研究課題/領域番号 |
23K09541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
浜本 隆三 甲南大学, 文学部, 准教授 (00583311)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マーク・トウェイン / ハンナ・リデル / ハンセン病 / 隔離政策 / 回春病院 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、熊本のハンセン病療養施設「回春病院」の創設者であるイギリス人伝道師ハンナ・リデルの、北米旅行の動向とその目的の解明、およびその影響の考察を主な対象とする。研究ではリデルの北米旅行が、イギリス中心から北米および日本国内を軸とした支援体制へと病院の運営基盤の移行を図る目的で行われたとの仮説のもと、新聞や書簡を資料に、旅程の把握と講演内容の分析を行うことで、北米旅行の目的解明とその意義について検討する。研究を通して、宣教師が支えた日本の黎明期のハンセン病療養所の運営が、海外支援から国内政策へと移行した過渡期の解明に資することが期待される。
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研究実績の概要 |
2023年度はハンナ・リデルの欧米旅行の足跡を明らかにするために、民間の新聞アーカイブ(newspapers.com / British Newspaper Archive)を2カ所使用して、リデルに関連する情報の収集を行った。これまでまったく情報がなかったリデルの1907年から10年にかけての北米および英国での足跡について、約100通の新聞記事を発見し、内容を確かめながら分類・整理することができた。その結果、リデルの北米・英国旅行のおおまかな旅程の把握が完了した。この作業に関連して、1900年頃の欧米におけるハンセン病に関する記事40通、1921-22年のリデルの欧米旅行の記事40通、1927年頃の欧米旅行の記事20通、回春病院を訪れる目的でアメリカを発ったアメリカ人青年Hilsbolloの記事80通、同じく回春病院を訪れる目的で英国を発った作家見習いのHewlettの記事80通、リデルの日本での事業について報じた欧米紙の記事40通、1932年のリデルの訃報を報じた欧米紙の記事40通、リデルとともに回春病院の運営に尽力したグレース・ノットに関する記事80通など、周辺の資料も多数収集し、その内容をエクセルにて整理・分類する作業を行った。 これらインターネットを用いた基礎的な情報収集の作業を着実に行いつつ、熊本のリデル、ライト、ノット記念館を尋ね、秋山大路館長に研究相談をする機会をもつとともに、同館が所蔵する資料の収集をおこなった。この作業では、とくに回春病院の寄付金に関する資料を収集することができ、欧米旅行の成果を具体的な数値として確認することが出来るものと考えている。 また同館が企画する企画展「The Letter展 ハンナ・リデルの1907年北米への旅」(2023年4月~11月開催)の監修を担当し、本研究の研究内容の社会還元に務めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、米国での資料収集を予定していたが、申請者が学科主任の業務に当たったこともあり、長期での調査旅行の確保が困難な状況にあり、米国での資料収集については実現できていない。また、国立ハンセン病資料館での資料収集についても予定しているが、こちらもまだ実施できていない。後者については今夏に実施する予定で、収集目録のメモを作成するなど円滑な作業のための準備を整えている。米国での調査旅行については、次年度になる予定であるが、それまでに資料の目星をつけ、アーキビストとコンタクトをとりながら円滑な収集ができるよう準備を進める予定である。 他方、インターネットのアーカイブを用いた資料の収集については当初の予定以上の進捗がみられ、十分な成果が得られているものと自負している。今後、これらの資料の分析を進めていき、成果の発表に結び付ける予定である。あわせて先行研究についてもある程度は収集・読解がすすめられている。これらの作業を通して、当初の仮説とは異なる結論が少し見えてきた印象である。 いずれにしても、本研究に期待をかけて採択をして頂いたことに感謝しつつ、社会的責任と研究による貢献きちんと果たすべく、研究活動に邁進していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまで収集した資料の分析を通して、1907年の欧米旅行の旅程把握およびリデルの講演活動からの思想の検討、および当時のリデルの国際的ネットワークの解明という当初の目的を着実に遂行し、この点についてイギリス女性史研究会において研究発表を行う予定で関係者に調整を依頼している。また、本研究の主テーマである日本の隔離政策に与えたリデルの欧米旅行の影響という点については、さらに研究をすすめ、次年度にハンセン病学会等、しかるべき関係学会において研究報告を行う予定で研究をすすめている。また、本研究の成果については、リデル、ライト、ノット記念館の秋山大路館長にもフィードバックを行い、成果の還元に務める。
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