研究課題/領域番号 |
23K10402
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中前 敦雄 広島大学, 病院(医), 准教授 (60444684)
|
研究分担者 |
安達 伸生 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294383)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 膝 / 前十字靭帯 / スポーツ復帰 / 多施設共同研究 / 再断裂 / 患者立脚型評価 / 膝前十字靭帯(ACL) / 靱帯再建術 |
研究開始時の研究の概要 |
膝前十字靭帯(ACL)再建術を行なっても受傷前のスポーツに復帰できるのは60~70%程度である。この原因となるACL再建後の患者立脚型評価スコア低値や、ACL再建後の再断裂発生については多因子であり、この負の因子を解明するためには相当な症例数の分析を要する。本研究では多くの症例を集めるために多施設共同研究(広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクト)を行い、ACL再建後に受傷前と同じレベルへのスポーツ復帰を可能とする、あるいは妨げる複数の要因を探索することを研究目的とする。本研究ではいくつかの独創的な評価項目を含んだ多数の関連因子候補を統計学的に分析し、ACL再建術後の完全なスポーツ復帰のためのルートを探る。
|
研究実績の概要 |
本研究課題は、膝前十字靭帯(ACL)再建術後の完全なスポーツ復帰を目指した多施設共同研究であり、術後に受傷前と同じレベルへのスポーツ復帰を可能とする要因の探索が研究目的となる。ACL再建後の完全なスポーツ復帰の失敗、つまりは術後の患者立脚型評価スコア低値やACL再建後の再断裂発生については多因子であることが予想できるが、多くの因子の分析を行うことは、単一施設では時間的・体制的にもほとんど不可能である。しかし、多施設共同研究では多因子を分析するために必要な多くの症例数を短期間で集めることが可能であり、当グループではすでにその体制は広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトとして整っているため、さらなるデータ収集とともに術後経過の分析を開始した。 本研究では手術所見や治療法、膝の徒手および器機計測所見のほか、患者立脚型評価としてKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS))やIKDC score、さらにはLysholm scoreやスポーツ活動性(Tegner activity scale)も継続して情報収集している。また本研究の独創的な調査項目の1つにpivot shift testにおける患者さん本人の主観的な怖さを示す4段階のapprehension gradingがある。本多施設共同研では、pivot shift testの通常のgradingではなく、この新規のapprehension gradingの方が、術後1年の時点で患者立脚型評価に大きく影響を与えることが示された。また術前pivot shift testの通常のgradingやapprehension gradeが大きい例、女性、内側半月板損傷の著明な例では、術後にもpivot shift testのapprehensionが残存しやすいことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本多施設共同研究については、当グループではすでにその体制は広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトとして整っており、膝の手術所見や術式(ACL、半月板、関節軟骨)、膝の徒手および器機計測所見、患者立脚型評価情報などは継続して収集可能であった。2023年度においては、このACL多施設共同研究の結果を8つの学会で報告した。 前述の様に、本研究の独創的な調査項目の1つに、pivot shift testにおける患者さん本人の主観的な怖さを示す4段階のapprehension gradingがある。ACL多施設共同研究での665例を検討した結果、pivot shift testの通常のIKDC gradingではなく、この新規のapprehension gradingの方が、術後1年の時点で患者立脚型評価や術後のスポーツ活動性のスコアに大きく影響を与えることが示された。また、このpivot shift apprehensionが術後に残存する危険因子について663例で検討した結果、術前のpivot shift testの通常のIKDC gradingやapprehension gradeが大きい例、女性、内側半月板損傷の著明な例が術後のpivot shift testのapprehension残存の危険因子であることが分かった。さらにACL再建方法については、1束ACL補強術、1束再建術、2重束再建術の術後1年時の臨床成績について565例で検討した結果、術後の膝前方不安定性の患健側差には各術式間に有意差はなかったが、pivot shift testのIKDC gradingでは1束ACL補強術が良好な結果であったことを示した。
|
今後の研究の推進方策 |
広島臨床ACL多施設共同研究プロジェクトグループは現在10施設あり、継続して臨床結果の情報収集を行うことが可能であった。今後もACL多施設共同研究の術後経過の情報、および新規ACL損傷例の情報を引き続き収集し、上記の多項目の分析を行なっていく。さらに、術後1年時の患者立脚型評価低値の危険因子については、pivot shift testにおける新規のapprehension gradingを加えて、複数の因子についてロジスティック回帰分析を行なうほか、若年者と中高齢者との違いについても検討する。また、pivot shift testの通常のIKDC gradingにおける術後1年時のpivot現象残存の危険因子についても、ロジスティック回帰分析にて検討する。術後の膝前方不安定性が大きくなる危険因子については、重回帰分析にてその要因を探索する。また、若年者のACL再建後に膝不安定性の残存や再断裂が多い傾向があるようであり、これについても年齢と性別の関連を詳細に検討する。今後に注力する点としては、術後2年における臨床成績の収集率を上げることが重要と考える。各施設に定期的に連絡を行いながら、術後2年時の情報収集を積極的に行ない、上記の各危険因子や再断裂の要因について、より詳細な検討を行なっていく。
|