研究課題/領域番号 |
23K09668
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
平林 公男 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20222250)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ブユ成虫 / 鵜川流域 / 飛来密度 / ドライアイス / 別俣地区 / 粘着トラップ / 柏崎市 / 防除対策 / 休息場所 / 捕獲法 / 防除 / 住民参加 |
研究開始時の研究の概要 |
日本全国の山地渓流周辺において、ブユ刺傷による多くの被害が恒常的に起き、里山や高原地域の第6次産業の開発に大きな支障が生じている。ブユは幼虫の生息場所と成虫による刺傷被害が起きる場所とが異なるために「羽化した後に成虫が好んで潜む場所があるのではないか」という問いがあり、それを解明することで、効率的な成虫防除対策が行える。ブユ幼虫の生息地である山地渓流では、薬剤散布が水源地汚染などの懸念から利用できない。したがって新たな成虫防除対策法を開発する必要がある。研究目標は、ブユ成虫が人への吸血飛来の前に潜む休息場所の特定を行うこと。ブユ成虫の走光性を明らかにし、誘引効果の高い波長を特定することである。
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研究実績の概要 |
新潟県柏崎市鵜川上流域の別俣地区をモデルに、地区内全域のブユ成虫飛来密度分布を季節的に明らかにするために、ブユ成虫の発生時期(6月から10月;5ヶ月間)に、毎月1回、調査を行った。100mメッシュ毎に1地点、地区内に採集地点を合計30箇所を設定し、各地点にステッキーボードトラップ(粘着剤を裏表に塗布した10cm×23cmの青色ボード)を地上1mの高さに設置した。誘引源はドライアイスで、1kgを新聞紙で包んで、保冷用袋に入れ、少しずつ溶け出すように工夫した。24時間後にボードを回収し、1枚ずつサランラップで包み、裏表に付着しているブユ成虫数を実体験鏡を用いて計測した。5回の調査合計で4232個体のブユ成虫が捕獲された。優占種は既報の通りヒメアシマダラブユであった。6月は30地点合計で521個体(1地点での最高捕獲数は50個体;以下同様)、7月は731(162)個体、8月は1496(248)個体、9月は50(10)個体、10月は1434(225)個体が捕獲された。9月は強風と降雨で、ブユ成虫の飛翔数が抑えられたために、捕獲数が少なかったと推定された。しかし他の調査月では、天候に恵まれた。調査月毎に捕獲総数が異なるため、各調査月全体の捕獲数を100%とし、各トラップ設置地点での相対的な捕獲割合で評価した。その結果、捕獲割合の高い地点を抽出することが出来、地区内を流れる小河川周辺と地区南部で飛来数が多いことが明らかとなった。 ブユ成虫の走光性については、予備的な調査を行った。鵜川沿いに位置する民家の協力を得て、6種類のLEDランプを用いて、8月に誘引実験を試みた。降雨のため、ブユ以外の昆虫類の飛翔数も少なかったため、ブユ成虫はほとんど捕獲されず、波長の違いにおける誘引捕獲数の有意な差は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の計画のうち、初年度(R5年度)は、別俣地区全域におけるブユ成虫飛来密度分布の図を作成することが第1の目標であった。R5年度の調査では月1回、合計で5回(6、7、8、9、10月)の調査が実施でき、さらに1回の調査で30地点からデータが取れた。このことは、調査結果の精度を上げることができたと思われた。これらの点については、地域住民の理解と大きな協力があった賜であり、来年度以降も、良好な関係を築きながら継続して調査を実施していきたいと思っている。ブユ成虫の走光性実験については、R6年度が本試験であるため、R5年度の調査結果を踏まえて、調査時期や調査日数などを考慮しながら、進めていきたいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、調査・実験を進めていく予定である。R5年度の調査結果であるブユ成虫飛来分布密度図から、飛来密度の高い地点は刺傷被害の頻度が高い地点であると予想されるため、R6年には、ブユ刺傷被害マップの作成が可能である。また、住民のアイディアから、草刈り作業中に頭から被る黒い網(刺傷防止用の市販の網)の帽子部分に青色のステッキーボードを取り付け、作業を行った場所、時間などを記録してもらうことにより、より精密な飛翔状況がわかるデータを集める予定でいる。ブユ発生初期においては、防除の役割も兼ねられると予測している。 複数の波長をLEDランプを用いて発光させ、どの波長に多くのブユ成虫が誘引されるかなどの走光性野外実験を計画している。調査日数を増やすなどして、再現性のある結果が得られるように調査計画を立てたいと思っている。また、次年度(R7)に向けて、方向性ボードトラップの試作を試み、高密度飛来地点において、ブユ成虫の飛来方向が特定できるのかなどについても検証を行いたいと思っている。
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