研究課題/領域番号 |
23K10438
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
相馬 俊雄 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (40339974)
|
研究分担者 |
大山 峰生 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (10367427)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 歩行 / ロボット / 下肢 / 重心移動 / 脳卒中 / 筋電図 / 歩行ロボット |
研究開始時の研究の概要 |
近年,脳卒中片麻痺(CVA)者の歩行獲得に向けて,歩行支援装置を用いたリハビリテーションが実施されている.その中でロボット脚と懸垂ベルトを備えた歩行支援ロボット(Welwalk:トヨタ自動車)は,重度な麻痺で立位や歩行が困難なCVA者に対しても歩行練習が可能であり,高い治療効果が得られると脳卒中治療ガイドラインで紹介されている.本研究では,バイオメカニクス的手法を用いてCVA者の麻痺の程度と歩行支援ロボットとの適応について明らかにし,歩行支援ロボットの有効性についてエビデンスの構築を目指している.
|
研究実績の概要 |
近年,脳卒中片麻痺(CVA)者の歩行獲得に向けて,歩行支援装置を用いたリハビリテーションが実施されている.その中でロボット脚と懸垂ベルトを備えた歩行支援ロボット(Welwalk:トヨタ自動車)は,重度な麻痺で立位や歩行が困難なCVA者に対しても歩行練習が可能であり,高い治療効果が得られると脳卒中治療ガイドラインで紹介されている.この歩行支援ロボットは,従来のトレッドミルとハーネス機能を持ち,ロボット脚の膝関節部にはモーターが内蔵されており,歩行中の麻痺側下肢の体重支持と関節運動を補助している.また,ロボット脚の前後には懸垂ベルトが付いており,歩行パターンに合わせて麻痺側下肢の振り出しを誘導している.そのため,重度な麻痺で立位や歩行が困難なCVA者に対しても,これまでセラピストが麻痺側下肢の体重支持や振り出しなどの介助を行っていた負担を歩行支援ロボットが担って歩行練習を実施することができる. しかし,歩行支援ロボットの科学的根拠となっている研究は希少である.そこで,歩行支援ロボットを用いた歩行中の身体へ及ぼす影響を明らかにすることができれば,CVA者への適応や臨床応用が期待できると考えた.本研究では,バイオメカニクス的手法を用いてCVA者の麻痺の程度と歩行支援ロボットとの適応について明らかにしようと計画している.具体的には,歩行支援ロボットを用いた歩行練習は,CVA者のどの程度の麻痺に適応するのか,次に歩行支援ロボットの介入は,CVA者の歩行能力を即時的および長期的に改善させるのかという2つの学術的な問いを検証しようと考えている.本研究により2つの学術的な「問い」を身体機能面から明らかにできれば,リハビリテーションにおける歩行支援ロボットの汎用性が期待できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,CVA者の歩行獲得のために開発された歩行支援ロボットの機能特性について,バイオメカニクス的側面から明らかにすることである.初年度は,歩行支援ロボットを使用している時に無線電極から筋電図波形へのノイズ混入の確認を行った.歩行支援ロボットの麻痺側下肢に装着するロボット脚は,膝継手の部位に強い磁気を発生するモーターがある.このモーターの働きにより,歩行中のCVA者の麻痺側下肢の関節運動をコントロールすることができる.本研究では,CVA者の麻痺側下肢の筋から筋電図を導出するため,筋に貼付する筋電図電極とモーターとの距離が近くに位置するため,筋電図波形にモーターの磁気(ノイズ)が混入する可能性がある.そこで,無線の筋電図装置を購入し,歩行中にノイズが混入しないように工夫をして,筋電図波形にノイズが混入していないことを確認した. また,歩行支援ロボットの麻痺側下肢に装着するロボット脚は,前後方向から懸垂ベルトで吊るされており,麻痺側下肢の振り出しを誘導している.歩行支援ロボットを使用した歩行練習は,この懸垂ベルトの張力の大きさが,遊脚相の振り出しに重要な役割を果たしている.これまでに我々は,ベルトの張力を計測するためにテンションメーターの開発と製作を行い,ベルト付下肢装具の歩行解析を行ってきた.今回,このテンションメーターを使用することで,歩行中の懸垂ベルトの張力の大きさを計測できる.これにより,CVA者の麻痺レベルに合わせて懸垂ベルトの張力を調節・設定する基準を提案できると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
従来のトレッドミルだけの歩行支援装置は,CVA者の歩行練習には低負荷のため推奨されていないと報告されている.本研究で使用する歩行支援ロボットは,ロボット脚と懸垂ベルトが歩行中の麻痺側下肢の関節運動を適切なタイミングで制御するため,弛緩性麻痺では筋収縮を促し,痙性麻痺では過剰な筋収縮を減弱させ,異常歩行を改善させる機能がある.つまり歩行支援ロボットは,麻痺の程度に合わせて負荷量や難易度を調整することが可能であり,CVA者の歩行再建には適した装置である.今後は,対象者であるCVA者の下肢の麻痺をステージ別および歩行能力別に分け,歩行支援ロボットを使用した歩行中における麻痺側下肢の筋活動および身体重心変位の特徴を明らかにすることを考えている. そして最終年度は,CVA者に対して歩行支援ロボットの介入前後で歩行能力を比較検討する.介入期間は3ヶ月間行い,毎月介入前後に下肢筋活動と身体重心変位を計測する.先行研究では, CVA者に歩行支援ロボットを2週間使用させた結果,歩行速度,歩幅などが向上したと報告しているが,身体機能特性について明らかにしていない.そこで我々は,筋電図装置および三軸加速度計を用いてCVA者への3ヶ月間の介入前後で比較を行い,歩行能力への効果と歩行支援ロボットの臨床への有効性について検討を行う予定である.本研究は,CVA者を対象としているが,事前に健常者を対象として計測の準備も必要である.本研究の成果が,今後,様々な歩行支援装置の開発の一助になることが期待される.
|