研究課題/領域番号 |
23K09494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
池尾 隆 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (40159603)
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研究分担者 |
堂前 英資 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50454559)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | Vγ9Vδ2 T細胞 / IPP / OSCC |
研究開始時の研究の概要 |
1. リン酸抗原合成を促進する化合物を特定する。 2. p53変異によるSREBP-2の機能亢進がVγ9Vδ2T細胞による抗癌作用の標的になるかを明らかにする。 3. 窒素含有ビスホスホネート(N-BP)トランスポーター活性化因子を特定する:ビスホスホネートトランスポーターであると考えられているATRAIDの発現誘導がN-BPトランスポーターの機能を促進できるかを明らかにする。 4. 以上で得られた細胞レベルの知見を、ヒト化マウスモデルを用いて生体内で検証する。
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研究実績の概要 |
Vγ9Vδ2T細胞の特異抗原は抗原提示細胞内で生じるリン酸抗原である。代表的なリン酸抗原であるイソペンティニルピロリン酸(IPP)はコレステロール合成経路であるメバロン酸経路の代謝中間体である。何らかの理由でこの代謝中間体が蓄積した細胞はVγ9Vδ2T細胞によって認識され殺傷される。これまでに、メバロン酸経路の多くの反応を正に制御する転写因子SREBP-2の活性化を起こす低分子化合物を検索し複数同定した。細胞培養に用いる牛胎児血清(FBS)に含まれるコレステロールは細胞自身のコレステロール合成経路を抑制するが、これらの低分子化合物の多くは10%の牛胎児血清(FBS)存在下でもSREBP-2を活性化することを確認している。さらにこれらの低分子化合物の誘導体の1つに、SREBP-2活性化を抑制する分子を見出した。現在、これらの低分子化合物が及ぼすメバロン酸経路の活性化の制御による、Vγ9Vδ2T細胞による口腔癌細胞の抑制効果を検討している。また、メバロン酸経路の阻害剤で広く高コレステロール薬として利用されているスタチンがVγ9Vδ2T細胞による口腔癌細胞抑制に及ぼす影響を検討している。スタチンはコレステロール合成を阻害するためVγ9Vδ2T細胞の活性化を抑制するが、癌細胞の種類によってスタチンに対する反応性が異なることから、これを利用してVγ9Vδ2T細胞による細胞傷害活性を正常細胞には生じさせず、特定の癌細胞にのみ生じさせる方法を検討している。医薬品として用いられているスタチンには脂溶性と水溶性のものがあり後者は肝臓のみに取り込まれることが知られている。癌細胞と肝細胞とをVγ9Vδ2T細胞と共培養した際に水溶性スタチンの存在が肝細胞を保護することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vγ9Vδ2T細胞の特異抗原であるIPPの合成を制御する転写因子SREBP-2を制御(活性化と抑制)する低分子化合物を同定した。また、化学正常の異なるスタチンを用いてIPPの合成を制御することにより、正常細胞(特に肝細胞)をVγ9Vδ2T細胞の傷害から保護することを見出した。以上のように、メバロン酸経路の制御により癌細胞特異的なVγ9Vδ2T細胞による傷害活性を誘導できることを示唆するデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最近、コレステロール代謝がPD-L1の機能に影響を及ぼすことが最近明らかになった(Wang, Q, Science ADVANCES, 2022)。コレステロール代謝における代謝中間体であるIPPがVγ9Vδ2T細胞の活性化に及ぼす影響を中心に検討し知見を得てきたが、Vγ9Vδ2T細胞を抑制するPD-L1の発現にもコレステロール代謝が関与することが明らかとなったことから、これまでの知見をPD-L1/PD-1の相互作用という観点でも検証していく予定である。
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