研究課題/領域番号 |
23K09672
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
平井 到 琉球大学, 医学部, 教授 (00359994)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 遺伝学的多様性 / ベトナム |
研究開始時の研究の概要 |
今や、抗生物質で殺滅できない多様な薬剤耐性(AMR)菌が、医療関連機関を越えて健康な人やコミュニティ、環境にまで拡散しているが、いずれの国においても、健康な人やコミュニティ、環境を対象としたAMR菌の継続的なモニタリングは依然としてなされていない。そこで、本研究はベトナムの調査地からAMR菌株を分離し、ナノポアシーケンサーを用いた多菌株同時ゲノム解析とデータベースを用いたデータ解析によって、ベトナムの調査地に拡散するAMR菌の多様性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
薬剤耐性菌は、抗生物質を用いて感染症治療を行っている医療機関に留まることなく、健康な人やコミュニティ、環境にまで拡散していると推察されている。これまでに、ベトナムの健康な人にも50%以上と非常に高頻度に薬剤耐性菌の一種である基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌が検出されたが、コミュニティや環境についてはあまり観察されていない。このことから、ベトナムのコミュニティにおいてどのような薬剤耐性菌が拡散しているかについてその分子性状を明らかにし、健康な人が保菌する薬剤耐性菌の分子性状と同様なものであるかどうか検討することが求められている。 本研究では、ベトナムのコミュニティから環境水および家屋内の水を採取し、これら採取した検体にどのような薬剤耐性菌が検出されるかを抗生剤含有培地による培養法によって確認し、培養によって分離した薬剤耐性菌を菌株単位で全ゲノム解析を行うことを計画した。2023年11月に、ベトナム国立栄養院のBui部長をはじめとするベトナム人研究者の協力のもと、ハノイ市バビ地区のコミュニティからシードスワブキットを用いて家屋内の貯留水および河川・池などの環境水をそれぞれ、10件および12件採取した。アンピシリン(ABPC)、セフォタキシム(CTX)、シプロフロキサシン(CPFX)及びコリスチン(CL)をそれぞれ、50mg/L、2mg/L、2mg/L。8mg/L含有するマッコンキー寒天培地に塗布し、発育するか観察した。その結果、家屋内の貯留水1件を除いたほとんどの検体では、これら4種類の抗生剤含有培地に、乳糖分解、非分解菌など多くの細菌の発育が確認された。また、3件の家屋内貯留水、3件の環境水を塗布した培地では、CPFX耐性およびCTX耐性の乳糖分解菌が発育しており、腸内細菌科所属菌がこれらの抗生物質に耐性を持っていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、採取した検体から培養法によって分離した、抗生物質に抵抗性を示す菌株クローンは96ウェルプレートを用いた菌株ストックとして保存してきている。なるべく多様な薬剤耐性菌の全ゲノムを得るために、これら保存している菌株ストックを順次、薬剤耐性遺伝子の保持、あるいは、PCR法による遺伝系統の推定などによって分類し、全ゲノム解析に供する菌株クローンの選択を進めている。 しかしながら当初、2023年度中にナノポアシーケンサーを用いた全ゲノム解析を開始することを想定していたが、2023年度中にはナノポアシーケンサーによる全ゲノム解析を開始できなかったため、当初の計画より幾分遅れていると考えられる。その理由として検体採取が11月と遅れたこと、上記のようなナノポアシーケンサーで解析するべき菌株クローンの選別に時間がかかってしまったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、2023年度に分離し、ストックしている薬剤耐性菌株の全ゲノム解析に供する細菌株クローンの選択を進める。より効率の良い細菌株クローンの選択のために、16S rRNA遺伝子をPCR法で増幅し、ナノポアシーケンサーを用いたメタバーコーディングによる多検体同時解析を行い、菌種同定を進める。同定された菌種の種類と構成比を勘案し、薬剤耐性遺伝子の検出なども参考にしながらナノポアシーケンサーによって全ゲノム解析を行う菌株を行う。また、2024年度にも2023年度と同様に検体採取を予定しているので、同様に研究を推進させる。
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