研究課題/領域番号 |
23K09662
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
岡村 和幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (50736064)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ヒ素 / 細胞老化 / 遺伝子発現 / 肝臓 / リン酸化 / senolytic / senolytic drug |
研究開始時の研究の概要 |
ヒ素曝露による長期の潜伏期間を経た発癌メカニズムに細胞老化は中心的な役割を果たす可能性が考えられる。本研究では、これまでにヒ素曝露によって細胞老化を誘導され、曝露中止後も形質が維持されることが確認された細胞を用いて、正常細胞と老化細胞を比較し、ヒ素曝露により誘導された老化細胞が示す特徴的な形質を理解し、老化細胞を選択的に除去するための分子ターゲットを明らかにすることを目指す。具体的なターゲットとしては、制御可能な遺伝子発現、タンパク質のリン酸化等に着目する。これにより慢性ヒ素中毒による発癌の予防・治療法開発のための礎を築く。
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研究実績の概要 |
本年度はヒ素曝露によって細胞老化が維持されるメカニズムの解明に向けて、ヒ素曝露によって細胞老化を誘導後、ヒ素非存在下で培養を行った細胞を用い、RNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。具体的にはヒト肝星細胞由来の細胞株LX-2およびヒト肝細胞由来の細胞株Huh-7に亜ヒ酸ナトリウムを曝露(LX-2細胞には7.5μMを144時間、Huh-7細胞には5μMを72時間)し、培地からヒ素を除いて培養(LX-2細胞は72時間、Huh-7細胞は100時間)後、RNAを抽出しRNA-seqを行った。RNA-seqの結果、どちらの細胞においても、対照群と比較して、細胞老化マーカーであるP21の発現増加、LAMINB1の発現低下、HMGB1の発現低下が検出され、本実験条件において細胞老化が維持されていることが確認された。この条件において、Huh7細胞にて有意に発現が増加していた遺伝子は1819、発現が低下していた遺伝子は486だった。一方、LX-2細胞において有意に発現が増加していた遺伝子は1465、発現が低下していた遺伝子は889だった。これらの遺伝子のうち、どちらの細胞でも共通して発現が変化していた遺伝子は、増加が255、低下が52だった。この共通で変化した遺伝子リストを用いて、Metascapeによるパスウェイ解析を行った結果、発現が増加した遺伝子に関してはNF-kB経路の活性化の関与が示唆された。また、検出された各遺伝子について、特に発現量が多い遺伝子および発現変化が大きかった遺伝子においてReal-time PCR法によるvalidationを行い、PI3、PLAUなどの発現増加、およびSCD、SKP2などの発現低下が検出された。これらの遺伝子はヒ素によって維持される老化細胞を除去するための分子ターゲット候補として考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-seqを行い遺伝子発現の観点からヒ素曝露後に維持される老化細胞を除くための分子ターゲット候補を検出し、研究計画書に記載した通りに実験が進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度と同じ条件で培養した細胞においてリン酸化アレイによるリン酸化タンパク質の変化の検出を試みる。変化が検出されたリン酸化タンパク質についてはWestern blottingにより再現性が得られるか検証を行う。 また今年度遺伝子発現の観点から選定したターゲット候補遺伝子についてはsiRNAによるノックダウンや過剰発現の実験を開始し、老化細胞と正常細胞の細胞生存率を比較することによって、候補遺伝子がヒ素による老化細胞の生存に必須か否かを明らかにする。
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