを証明する。
|