研究課題/領域番号 |
23K09556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川平 洋 自治医科大学, 医学部, 教授 (90447285)
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研究分担者 |
大岩 孝輔 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20781032)
前田 佳孝 自治医科大学, 医学部, 講師 (40754776)
植村 宗則 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (50636157)
亀岡 遵 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (50770129)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 外科医 / 疲労 / 身体負担 / 心電図 / 電気皮膚活動 / 手術 / 負荷推定 / 働き方改革 / 医療安全 |
研究開始時の研究の概要 |
手術を行う外科医は手術中に無意識に負担を被り、負担の蓄積は疲労となる。申請者は外科医用の筋緊張を低減する姿勢保持器を開発し報告してきたが、手術中における外科医の負担を客観的に評価した報告はないことに着目した。 本研究では手術前後の外科医の主観的作業尺度(VAS、NASA-TLX、PVT)から外科医の負担の主観的評価を行う。同時に自律神経系指標(心拍・皮膚電気活動・コルチゾル)の術中リアルタイム計測を行い、外科医の負荷を可視化(各指標の出現パターンと数値の変化)する。主観的評価による外科医の負担と可視化した自律神経系指標の計測データとの紐付けから、外科医の負荷推定モデルを得る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、外科医が手術中に感じる負担と疲労を客観的に評価し、負担を軽減させるための労働環境構築を策定することである。手術中の外科医には多大な身体的及び精神的ストレスがかかるため、これを軽減することは医療の質を向上させると同時に、医療事故の防止にも繋がる副次的効果がある。本研究では、手術前後の主観的作業尺度(VAS、NASA-TLX、PVT)を行い、手術前後の外科医の主観を評価する。また、外科医に心電モニターなどの計測器を装着してもらい、自律神経系指標(心拍、皮膚電気活動、コルチゾル)のリアルタイム計測を行うことで外科医の負担を可視化する。これらのデータを用いて外科医の負荷推定モデルを構築し、手術時の負荷推定を可能にする この研究の重要性は、外科医自身の健康と安全はもちろん、患者安全に直結するため極めて高いと言える。手術中の外科医の負担が軽減されれば、疲労による手術ミスのリスクが低下し、結果として患者の安全がより確保される。また、外科医の働き方改善によって、長期的な職業生活にわたる健康管理やワークライフバランスの向上にも寄与すると考えられる。 本研究で開発される負荷推定モデルを用いて、具体的な手術プロセスの改善案を提案し、実臨床での応用を目指す。さらに、このモデルを基にしたトレーニングプログラムや教育ツールの開発を行い、外科医の教育においても新たな指標として活用されるよう、包括的な研究開発を行う。外科医のトレーニング環境の効率化が行われることで、若手外科医のレベル向上とラーニングカーブの短縮化を期し、若手外科医の育成環境の充実化を行う。その結果、現状では減少傾向にある外科医数の増加が期待されるようになる。最終的には、この研究が外科医の負担軽減だけでなく、医療全体の質の向上と患者安全の強化に貢献することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は初年度となることから、外科医の手術中における負担を計測するため、計測体制の基盤構築に着手した。具体的には以下の2点に着手した。 1.負担計測の実施体制の確立 2.電気皮膚活動からコルチゾルなどのストレスマーカーの計測装置の開発 本年は1.に対し、心電モニターを3台購入し、手術室での身体的負担計測や手術中のストレス計測の客観的評価を行う体制づくりを行なった。乳腺科医師を対象に、手術中の身体的負担やストレス計測について計測開始した。2.については研究分担者亀岡早稲田大学教授が主導し、亀岡研究室で計測器開発を行っている。まずデータ採取部位として計測項目(分子)によって皮膚(表皮)や皮下組織など、サンプル採取部位を変えることでより正確なデータ採取を行う基礎実験を行なっている。具体的にはマイクロニードルセンサーを用い、皮下組織中の間質液を採取し、CRPなどの炎症マーカーをリアルタイムで計測するシステム開発を行なっている。その試作を用い、2023年9月29日本学動物実験施設においてリアルタイムで分子計測が可能か、ブタによる動物実験を行った(自治医科大学動物実験委員会 承認番号23029-01)。全身麻酔下でブタ頸部にマイクロニードルセンサー試作を貼付し、ポテンショスタット(PalmSens4, オランダPalmSens社製)と有線接続し、データを採取した。同時に対側内頸動脈に動脈ラインを留置し、経時的に採血を行い、採取データの整合性を比較した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、外科医の負荷推定モデルを開発することで、手術プロセスが改善する。このモデルは外科医のトレーニングプログラムを最適化するための新しい指標を提供し、教育ガイドラインの基盤となることを目指す。外科医の負担を軽減し、より効率的かつ効果的な医療提供を実現するための具体的な方法を提案することで、医療の質の向上と患者安全の強化に貢献することが期待される。 さらに本研究で計測するリアルタイム計測ストレスマーカーは、心電計測データや採血データと照合することで、ストレスマーカーとして広く用いられることを目指す。またこれらストレスマーカーをリアルタイムで計測可能な新しいウェアラブル計測機器を開発する。今後の社会実装に向けて、このウェアラブル計測機器は医療現場での広範な使用が期待される。 本研究の成果により、外科医のトレーニングや実際の手術プロセスが大きく改善される可能性がある。手術中の負担が正確に把握・管理されることで、手術の安全性が向上が期待される。外科医の負担やストレスを客観的に計測、管理することで、医療過誤のリスクを低減し、患者さんへの信頼性の高い医療サービスを提供することが可能になる。最終的には、本研究成果が全医療職に拡散し、広範囲な医療の場においても応用されることで、全体の医療サービスの質の向上に寄与することを目指す。
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