研究課題/領域番号 |
23K10021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58060:臨床看護学関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
森谷 利香 摂南大学, 看護学部, 教授 (20549381)
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研究分担者 |
山本 裕子 畿央大学, 健康科学部, 教授 (40263272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 神経難病看護 / 実践知 / 暗黙知 / リフレクション / 感情体験 / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は新たに「技能分析」を用いて難病看護師の実践知を明らかにする。さらには、明らかにした実践知を看護師にフィードバックをすることで実践に活かし、それをリフレクションするプログラムを通して難病看護師の成長支援を目指す。このプロセスにおいては、我々がこれまで取り組んできた「神経難病看護師による症状看護の促進に向けた新たなリフレクションプログラムの構築(19K10866)」を発展させ、リフレクションと実践の反復、ならびにグループで共有することを取り入れ、看護実践の変化や肯定的感情に着目する。このプログラムの有用性を検証することは、看護師の実践知を明らかにすると共に、その熟達化に資する基盤研究となる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、①神経難病患看護師の実践知について技能分析を用いて明らかにする、②①で明らかとなった実践知を看護師にフィードバックし、リフレクション、実践との反復、グループでの共有を通して、肯定的感情の生起、看護実践の変化を評価する、ことである。本研究は「神経難病患者の痛みの看護を促進するための神経内科看護師への支援プログラムの開発(16K12046)」「神経難病看護師による症状看護の促進に向けたリフレクションプログラムの構築(19K10866)」から継続して取り組んでいる。 第1段階(2023年度~2024年度)神経難病看護の実践知を明らかにするための準備段階としている。具体的には、①概念の整理:看護師の実践知について知見を統合できるよう、近接する概念(実践能力、臨床判断、ケアリングなど)と共に文献レビューを行うこと、そして②神経難病看護のエキスパートへのインタビュー:神経難病看護の実践知として特徴的な要素について半構造的インタビューを実施し、帰納的に分析する予定であった。 2023年度は、実践知の概念について、暗黙知との違いなどについて看護学での先行研究の調査を行った。そのうえで、神経難病看護のエキスパート8名に対して半構造的インタビューを行った。データ収集は、参加者に事前に人工呼吸器を装着したALS患者の事例を提示し、体位変換を行う想定で1対1の半構造的インタビューをWeb会議システムにて行った。データ分析にはテーマ分析を用い、現在対象者一人ずつを分析中である。例えば、ケースAから、ALS患者の体位変換においては『体位の「ベース」を作って個別性を足す』『体位変換がうまくいくように時間の調整とうまくいかなかったときの善後策を持つ』『本人の好みと、看護の目的との調整』といったテーマが見いだされ、神経難病看護における実践知について一部明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、神経難病看護の実践知を明らかにするための準備段階として、主に②神経難病看護のエキスパートへのインタビューの計画が進行中である。現在8名に対するインタビューが終了した。インタビューに先立ち、「実践知」の概念について整理した。実践知とは状況に依存したワザや判断などの経験的な知識で、言葉として十分に表現できない知識であること、そして「実践知」は経験の中に埋め込まれたノウハウやコツである「暗黙知」を獲得し、仕事における課題解決にその知識を適用する能力を支えている(金井ら, 2021)ことを確認した。また、実践知や暗黙知は、看護師個人や一部の看護組織では保有・活用しているが、言語化が困難、もしくはされていないために体験的にしか伝授・共有ができないことがわかっている。そこでインタビューガイドを精選する目的で、プレインタビューを行うなど、丁寧に計画を進めている。 現在分析している結果から、実践知の定義のように、エキスパートはその状況によって認知、判断を行い、それらに合わせた実践を行い、さらには評価する様子がうかがえた。よって、分析方法としては、その状況を表すために前後の文脈を含めた分析方法であるテーマ分析が適切であると検討した。現在分析できている結果として、例えば、『体位変換がうまくいくように時間の調整とうまくいかなかったときの善後策を持つ』『本人の好みと、看護の目的との調整』『好みの体位や姿勢の事前の把握』『時間の確保』『クローズド・クエスチョンによる体位の確認』などが見いだされた。その中でエキスパート看護師は、指先の感覚での把握や腕の使い方、物品の選択といったコツを語った。コミュニケーションが困難であることもあり体位変換に時間と労力が必要で、時間の確保や善後策を持つといった工夫も、特徴的なワザとして語られた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、神経難病看護の実践知を明らかにするための研究計画を進める。エキスパート看護師へのインタビュー結果を分析し、神経難病看護に特有な実践知、暗黙知についての論文化を進める。同時に実践知、暗黙知の概念をさらに整理するために、文献を中心に検討する。また、必要に応じて神経難病に関するエキスパート看護師とともにディスカッションなどを行い、実情に適合した神経難病看護の実践知の定義ができるよう取り組む。 加えて、2025年度以降に第2段階として神経難病看護の実践知を明らかにする計画に進むことを見据えて準備を行う。具体的には、ビデオで記録した観察データを用いて、さらに実践知、暗黙知を明らかにする予定である。看護師の内面にある実践知、暗黙知を客観的に明らかにできるように、それらの定義を明確にした上でデータ収集を行う。これらに向けて技能分析を含めて、広く研究方法の可能性を検討し、研究計画を立案する。
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