研究課題/領域番号 |
23K10329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
江尻 晴美 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60515104)
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研究分担者 |
野本 周嗣 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40300967)
篠崎 惠美子 人間環境大学, 看護学部, 教授 (50434577)
伊藤 千晴 人間環境大学, 看護学部, 教授 (20434574)
松田 輝 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (40367868)
牧瀬 英幹 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (70783661)
緒形 明美 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (80740696)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 集中治療後症候群 / PICS / ICU / 多職種 |
研究開始時の研究の概要 |
重症患者の退院後の課題である、運動・認知機能低下と精神障害(集中治療後症候群:PICS)及び、ICU患者の家族・遺族の精神障害(PICS-F)は、ICU在室中から退院後数年にわたり症状が継続する。しかし、医療者の認知度は低く見逃されている現状がある。 本研究では、PICSとPICS-Fの対象者に、包括的支援として看護師による健康指導(栄養・食事や排泄、口腔ケア指導等)と専門家による運動・認知機能低下・精神障害への機能回復訓練を行い、セルフケアを目指す。包括的支援による評価は、定期的に評価指標を用いて検証し、世界基準の指標を構築して提言する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、PICSとPICS-Fの症状を呈する対象者に対して、多職種専門家による包括的支援として健康教育と機能回復訓練を行い効果を検証し、対象者が身体的・精神的・社会的に満足で健康に過ごすためのセルフケアの確立に向けて、世界基準の指標を構築することである。 重症患者の退院後の課題である、運動・認知機能低下と精神障害(集中治療後症候群:PICS)及び、ICU患者の家族・遺族の精神障害(PICS-F)は、ICU在室中から退院後数年にわたり症状が継続する。しかし、医療者の認知度は低く見逃されている現状がある。国内では高齢化に加え、COVID-19の重症化や死亡でPICSやPICS-Fの増加が見込まれ、対象者のADLやQOLの低下、症状悪化による医療や介護の使用は社会保障費の増大となる。本研究では、PICSとPICS-Fの対象者に、包括的支援として看護師による健康指導と専門家による運動・認知機能低下・精神障害への機能回復訓練を行い、セルフケアを目指す。 まず包括的な支援プログラムの実施と評価を行う。対象者は、20歳以上でPICSの症状を自覚している者と、ICU患者の家族と遺族で、PICS-Fの症状を自覚している者を対象とする。研究協力施設にて、看護師が対象者の苦痛症状と日常生活上の困難や苦痛を把握し健康指導と相談を行う。運動機能の改善に向けては理学療法士が筋力維持訓練、治療体操などを行う。認知機能の改善には老年看護学の専門の看護師が認知機能改善の訓練などを行う。精神症状に対しては、公認心理師がカウンセリングなどを行う。2週間ごとに実施し、定期的に評価指標を用いて評価する。 本研究の基礎研究として、2023年にはWeb調査を行った。その結果、集中治療を受けた対象者は身体機能低下、認知機能低下、メンタルの不調に対して継続的な医療者からの支援を必要としていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年にはまず予備調査としてアンケート調査を行い、200名より回答を得た。回答者の内訳は、男性173名(86.5%)、女性25名(12.5%)、答えたくない2名(1%)で、平均年齢は51.9歳(±14.3)であった。ICU入室日数は、3日以上5日未満91名(45.5%)が最も多かった。主な入室理由は、順に循環器系疾患57名(28.5%)、脳血管疾患46名(23%)、外傷38名(19%)であった。集中治療後に現在、身体機能低下として歩行が遅くなった、体に力が入りにくいなどを自覚している対象者は93名(46.5%)、認知機能の低下として集中できない、ひどい物忘れを自覚している対象者は43名(21.5%)、精神的な不調として落ち込みがひどいなどを自覚している対象者は55名(27.5%)であった。対象者は症状に対して、継続的な医療者からの支援を必要と考えていた。 この予備調査に基づき、愛知県内の小規模病院外来にてPICS外来として無料相談外来を設けて月に1~2回、研究者らが対応することとしている。無料相談外来は、病院内のポスターとホームページにて案内を行っている。案内では、「医師の診察を受けるほどではないけれど・・・と心配されていませんか??大きな病気やケガの治療が終わった後だが、体が動かしにくい、日常生活が困難になるほど疲れる、気分が落ち込む、記憶力が大変低下した、家族が集中治療や救急での治療を受けたが亡くなり、落ち込みがひどい、などの症状」として具体的な内容を提示して、案内している。 2023年9月から無料相談外来を開始しているが、現在利用者が0人である。その理由として心身の症状があるのが普通の状態であり、無料相談外来を利用するのに至っていないことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施中の愛知県内の無料相談外来は、月1回で継続予定である。院内掲示とホームページでの案内も同様に継続する予定である。近隣の調剤薬局などでのポスター掲示も予定としている。無料相談外来の利用者があった場合には、研究者間で情報共有をして、今後の支援の在り方を確認して介入する予定である。 さらに、愛知県内の市民病院に勤務している集中治療医師と定期的に連絡をとり、PICS対策とPICS外来の在り方について検討を重ねることとしている。2024年5月から8月にはすでにPICS外来を実施している施設に赴き、PICS外来の進め方、問題点、継続的に患者を支援する方法やシステムについて討論をすることになっている。ここで検討された内容を持ち帰り、研究者間で無料相談外来の在り方を再考する予定となっている。PICS外来や研究者らの無料相談外来を利用し、患者や家族の身体的・精神的・認知症状を維持向上してQOLの向上を図るためには、PICSについての市民に向けた啓発活動も必要と考える。市民への啓発活動も含めて、集中治療医との検討を行い、必要時は追加の調査を行うこととする。 2023年に実施したアンケート調査の結果については、国際学会1演題と国内学会1演題として発表している。今後は、論文化を目指していく予定である。論文化する際は、多変量解析を用いて、結果を英文雑誌への掲載を目指す予定である。
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