研究課題/領域番号 |
23K09568
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
研究代表者 |
立花 直子 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 睡眠医学研究部, 部長 (10291501)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 睡眠医学 / 睡眠ドック / 閉塞性睡眠時無呼吸 / 眠気 / 不眠 / 睡眠不足 / ヘルスプロモーション / 睡眠時無呼吸症候群 / 持続陽圧呼吸療法 / 睡眠教育 / 人間ドック |
研究開始時の研究の概要 |
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の最も有効な治療は経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法であるが、我が国の公的保険制度の下では携帯型睡眠時呼吸モニター(HST)もしくは終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて算出された無呼吸・低呼吸指数(AHI)が前者では40以上、後者では20以上でないと処方することができない。AHIが5-20であってもCPAP治療によって睡眠健康度、QOL、日中のパフォーマンスの改善が認められるかどうかを調べ、CPAP使用がヘルスプロモーションに役立つ人の特徴を抽出し、保険診療外でのCPAP活用を実現するシステムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
関西メディカルネットの運営するメディカルサポートシステム(会員制健康管理クラブ)の会員 2276名(男性 1683名、女性 593名、年齢62.3±11.7歳)を対象としてA) 健康維持と増進のために良い睡眠を取ることの重要性、B) A)を阻害する要因として働く有病率の高い睡眠関連疾患である閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea syndrome, OSA)の概要の紹介の二点を盛り込んだ動画をYouTubeにて限定公開し、研究対象者への啓発活動を行った。 次にスムーズに検査をすすめる体制づくりのために上記会員に限定する形での「睡眠ドック」のシステムを構築した。会員は健康管理についての意識が高く、治療必要な疾患を未治療で放置している者がほぼ皆無であるという特徴があり、被験者を概ね健康な者に絞るというスクリーニングは、この時点でほぼ達成された。 「睡眠ドック」のシステムであるが、睡眠と覚醒についての四つの要素(睡眠不足の傾向はないか、昼間の眠気が強くないか、不眠傾向はないか、OSAを疑う症状はないか)について質問紙を用いて点数化し、それらに加えて携帯型睡眠時呼吸モニター(home sleep testing, HST)の酸素飽和度、脈拍数、体動パラメータのみを抽出する設定にして、自宅で夜間睡眠時に実施し、一夜の酸素飽和度変動の指数や、一晩の酸素飽和度と脈拍数の変動の分布様式をraw dataから読み解き、OSAをより強く疑えるかどうかを加味して睡眠面のアドバイスをお伝えするというものである。 「睡眠ドック」は2023年10月より開始し、2024年5月15日現在の時点で133名のエントリーがあり、うち40名については、睡眠関連疾患専門施設への紹介が必要であると判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、概ね健康ではあるが、無呼吸・低呼吸指数(apnea-hypopnea index, AHI)低値で睡眠健康度が低いもしくは普通程度の人々がCPAP治療により、QOLや昼間のパフォーマンスを向上させられるかどうかを検討することを当初の目的としていた。しかし、準備期間にボランティアの方を対象としてAHIが算出できる携帯型睡眠時呼吸モニター(HST)の機器を使用して自宅で検査してもらった際に、呼吸センサーの自己装着がうまくいかず、データが十分取れない事例が続いた。したがって、中途で呼吸センサーの使用をあきらめ、酸素飽和度、脈拍数、体動パラメータのみを抽出する設定に変更し、AHIの代わりに酸素飽和度低下指数(oxygen desaturation index, ODI)を算出する方法とした。このために「睡眠ドック」開始が遅れた。 一方、ODI低値で睡眠健康度が低い例よりも、ODI高値で睡眠健康度が高い例が散見し、これらについては、閉塞性睡眠時無呼吸の可能性が高く、放置はできないため、これらの症例について睡眠専門施設に紹介する必要があり、その紹介システムを開発することに時間が取られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、質問紙を用いて睡眠・覚醒の問題点の把握、QOLの評価を行い、自宅で実施した携帯型睡眠時呼吸モニター(HST)の結果から、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)としては極めて軽度で睡眠・覚醒の問題点の自覚がない者についてもCPAPを使用することにより、昼間のパフォーマンスや夜間の睡眠の質の向上が図れないかどうかを調べるものであった。 しかし、対象者候補の群についてpreliminaryに検索していったところ、睡眠・覚醒の問題点がないにもかかわらず、HSTの結果では睡眠時無呼吸が多発していると推測される症例が散見し、これらの例についてのケーススタディに取り組むことも必要であると思われた。その理由は、現在、日本各地で患者を診察することなくHSTを実施し、その数値の結果のみからCPAPを勧める人間ドックや睡眠時無呼吸クリニックが増えており、本人には問題点の自覚がなく、結局はCPAP脱落例となることが多発しているからである。これらの例に対して、真に睡眠・覚醒の問題点がないのかどうかについての検討が必要であり、データ蓄積が進むことにより、別の観点からのCPAP治療の意義が見えてくるものと思われる。
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