研究課題/領域番号 |
23K09681
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古瀬 民生 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 上級研究員 (60392106)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DOHaD / 胎児期栄養 / マウス行動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
母体栄養が出生後の神経発達障害などの疾患感受性に影響を与えることが既によく知られており、ゲノムDNAのメチル化が出生後の表現型にエピジェネティックな影響を与えることはよく知られている。本研究では、ゲノムDNAのメチル化基質の供与に強くかかわるOne Carbon Metabolism (OCM)に関与する遺伝子の変異マウスを母体栄養代謝異常モデルとして用いる。具体的には、体外受精により作製した受精卵をOCM関連遺伝子に変異を持つ雌マウスに移植し、これにより得られる産仔の行動表現型、遺伝子発現などの様々な解析を行い、胎児期における母体側のOCMの異常が次世代に与える影響を評価する。
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研究実績の概要 |
公衆衛生学的研究において、母体栄養が出生後の神経発達障害などの疾患感受性に影響を与えることが既によく知られており、ゲノムDNAのメチル化が出生後の表現型にエピジェネティックな影響を与えることはよく知られている。一方で、 その分子メカニズムの多くは未解明である。本研究では、研究代表者らが既に得ている研究結果に基づき、栄養代謝、特にゲノムDNAのメチル化基質の供与に強くかかわるOne Carbon Metabolism (OCM)に関与する遺伝子の変異マウスを母体栄養代謝異常モデルとして用いている。具体的には、体外受精により作製した受精卵をOCM関連遺伝子に変異を持つ雌マウスに移植し、これにより得られる産仔の行動表現型、遺伝子発現などの様々な解析を行い、胎児期における母体側のOCMの異常が次世代に与える影響を評価する。OCMに関連する主要なタンパクの一つであるMAT2A (methionine adenosyltransferase)はメチオニンを代謝してS‐adenosylmethionine (SAM)を生成する。また、SAMはDNAやヒストンに対するメチル基供与体として知られている。このMAT2AタンパクをコードするMat2a遺伝子ヘテロノックアウト(ヘテロKO)マウスにおいてはOCMの異常がみられることをすでに明らかにしている。本研究においては、Mat2aヘテロKOマウスの雌に対して野生型マウスの胚を移植した。さらに、得られた仔をMat2a遺伝子野生型およびヘテロKOの里親にそれぞれ養育させ、離乳後に網羅的行動表現型解析を行うとともに、脳組織のサンプリングを行った。その結果、Mat2aヘテロKOマウスを仮親としたマウスには社会行動の変化が見られ、Mat2aヘテロKOマウスを里親として養育されたマウスには不安様行動の変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのモデル動物を用いた研究においては、仔の表現型異常が胎児期低栄養か出生後の養育環境の変化により引き起こされたものか、明確な判別が行われたものが少なかった。本研究においては仮親への胚移植と里親を用いた実験により、社会行動に関しては胎児期環境におけるOCM異常の影響を受け、不安様行動に関しては出生後の里親のOCM異常の影響を受けることが明らかになったことから、両者の区別に成功しており、主目的である胎児期栄養の影響を解析することが可能となった。また、これまでの研究において母体のMat2a変異が仔の脳の偏桃体における発現量に影響を与えた30遺伝子のうち、マスター遺伝子と知られている遺伝子のKOマウス1系統が今後の研究に使用可能となっている。以上より、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、すでにサンプリングを行った脳組織に関し、ゲノムDNAのメチル化の変化を定量的に確認し、エピゲノム修飾の変化を評価する。また、すでに導入済みの変異マウスに関して網羅的行動表現型解析を行うとともに、母体のOCM異常により仔の脳における発現量の変化が既に明らかになっている他の遺伝子に関しても導入、もしくは作製を行い、行動表現型解析を行って遺伝子機能の評価を行う。
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