研究課題/領域番号 |
23K09869
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
小林 道太郎 大阪医科薬科大学, 看護学部, 教授 (30541180)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ケアリング / 看護理論 / 現象学 / 哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
看護理論は哲学的な内容を含んでおり、中でも一部の理論家は、ケアリングを論じる際に現象学を参照している。しかし哲学の議論は時代とともに変化してきており、現象学にも近年多様な展開がみられる。本研究は、ケアリング論を中心とした看護理論について現代の現象学・哲学の観点から批判的な検討を行い、現代の社会と看護の状況に即した理論へとアップデートすることを目的とする。 ケアリングの概念から出発して、その前提となる人間観や健康観に遡り、さらに実践との関連を考える。本研究により、実践を捉える視点がとしての看護理論の力を再活性化させるとともに、看護理論に関連する学際的研究がより活発になることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケアリング論を中心とした看護理論について現代の現象学・哲学の観点から批判的な検討を行い、現代の社会と看護の状況に即した理論へとアップデートすることである。 そこで問われるのは、ケアリング論を中心とした看護理論を、現象学その他の哲学の新しい成果と突き合わせてみたとき、看護理論がどのように更新される(あるいはこれまで注目されていなかった側面が再発見される)か、そしてそれらが看護の実践にどのようにかかわってくるか、ということである。 本年度は、現象学と看護の関係を考えるための基本的な論点のひとつとして、P. ベナーらによって論じられ、その後日本でも発展して看護およびその他の諸分野に関わる新たな知見をもたらしている現象学的研究が、哲学的にどのように捉えられるかを検討した(小林道太郎 (2024) 他者の経験を現象学的に研究する可能性について, 大阪医科薬科大学紀要 人文研究, 55, 17-36)。その結果、現象学の創始者であるE. フッサールの超越論的現象学とは異なり、他者に関する経験的研究としての現象学的研究は超越論的な研究ではないが、外から見られたのではないその人の経験を明らかにすることができることが示された。このような方法論的な明確化は、現象学的研究が何であるかを明確にすることにより、実際の具体的な諸テーマに関する現象学的研究の進展に寄与し得る。 さらなる課題は、このような現象学および現象学的研究がケアリングにどのように関係しうるのかを明らかにすることである。看護者は実践の際、ケアの対象者をその身体や顔、言葉などを通じて「外から」見ており、これは一見したところ現象学的研究を行うのとは異なる態度であるように思われる。こうした点について、ベナー(あるいはワトソンら他の理論家)のケアリングに関する議論はどうなっているかを批判的に検討することが必要であるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護理論の検討のためには、人間をどのようなものと捉えるかについての哲学的な検討が必要である。現象学および現象学的研究の検討は、このような人間観の検討の一環と位置付けられる。しかし哲学的人間観の検討は現象学にとどまるものではなく、たとえば意識やクオリアに関する現代哲学の諸議論もこれとは異なる角度からさまざまな手がかりを与えている。本研究では(まだ論文にはなっていないが)それらの議論も参照している。 また理論や研究成果が実践にどのように寄与し得るのかということについても検討が必要であるが、これは研究者が分担者として参加している別の科研費研究プロジェクト(研究代表者坂井志織23K09990)とも関連するテーマとして考察を進めている。 本研究は3年の計画であるが、以上のような状況を踏まえるならば、1年目の今年度は当初計画時に見込まれた程度の進展があり、目標に沿って一定の成果を上げることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ケアリングに関する看護学の議論を整理し検討するとともに、上述のような現象学との関係という点からケアリング論を再検討する。ケアリング概念に関する批判的検討は、さらにそれらのケアリング論の諸前提へと遡って検討を行うための糸口を与えるだろう。ケアリングに関する現象学的記述によって要請される人間の捉え方はどのようなものであるかを検討する。現象学を中心に現代の哲学の諸議論を参照しながら、ケアを行う者/受ける者としての人間、あるいは健康と病気といった事象をどのように理解するか等に関する再検討を行う。 さらに、これらの議論が実際の看護にどのように関連しうるかを検討し、議論を修正することが必要である。単に理論のための理論ではなく、現象学的実存論・健康論を踏まえた実践論としてのケアリング論を目指す。これらの成果は、看護系および哲学系の学会誌に発表するとともに、海外誌(Nursing Philosophy など)に投稿する。
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