研究課題/領域番号 |
23K09543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
鈴木 里和 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (30373400)
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研究分担者 |
黒須 一見 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (80741967)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 手指衛生 / アルコール含有手指消毒剤 / 抗菌薬使用密度 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / 院内感染 / 抗菌薬適正使用 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)分離率は、高い水準のまま長年推移しており深刻な蔓延状況にある。要因として医療従事者における手指衛生遵守意識の低さと擦式アルコール手指消毒薬使用量の目標値設定の難しさがある。本研究では、擦式アルコール手指消毒剤の使用量と広域抗菌薬の使用量およびMRSA等の薬剤耐性菌の分離率を病棟単位で解析し、WHO が一律「最低20L/1000患者日」としている目標値よりも、医療現場の実情と科学的根拠に基づく擦式アルコール手指消毒薬の使用目標値を算出することを目的とする。これにより、わが国の手指衛生の向上と長年にわたり高止まりしているMRSA分離率の低下を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度はパイロットデータの収集のため、調査票および研究参加手順の説明書を作成した。調査票は、施設全体として、MRSA分離率に関連しうる医療施設の背景(病床数、感染対策の人員配置、院内検査室の有無など)を問うものと、病棟ごとの診療背景(病床数、平均在院日数、看護必要度、主な診療科など)に加えて手指消毒剤携帯状況、手洗い専用シンク数などの手指衛生実施体制とアルコール含有手指消毒剤(alcohol-based hand rubbing;ABHR)の消費量、抗菌薬使用密度(antibiotic use density;AUD)を求めるものを作成した。また厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)の細菌検査部門の還元情報を得た上で、そのファイルも共有できるよう手順説明書を作成した。 次に、研究内容を簡潔に説明するフライヤーを作成し当該研究に協力できる医療機関としてJANISに検出菌情報を提供している施設を選択し、主に感染対策担当者にフライヤーとともに協力依頼書を送った。2024年2月から協力依頼を開始し、8施設に協力依頼を行い7施設から参加意思の返答を受け、5施設からはデータ提供を受けた。 今年度は、5施設46病棟のデータを提供を受け、データクリーニングののち、基礎的解析を実施した。ABHR消費量、AUDおよびMRSA分離率(JANIS細菌検査部門の還元情報からMRSA検出数/S. aureus検出数で算出)を軸として、それぞれの関係を確認した。ABHR消費量とMRSA分離率には相関が認められなかった一方、AUDとMRSA分離率との相関は認められ、本研究の仮説を支持する暫定的結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、パイロットデータが収集でき、その解析を進めている。ただし、想定よりもパイロットデータが多く、解析に時間を要する見込みであり、全国調査の開始が、当初予定していた2年目半ばよりもやや遅れる可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
パイロットデータの解析においてAUDとMRSA分離率との相関がみられたものの、予測よりも弱いものであった。その要因として抗菌薬の総量を使用したことが考えられた。今後追加データが回収された時点で多変量解析によるモデル構築を進めるが、その際にAUDとして用いる抗菌薬の種類を選定するステップを追加することとした。 また、パイロットデータ提供に協力した医療機関の担当者からはデータ収集に伴う負担の大きさが聞き取られており、全国調査に広げる際の項目の絞り込みを進める。絞り込みを進める際に、調査票の回答内容と実態との整合性を確認するため、複数の医療機関を訪問し、実地での調査も進める予定である。
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