研究課題/領域番号 |
23K09605
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
緑川 早苗 宮城学院女子大学, 生活科学部, 教授 (10325962)
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研究分担者 |
大津留 晶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員教授 (00233198)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 過剰診断 / 共有意思決定 / スクリーニング / 甲状腺癌 / リスクトレードオフ |
研究開始時の研究の概要 |
がん検診は早期発見・治療の利益が期待できる一方で、過剰診断などの不利益がある。このためがん検診受診時は、利益・不利益の理解に基づく意思決定が重要となる。しかし、過剰診断の不利益は、対象者も医療者も理解が不十分で、受診が誘導され不利益を被る事例が増加している。そこで過剰診断の理解が妨げられる要因を、シナリオスタディやアンケートを用いて明らかにする。阻害要因は対象者側にも医療者側にも存在するため、両者にアプローチし、多角的に解明することが本研究の特徴である。がん検診で過剰診断が高率に生じる甲状腺癌を対象に、過剰診断の理解を妨げる要因を明らかにし、共有意思決定に有益なツールの開発を試みる研究である。
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研究実績の概要 |
第I段階の研究として、癌スクリーニングにおける共有意思決定のために、対象者が癌スクリーニングの最大の不利益である過剰診断についてどのように理解し、これが受診の意思決定にどのように影響するかを明らかにするため、原発事故後の甲状腺癌スクリーニングを例にシナリオスタディを行った。すなわち女子大学生に、原発事故後に行われている健康調査としての甲状腺癌スクリーニングの対象者であるというシナリオを提示し、その後、段階的に過剰診断とその害の情報提供を行い、各段階で、スクリーニング受診の意思決定を調査し、その変化と意思決定に与える要因を解析した。これにより以下のことが明らかになった。1)過剰診断の情報提供が乏しい時には、受診者は放射線の健康影響に関するリスク認知や検査の提供方法(オプトアウト)に従って受診の意思決定を行う。2)過剰診断とその害の情報が提供されると癌スクリーニング不参加が増加し、その意思決定に関連する要因は、放射線のリスク認知よりも不利益の大きさの見積もりが大きい。3)スクリーニング参加の共有意思決定のための情報提供は、文書では理解が不十分であり、対面でのコミュニケーションを必要とする。上記内容について2023年8月14日から16日にデンマークコペンハーゲンで開催されたPreventing overdiagnosis meeting 2023にてポスター発表を行った(タイトル:Information gap of the harms of overdiagnosis among various tool for decision-making support regarding thyroid cancer screening.)。またこの抄録はBMJ誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)2023年度は計画通りに、癌スクリーニングの対象者について、過剰診断の不利益の理解と癌スクリーニング参加の意志決定の関連をシナリオスタディにより明らかにした。一方で、シナリオスタディの対象者が女子大学生に限られたため、今後対象を広げ、今回得られた結果の普遍性について確認する必要がある。当初の計画通り、シナリオスタディを2025年度まで継続する予定である。 2)シナリオスタディから原発事故後の甲状腺癌スクリーニングにおいて、過剰診断の害の見積もりの大きさが、意思決定に強く影響することが明らかとなった。今後さらに過剰診断の害の理解を阻害する要因に関して分析が必要であり、シナリオとアンケート調査内容をブラッシュアップする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)シナリオスタディを継続する。対象者を広げ同様の調査を継続すると同時に、過剰診断の害の理解を阻害する要因について検索を進める。 2)2024年度は一般検診の受診者に対し、癌スクリーニングの不利益の知識の有無、過剰診断の情報提供の方法とその理解、さらにそれが受診の意思決定に影響するかどうかとその背景因子の探索などを行う。調査の対象組織には承諾が得られているため、倫理審査を行った後に調査を実施する。1)2)の研究結果を国際学会ならびに論文にて報告する。 3)これらの研究結果を踏まえ、2025年度以降に癌スクリーニングにおける過剰診断の理解を促すための情報媒体を作成し、その効果を調査する。
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