研究課題/領域番号 |
23K10212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
村上 満子 名桜大学, 健康科学部, 上級准教授 (50403663)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 沖縄 / 相互扶助 / 再構造化 / 制度精神療法 / ソーシャル・インクルージョン / ソーシャル・インクルージョン・ケアネットワーク / 「制度精神療法」 / 住民的相互扶助 / ユイマール / 今帰仁村 |
研究開始時の研究の概要 |
精神障害者の地域移行というパラダイムシフトによって「ダイバーシティ&インクルージョン」社会を目指すことになった。本研究では、今でも失われずに残る前近代的村落共同体の住民的相互扶助の構造を、すっかりとは知りえない他人との共生にあたり「見知らぬ人への配慮」という視点で再構造化する。3年間にわたりフィールドとする今帰仁村は人口減少がはじまり、高齢化率も高く、また低所得者や多量飲酒者も多く、自死者が周期的に3倍となる課題を抱えている。この課題を「新しい住民的相互扶助(ユイマール)」により克服し、ソーシャル・インクルージョン・ケアネットワークを備えた、地元創成を目指す。
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研究実績の概要 |
R5年度の成果としては、次の四つがある。一つは、相互扶助の再構造化に向けた「人とのつながりや人の移動に関するテーマ」を9つ明らかにし解明のための基軸を3つ提示したことである。9つのテーマは(1)薩摩(大和)的ではない王朝的なものとは何か、(2)豊年祭や神行事などの伝統的な農耕儀礼は「江戸上り」を通してどのような影響を受けたのか、(3)校区や字ごとの特徴、(4)村外に出た人、(5)土地を所有しているが賃労働に従事する人、逆に(6)農業で生計を支えている人、(7)戦争体験や(8)米軍基地・自衛隊基地、(9)地方自治に対する認識はどうであったのか等である。これらテーマを解明する基軸として3つのことが考えられた。(1)沖縄固有の地理的、歴史文化的背景のうちに、他人への配慮に関する根底的な特徴を見出すこと、(2)そこに住み続けることを前提とする人にとっての、A村の土地利用の在り方を検討すること、(3)つながりのない人(移住者等)を人々がどのように迎え入れているのかを観察・分析することである。二つめは、戦前から農業に力を入れてきたA区の相互扶助の仕組みを、字誌における当時の記録と比較しつつ現在の世話人的区民からみた課題として明らかにしたことである。その課題というのは「見えない人や気にかけてほしいと思っていない人、若い世代との、意思疎通」であった。三つめは、本研究の「分析の視座」である「制度精神療法」を実践する、フランスのラボルド病院から招聘状を得たことである。四つめは、精神障害を抱える子どもとの同居を決めた親の語りを分析してソーシャル・インクルージョン・ケアネットワークにおける相互依存と自立に関する知見を得たことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度は次の4つを実施した。1)A村の歴史文化的背景を明らかにするために、文化施設の元館長への面接調査及び文献検討を実施した。2)19字のうち18字より研究協力の同意を得た。字費徴収世帯数や徴収額・賦課方法等は区長や書記から、気になる人への対応等については世話人的区民を対象とする集団や個別面接を実施した。いくつかの字の豊年祭や神行事に参加して参与観察を行った。3)フランスのラボルド病院からの招聘状を受けて訪問の準備をした。4)ソーシャル・インクルージョン・ケアネットワークの探求に向けて相互依存と自立に関する論考を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度は次の3つを実施する予定である。1)ラボルド訪問での知見をまとめ、本研究での「分析の視座」として明確にする。2)19字のうち残っていた1字の区長に研究を依頼し、19字全体で比較検討をするとともに、字毎の結果を各字にフィードバックする。3)継続的なフィールドワークが可能な3~4字を選定して、若い世代や移住者等を対象とした面接調査を行う。最終年度であるR7年度は19字すべてのデータをもとに、住民的相互扶助を「見知らぬ人への配慮」に照らして再構造化を試みる。これらの成果を踏まえて、ミニシンポジウムを開催し、関係者との意見交換を通して「新しい住民的相互扶助」であるソーシャル・インクルージョン・ケアネットワークを探求する。
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