研究課題/領域番号 |
23K09877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
谷口 泰弘 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90359737)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 看護臨床倫理 / 医療安全 / 臨床倫理問題報告シート / 看護倫理医療安全教育法の開発 |
研究開始時の研究の概要 |
リバーストランスレーショナルリサーチの手法を用いた看護倫理医療安全教育法の開発と題して研究を行う。当該領域の教育内容は、モデル・コア・カリキュラムに定められているが、座学で教える機会が多く、実臨床で直面する倫理的問題を具体的にイメージし、問題の核心を同定して医療安全に結びつけることが難しいという課題が以前から存在している。 本研究では、期間内に臨床の現場から報告された臨床倫理問題報告シートを用いて分析し、看護倫理と医療安全を結びつける教材を開発し、学生教育に実践できる新たな一体型の教育手法を開発することを目標にする。
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研究実績の概要 |
本研究は、医療現場から報告された臨床倫理問題報告シートを用いて倫理的問題を分析し、看護倫理と医療安全を結びつける教材を開発し、学生教育に実践できる新たな一体型の教育手法を開発することを目標とした挑戦的研究である。臨床薬学や創薬研究で行われている臨床から基礎に還元するリバーストランスレーショナルリサーチの手法を援用し、臨床の倫理に係る課題をイメージし易く、かつ医療安全の意識を高めることのできる、実践的な教育コンテンツの開発を行う。 本研究の核心は、医療職から報告のあった臨床の現場で生じた倫理的葛藤の報告を生きた教材として活用し、臨床(医療現場)から基礎(教育現場)へ還元し、学部学生のうちから倫理的問題の同定と対応能力そして医療安全の意識を兼ね備えた能力を身に着けるための教育法の開発にある。医療職の養成については、各職「モデル・コア・カリキュラム」が策定され、教育内容の根幹は定まっている。看護倫理教育もその軸線上にあるが、限られた時間内で国家試験頻出の用語や定義を教えることが先になってしまっている。豊かな感性と洞察力をもつ医療職を輩出するためには、学部教育のうちから人権教育を含めた倫理観、さらには医療安全への意識を兼ね備えた教育が必要不可欠であるが、座学の域を抜け出せていない現状にある。また、看護倫理と医療安全教育との間にも連携はあまり見られない。両者の視点を融合することが本研究の学術的問いでありチャレンジである。 研究の遂行に際して医療現場から事例を集積し、医療職・患者関係、家族問題、医療行為、医療安全、法律、ガイドライン、社会資源、医療的慣行など各場面を整理し、思考促進型の教材を開発し、将来的には学部学生教育の場に展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、3年の研究期間内に研究のフェーズを4つに分けで実施している。初年度の2023年度は、フェーズ1として2023年4月から11月までの間に文献学調査および教材に使う事例の収集作業を実施した。①臨床における看護倫理に係る教育関連の先行研究について文献学調査を行った。最近動向をデータベースより検索し新規情報の収集を行った。次に、②所属機関内で報告された「臨床倫理問題報告シート」を集積し、医療提供場面で生じた倫理的問題の同定作業を行った。機関内倫理審査委員会の承認を得て、臨床倫理室及び看護部の協力を得て行った。 次に、フェーズ2として、専門家による意見聴取を行う作業を2023年12月から2024年6月までの予定で、現在も継続して行っている。まず、①フェーズ1で収集した事例とその事例中にある臨床倫理問題および医療安全問題を医療職に対して意見を求め、各職の視点から助言を得ている。概念整理が進むよう、意見聴取の内容を記録しまとめる作業を行っている。これらをもとに学部教育で使用する教材の開発に着手している。聴取の方法としては、報告のあった事例シートの内容をもとに、各人の立場から自由に発言してもらい、言語をグルーピングした。教材開発の進め方としては、事例報告の内容を既存の指標を用いて検討し、問題の所在の同定作業を進めている。倫理概念、アドボカシー、責務、協力、ケアリング、そしてジョンセンARの臨床倫理4分割表(医学的適応、患者の意向、QOL、周囲の状況)をベースとした。さらに、医療のステークホルダー、医療提供体制、医療資源アクセス等の関係構造、コンプライアンスも加えて検討作業を行っている。医療安全については、ヒューマンエラーに繋がる要素を検討し、潜在的原因によるエラーになりうるものものの視点を加えながら作成作業を継続している。現在の進捗状況は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における今後の展望としては、まず、現在進めているフェーズ2の内容をブラッシュアップを行い、今年度から予定しているフェーズ3の「教育の実践」に繋げていく方針である。フェーズ3では、2024年9月から2025年3月までを目途に、フェーズ2で開発した臨床倫理と医療安全の視点を融合した教材をもとに、先ず、プレとして学部教育レベルの授業を展開する予定である。研究協力者を募り、看護倫理・医療安全教育を実践する。従来の講義形式の授業を実施し、そして次に臨床倫理・医療安全の視点を加えて開発した教材を用いてアクティブ・ラーニング型のグループ学習を行っていく。具体的には、開発中の提示型の教材をもとに、参加者に医師、看護師、患者、家族などの立場に立ってもらい、各ステークホルダーの立場や思いを感じながら討議のプロセスを経て実践していいく内部志向型ならびに外部志向型を包含する教育を展開する予定である。教員の役割はナッジモデルを参考に、コーチングとしては「そっと背中を押す」程度の助言にし、研究協力者の間で相互の学びを導出する。その視点としては、次の3つの視点に注視しながら行っていく。①認知的領域:医療と社会、医療者・患者関係の理解〔知識・理解〕、②認知的領域:医療者の役割、責務・責任、法律制度等の理解 〔知識・理解〕、③認知的領域:倫理問題・医療安全問題の気づき、判断・解決能力〔能力・スキル〕。そして、得られた知見をまとめ、作成した教材を完成度の高いものにしていく予定である。
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