研究課題/領域番号 |
23K09762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
名取 雄人 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80610104)
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研究分担者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30252175)
道志 勝 帝京大学, 薬学部, 講師 (30392385)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | カンナビノイド / メタボロミクス / 循環器 / 循環器障害 / マルチオミクス / メタボロ―ム / プロテオーム |
研究開始時の研究の概要 |
カンナビノイド受容体アゴニストは主にCB1 受容体やCB2 受容体に作用する一連の化合物である。その中でもTHCや合成品カンナビノイドの多くは違法薬物に指定され、乱用による死亡例も報告されている。これらの化合物は心血管障害のリスクを高めることが報告されているが、その詳細なメカニズムはいまだ不明である。そこで本研究では、培養細胞や動物実験を用いて、これらCB1受容体アゴニストが心血管障害を引き起こすメカニズムの解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
カンナビノイド受容体(CB受容体)アゴニストは大麻由来のΔ9- tetrahydrocannabinol (THC)等が知られている一方で、近年合成品が乱用され中毒死を含めた健康被害等が社会的な問題となっている。当研究室では合成カンナビノイドの乱用による急性中毒死亡例を経験したが、その死因のメカニズムは不詳である。これらカンナビノイド類は心血管障害の他様々な障害を惹起することが報告されてきた。以上のことから、カンナビノイド受容体アゴニストによる死因の少なくとも一部は心筋梗塞や不整脈などの急性循環器障害である可能性が考えられた。また、心臓や血管内皮細胞のような末梢組織でもCB1受容体の発現していることから、今年度は血管内皮由来の培養細胞を用いて、合成カンナビノイドおよび大麻抽出物によるメタボローム変動を調べた。 大麻からカンナビノイドを抽出した結果THC等を同定した。次に血管内皮細胞様細胞を合成カンナビノイドまたは大麻抽出物とともに3時間・24時間培養して細胞死と細胞の代謝活性について調べた。その結果大麻抽出物では細胞死に影響はなかったが、代謝活性は若干減少した。一方で合成カンナビノイドでは、いずれのタイムコースでも濃度依存的に細胞死が増加し、代謝活性は同様に減少した。次に合成カンナビノイド・大麻抽出物で細胞を培養して、メタボローム解析を行った。解析の結果PCAにおいてcontrol・合成カンナビノイド・大麻抽出物の各群が分離した。合成カンナビノイドと大麻抽出物を比較した結果、TCA cycleのような基礎的なエネルギー代謝の他、Inositol phosphate metabolism等様々な代謝経路が変動していることが分かった。以上のことから、合成カンナビノイドと大麻抽出物ではそれぞれ代謝に及ぼす影響が異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の結果から、大麻草から大麻カンナビノイドを抽出する方法を確立することができ、液体クロマトグラフタンデム質量分析計を用いることで、9種類の大麻カンナビノイドを同定することができた。さらに血管内皮細胞様培養細胞において、合成カンナビノイドでは高濃度では顕著な細胞毒性を示すのに対して、大麻抽出物においては細胞死を伴う毒性を示さなかった。 大麻抽出物と顕著な細胞死を示さない程度の合成カンナビノイド濃度を用いて血管内皮細胞様培養細胞の代謝変動を網羅的に調べた結果、115成分中43成分で変動し、多くの代謝経路でこれらカンナビノイドによる影響が異なることがわかった。本研究ではin vitroの系において多種類の培養細胞を共培養することでより生体内に近い環境でのアッセイ系の構築も目的としており、すでに複数の異なる起源をもつ培養細胞を入手し、培養条件の確立を行っている。さらに共培養のための培養容器も入手済みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は個々の培養細胞への合成カンナビノイド・大麻カンナビノイドが及ぼす代謝系への影響を調べた後に、共培養系を用いた解析を行う予定である。共培養系においては、合成カンナビノイド・大麻抽出物が影響を及ぼす細胞間の液性因子による相互作用を検討する。そのために、培養上清中のサイトカインのアレイによるスクリーニングを行い、変動が認められる場合には個々のELISAを用いた定量を予定している。また、プロスタグランジン類は生体機能の恒常性に大きく寄与することから、これらの解析についてもアレイ・ELISAのような免疫学的な方法と合わせて、液体クロマトグラフ質量分析計を用いた一斉分析方法の確立も検討し、免疫学的な方法との比較を行う予定である。 最終的にはマウスを用いたin vivoの実験を行い、特に持続的な合成カンナビノイド・大麻抽出物の投与が血圧や脈拍のようなバイタルサイン変動に及ぼす影響を調べるとともに行動解析も行う。また、大麻や合成カンナビノイドを代表とした危険ドラッグは酒類とともに摂取することが多いため、エタノールとの同時摂取による影響についても検討する。
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